第2話
社畜には、人権も労働基準法も適用されない。
貴様らは二十四時間三百六十五日死ぬまで我が社のために働き続けるのだーっ! あーはっはっはっはっ!
……なんてことはなく、会社サマはこんな僕にもちゃんとお休みの日を与えてくれている。月に二日も。
あれ? 労働基準法適用されてるか?
さておき、今日は僕にとって、久しぶりのお休みだった。
できることなら心ゆくまで惰眠をむさぼりたいところだけど、ベッドの中で夢の世界に旅立っていたら、ハル子さんに身体をゆすられて強制的に起こされてしまった。朝の七時。もうちょっと寝かせてほしかったなあ。
まあでも普段からハル子さんには散々癒しを与えてもらっている身の僕だ。たまの休日くらい、彼女に恩返しをしないと罰が当たるってもんだろう。
そう思って、朝食がてら外に出かけた。
行く先はもちろんマックである――マクドではない。
ハル子さんはゆるふわな長い白髪に覆われたキュートで愛らしい見た目とは裏腹に、ジャンクなフードを好んでいた。
僕を先導するように意気揚々と小柄な胸を張ってマックに入店。
「いらっしゃいませー。店内でお召し上がりですか?」
「…………っ!」
かと思えば、笑顔の店員さんに話しかけられて即座に僕の背後に逃げ隠れていた。
ハル子さんは極度の人見知りだった。
だったら毎回、先頭で入らなければいいのに。と苦笑しながら代わりに僕が注文を済ませる。
やがて、注文の品を載せたトレーを持って席につく。
手を合わせて「いただきます」と唱和する。
「……んー、このグリドルが。このグリドルのやつがたまらないのです」
さっそくハンバーガーにかぶりついたハル子さんが幸せそうに目を細めていた。
「でもさ、そのグリドルって甘いバンズなんでしょ? 正直、中に挟んであるソーセージとは合わなくない?」
「ふふん、
指摘したら、なぜかハル子さんがどや顔をして得意気に笑いかけてきた。
「甘いバンズが、中のソーセージの塩気を引き立てて絶妙なハーモニーを奏でるのです。グリドルの美味しさがわからないうちは、瑞姫はまだまだマック初心者ですね」
そーなのか。僕はマック初心者だったのか。
いや、ハル子さんが幸せならなんでもいいんだけどね。
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