第6話

私は刑務所の中庭に来た。中庭の影に来た瞬間胃の中からなにかが込み上げて来た。

「うええええええおええ!」

さっき食べたものを全部吐いてしまった。

「けほっ!けほっ!」

なんで私だけこんな目に!あいつらは私を見下すだけ見下して今この瞬間も呑気に食事を、、、!そういえば昨日もこうじゃなかったっけ。一昨日も。その前の日も。もしかして私が今まで忘れていただけで私は毎日刑務所で今日みたいな生活を送っている?

(でもなんで?)

私はしばらくその場で熟考した。そして気がついた。私は刑務所で笑いものにされ排除されるために存在していると。私が笑いものになり、排除されるターゲットとなることで私以外の囚人のコミュニケーション能力や協調性を高めているのだと。親からも大切にされず社会にも必要性を見出されない私に妥当な役割だ。それでも私はそれに気がついた瞬間、それが許せなくなった。

今まで人どれだけ馬鹿にされても踏みにじられても私は多くの人に優しさを配ってきた。でも結局それで得たものは何も無かった。こんなことがあって許されるものか。でも実際許されているのだ。私を馬鹿にして笑いものにしてきた人達は今ものうのうと食堂で食事をしている。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!こんな世界なんて無くなってしまえ!いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!死にたい!殺す!殺す!殺す!殺す!死にたい!殺す!」



「ああ、、、可哀想に」



「!?」

私では無い誰かの声が聞こえた。天から。いやまさかまさか。そんな訳。私はそっと上を見た。


空に人が浮かんでいた。


私は驚いておもわずその場に尻もちをついてしまった。

「あ、貴方は何者なんですか、、、?」

「ああ失礼。挨拶を先にするべきだったな。私の名はベラドンナ。この世界を司る神だ。貴様を助けに来た。」

「私を、、、助けに、、、?」

「うむ。天からお前を見ていたのだがな。お前は賢く優しいのに周りの人間に騙され除け者にされ馬鹿にされ利用され、いくら神の私でも見るに耐えなかった。だから助けに来た。人間は愚かで醜い生き物だ。『地球上で最も力を持っている生き物です』という顔もしている割には1人では衣食住を自給自足して生きていくことすら出来ない。そんな弱い生き物だから他者を貶めてまで1人にならないようにするのだ。本当に愚かで醜い。だが安心しろ、桜。貴様に今から神の命を授けてやる。お前を見下してきた全ての人間を消すのだ。そうすれば世界は今よりももっと綺麗になると思わんか?」

「、、、、もちろんです我が主様!素晴らしきお考えです!」

私はその場に跪いて返事をした。


そう、私はその瞬間神の使いになった。

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