第2話 「黒狼の姫、隣に座る」
昨日、絢と少し話をしてから一晩。
俺はまだ妙に落ち着かないまま登校していた。
「よっ玲央! 昨日神宮寺さんとすげぇ目ぇ合ってただろ!」
「……お前も見てたのか」
「見てるわ! オーラが凄かった!」
昨日の事は夢ではなかったらしい。
席についてぼんやり外を眺めていると――
ガラッ
絢が入ってきた。
今日もクールそのもの。
でも俺の心が勝手にざわつく。
(今日はこっち見ないな…)
と思った瞬間。
「………………」
絢が、何故か俺の席の横で止まった。
(なんで!?)
「……黒瀬」
「ひっ」
反射で変な声が出た。
「…………ここの席。空いてる?」
「え、あ、うん……空いてるけど……?」
絢は無言で椅子を引いて座った。
(隣ッ!? なんで!?)
教室中がざわつく。
女子A「なんで神宮寺さん、黒瀬くんの隣に……?」
女子B「玲央くん、殺されるんじゃ……?」
女子たちは全員、遠巻きに観察。
絢は無表情で教科書を開くだけ。
(……どうしよ…話しかけた方がいいよな……?
い、いや無理……! 話題がない……!)
内心キョドりMAXなのに、外見は静かすぎる。
数分後。
怜央が先に声を掛けた
「……昨日」
「えっ」
「視線……会った、よな」
「あ、あれは……」
(やっぱバレてたんかーーー!?)
絢は視線をそらし、ほんの少し耳を赤くする。
「……別に。なんでもない」
絢はそれだけ言うと、また無言で教科書へ視線を戻す。
ただし――
明らかにページが進んでいない。
(なにこの人……めちゃくちゃ可愛い……)
ため息が漏れそうになる。
* * *
放課後。
「なあ玲央! なんで神宮寺さんが隣に座ってたんだよ!」
「知らねぇよ!」
「殺されなかったな?」
「殺される前提やめろ!」
そんなやり取りをしていると、
校舎裏へ向かう絢の後ろ姿が目に入った。
その肩が、ほんの少し震えているようで――
(……緊張しすぎて、疲れたんだろうな)
そう思ったら、自然と笑ってしまった。
――絢は確実に、俺を気にしてる。理由はまだ分からないけど。
そんな絢を俺は気になってしまった。
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