第2話 大きく成長した幼馴染

 時は流れて……俺たちは、高校2年生になった。


 お互いに同じ高校に通い、さらには同じクラスでもある。


 幼馴染の関係にも程があるよなー。

  

 でも、学校での関係は変わっているかも。


 何故なら、俺の幼馴染は……皆の人気者なのだから。


 放課後になり、クラスは騒がしくなっていた。

 というより、例の集団がいつも通り騒がしいというか……。


「皆、楽しいお話もここまでだ。続きは明日にとっておこうじゃないか」

「「「は〜〜い!」」」


 集まった女子たちを爽やかな笑みとやや低めのボイスで魅力している王子様のような存在。


 だが、そいつは男ではない。


 女の子であり……俺の幼馴染である。


 彼女の名前は、重月おもづき美千瑠。


 昔は、泥や怪我知らずの活発屋で、髪型や服装の雰囲気からしてもボーイッシュな印象の少女だった。

 

 それが今では、クールで涼やかな王子様系イケメン女子に。


 容姿は、ウルフカットの艶やかな髪に切れ長の瞳。すっと通った鼻筋の中性的な顔立ち。

 170センチと女子にしては高い背丈に、すらりと伸びた手足。

 口調は、キザっぽい王子様のようなもの。


 これらが相まって、凄まじい破壊力になっているのだ。

 

 クラスの女子のみならず、学校中の女子たちはすっかり美千瑠みちるの虜になっていた。

 告白も数え切れないほどされているし、ファンクラブも存在するとか。


 歩くだけで王子様やら黄色い歓声が上がる現状に、本人は「これもまた楽しい」と言っているから良いものの……。


「いやぁ、王子様はいつ見てもイケメンですわぁ……」

「さらに、やることなす事も完璧……。男の俺たちでさえ、すんなり負けを認めるしかないよ」


 美千瑠のことを同じく眺めている男友達2人がしみじみと呟いた。


 美千瑠は、学校の成績は常に1番で、運動神経も抜群だから運動部からの助っ人で引っ張りだこ。

 おまけに、先輩や教師陣からの信頼も厚い。

 確かに、どれも完璧だよな。


「響也、お前とんでもない幼馴染を持っちまったなぁー」

「あの王子様が相手じゃ、容姿も人生においても勝ち目ないって」


 次に、男友達が俺の方を見ながら話しを続けた。


「お前も割とハイスペックなのによぉ」

「そうそう。成績は常に10位以内だし、運動神経もいい。料理も得意だし、友達作りも上手い。顔だって、フツメンよりは上だろ」

「だが、あの王子様の前では、それじゃあ霞むんだよなぁ……」

「王子様が幼馴染だと、特に恋愛面がなぁ……。苦労しているな、響也」


 黙っていれば好き勝手言っている男友達ども。


 さて……そろそろ言ってやるか。


「俺のことはともかく……美千瑠が幼馴染で苦労したとかマイナスなことなんて1度もねぇよ。それに、美千瑠は誰よりも勉強しているから成績が良いわけだし、運動だって元々好きだからこそ上達が早いんだ。容姿だって、毎日気を配っているからこそのもの……。凄いけど、ちゃんと努力もしているんだ」


