偶々(たまたま)の幸運
なかむら恵美
第1話
何年か前。
昼食を買いに行った。
正規ルートからでもいいが、妹宅方面から行った方が時短になる。
10分前後は違うだろう。我が家から妹宅?歩いて15分前後だ。
特に妹宅に用はない。
さっさと行って、さっさと買う。
レジが混まない時間帯を見込んでの行動だ。
(ほっ、ほっ、流石はわたし)
予定通りであったのを嬉しく思い、心の中で自画自賛。ニンマリしながら
帰途路へ。
(ん?)
と、急にトイレ。トイレを欲した。
道を戻って、あの店へ。いや、間に合わない。その前には、ここまで来たんだ、
遠すぎるだろの感情がある。
ならば、どうする?どこで用を足すんだ、わたしと焦るだけの気持ちがある。
(あっ!)
丁度、まっすぐな視界な先に妹宅。救いの神とばかりに突っ走る。
いなかったらなんて考えない。考える余裕がないのだ。
(おおっ!神よ!)
屋根のてっぺんから庭、門柱に至る迄、後光が指すのをしかと見た。
自転車がある。曰く、妹が在宅なのだ。
激しくピンポンを乱れ打ち。連打、連打の猛攻撃。
同時に叫ぶ。
「わたしですけどぉ~っ、トイレ貸してぇ~っ」
驚いたのが、妹だ。
「グッドタイミングだよ!」
「えっ?理由は後で、兎に角、トイレ。生理現象、第一ね」
はぁ~っ。
事なきを得る。
マトモになった所で、台所へ向かう。
オーブンの蓋が開いている。何やらの匂いが漂う。菓子型を妹が持っている。
「さっき<グッドタイミング>って言ったのはね」
お菓子が焼きあがった所だったのだ。カヌレだ。
独特の歯応えと、コック帽を象ったような型の、黒色の菓子。
わたしも好む。
姪のおやつに、自分の小腹対策に作ったという。少ししたらウチに電話をし、届けようとしていたのだ。
おおっ!何たる偶然!楽しい出来事!
幸せな偶々(たまたま)なのであろうか!
勿論、その場で頂いた。レギュラーコーヒーつきだ。
本能的に、予知できた?
美味しそうな匂いが自然、わたしを呼んだのであろうか?
日々是、何回あってもいい。
<了>
偶々(たまたま)の幸運 なかむら恵美 @003025
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