人類最後の・・・
幌井 洲野
人類最後の・・・
人類滅亡後、たった一人残ったヨウスケは、人工冬眠の研究所跡にたどり着いた。そこで、その研究所の秘書をやっていたアンドロイドが彼を迎えた。名前はアヤミという。
ヨウスケを迎え入れたアヤミが、1基だけ稼働している人工冬眠装置に彼を案内する。この研究所には、天才博士とその一人娘アズサが住んでいたという。アヤミはヨウスケに「博士はもう亡くならはりました。博士の遺言で、人類が滅亡した後、もし誰か、人類の生き残りが訪ねて来はったら、その人に、この冬眠装置を開てな、て言われてます」という。ヨウスケは静かにうなずく。アヤミの操作で人工冬眠装置が開けられた。
・・・・・
中にあったのは、できたてを急速冷凍したソース焼きそばだった。肉とキャベツが山盛りの太麺。紅ショウガも乗っている。そばにメモ書きがある。「部屋にあるレンジで、レンチンして食べてください。600Wで3分 アズサ」
アヤミが言う。「博士は、アズサさんにここに入ってもらいたかったんですが、アズサさんは、お父さんが作ったそんな怪しい機械なんか、よう入る気ぃはない、と言わはって、彼女がよく作っていたソース焼きそばをそこに入れて、人工冬眠装置を作動させました。その後、私は電源を切られて、あなたがこの研究所に来はったときにセンサーが働いて再起動するようになっていました。あなた以外の全人類は滅亡したので、博士とアズサさんも亡くなっている思います」
ヨウスケは、レンチンして湯気の立ったソース焼きそばを一口ずつ噛みしめながら、アヤミの言葉を聞いていた。彼の口から、湯気と一緒に出た言葉は、
「うまいな、やっぱ」
だった。
(了)
人類最後の・・・ 幌井 洲野 @horoi_suno
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