 声に少し力が籠っていることを自覚し、落ち着くために一息つく。

 それからも俺は続ける。


「何よりも、幼馴染だからこそ頑張りを知っている上で活躍しているところを見れているんだ。それって、誇らしいだろっ」


 俺がそう言えば、ぽかんと目を丸くしていた2人は……ふははっ、と笑いを溢した。


「お前のそういうところ好きだわー」

「俺ら、やっぱり一生友達だぜっ」


 2人に肩を組まれ、わしゃわしゃと頭を撫でられる。


「なんだよ、いきなりっ。暑苦しい!」


 2人の手をしっしっ、と払う。


 ふと、美千瑠の方を見れば……教室から出たのか姿はなった。

 クラスの女子たちも足早に帰っている。


 と……ポケットに入れていたスマホがピコンッ!と通知音が鳴る。

 トークアプリの画面を見なくとも……相手も、その用件も察しがつく。


 なので、俺は鞄を肩掛けて席を立った。


「俺、もう帰らないと。じゃあな、お前ら」

「おーう」

「また明日〜」


 男友達にひらひら手を振ってから、教室を出る。


 と……トークアプリの画面も一応、見る。

 見るというか、既読付けないと拗ねるからな、アイツ。


『放課後、ひびきの家に行くから』


 予想通りの一文と美千瑠からの送信であることを確認して……スマホをズボンに突っ込む。


 俺も足早に帰ることにするのだった。


◆◆


「やあ、ひびき。女の子を待たせるとはいい度胸だね」

「そこはまだ王子様モードで、今来たところって言ってほしかったなー」


 家に着くと、幼馴染の美千瑠がすでにいた。


「ひびき相手に王子様モードをやっても面白くないじゃん」

「まあ、俺はお前の幼馴染だからな。昔も今の素の姿も知っているわけだし」

「……そういうことだけじゃないんだけどね」

「うん?」


 美千瑠がぽつりと何か言ったような気がしたが……まあいっか。


 軽口を交わすのもほどほどに、俺の部屋に入る。


「お邪魔しまーす」

「はいはいどうぞー。荷物もこちらにどうぞ」


 俺は、美千瑠の鞄に向けて手を差し出す。


「ふふっ。ひびきも随分とレディーファーストが上手くなったね」

「そうか? よく分からないな。でも、美千瑠相手だからそうしてるのはある」

「そういうところも含めてだよ」


 なんて会話を交わしつつ、俺と美千瑠は机を挟んで向かい合わせに座った。

 ここがいつもの定位置である。


「さて……やっと帰宅できたわけだ。はぁ、疲れた〜〜!」

 

 美千瑠は息を吐いて、大きく伸びをする。

 学校では爽やかな表情も、今ではやや疲れ気味である。


「やっぱり、王子様モード疲れるだろ? まあ、美千瑠がやりたくて続けるならいいが……。溜め込みすぎは良くないからな?」

 

 学校での王子様モードは側から見る分にはいいが、本人からしたら凄い重圧になるだろうし。


「ありがとう、ひびき。でも、溜め込みすぎは良くないと言うのなら……王子様モードよりも、こっちの方がキツいかな」

  

 そう言っては、立ち上がる美千瑠。


「お言葉に甘えて……溜め込みすぎは良くないってことで。外すね?」

 

 背中を向けた美千瑠。

 もぞもぞ動いていては……時折、小さく「んっ」と声が漏れていた。


「はい、これで溜め込んでないよ」


 くるりと振り返った美千瑠は、先ほどと変わらぬ制服姿なのだが……変化はあった。


 だぷん、という効果音がつきそうなぐらいの胸を露わにしていた。


 そう、美千瑠は学校にいる時はサラシを巻いて胸を潰しているのだ。

 だからこそ、王子様という名が相応しい。


 だが、幼馴染の俺の前では気兼ねなく曝け出せるのか、こうしてサラシを外すことが多い。


「それで……ボクの胸、だろう?」

「っ!」


 そう言われては……もう、その胸から目が離せなくなる。


 あれから数年経った美千瑠は……特に胸の部分が大きく成長していた。

 

 デカパイ……いや、ずっしりデカパイと言っていいほどの重厚感がある。

 もはや、イケないものを見ているような背徳感も……。


 って、いかんいかんっ。変な意識をしちまうっ。


「ふ〜〜ん? ひびきも随分とボクのことをそういう目で見てくれるようになったかな?」


 俺の反応を楽しむように、美千瑠は口角を上げた意地悪な浮かべていた。


『んじゃあ……みちる。大きくなったら結婚しようぜ。約束だ』


 これでも俺は、約束ごととかは覚えているタイプだ。


 あの日の言葉も……一言一句覚えている。


 俺の言葉の意味は、単純に「大人になったら」だったはずだ。


 けれど……。


 今の美千瑠の笑みは、容姿は……どう考えても別の意味だ。


 大きくなったら結婚って……。

 が大きくなったらの意味で捉えたのかっ!?

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