迷子と魔法と面倒と 番外編!

月宮 翠

番外編① 依頼がない休日編

〜……と言われたのに結局いつも通り大混乱〜


「今日は依頼ゼロ!つまり自由!つまり冒険も罠もモンスターも無し!」

朝の広場でモコが両手を広げて宣言した。


リオは欠伸をしながら肩を回す。

「……たまにはのんびりしたいな。ほんとに静かなんだよな?」

「もちろん!今日は混乱ゼロ!」

モコは胸を張った。


カナは半信半疑で腕を組む。

「あなたが言うと信用できないけど……」


その瞬間、パン屋のおじさんが店から飛び出した。


「うわぁぁぁっ!パンが逃げたーー!!」


広場を、ふっくらしたバゲットが二本、跳ねながら全速力で走っていく。


リオ:「ちょっと待て!絶対に今日も普通じゃないじゃん!」

カナ:「またあなたでしょ!モコ!」

モコ:「ち、違うよ!?今日はなんもしてない!」


だが、バゲットは彼らの足元に来るとピタッと止まり、なぜかモコの足にスリスリしてきた。

「……懐いてるじゃん」リオが呆れる。

「うん……かわいい……けど困る!」


カナは剣を抜きかけるも、パン相手に硬直。

「ちょ、ちょっと待って。パンに剣って……」


とにかく捕まえようと三人で追いかけるが、


・リオ → バゲットに足をすくわれ転倒

・カナ → もう一本のパンにより後ろへ引っ張られる

・モコ → バゲット二匹を両手に抱え大喜び


「やっぱり今日も大混乱だ……!」

リオが叫ぶが、モコは満面の笑みでバゲットを持ち上げた。


「ね、言ったでしょ?依頼がなくても世界は面白い!」


カナは頭を抱えた。

「……………………帰りたい。」


結局、三人はパン屋へ逃げるパンたちを返しに行ったが、おじさんには

「……あんたら、なんでこう毎回何か起こすんだい?」

と深いため息をつかれた。


けれど、三人はすぐに笑い合う。


リオ:「まあ……悪くない休日だったかも」

カナ:「静かじゃなかったけどね」

モコ:「いい休日ってことだよ!」


バゲットを抱えて喜ぶモコを見て、二人は同時にため息をついた。

今日も異世界は、ちょっとだけ騒がしくて、ちょっとだけ楽しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る