第5話

どうやら食堂は数十人で1つの部屋に集まって食べるらしい。私は私の存在感、いや存在そのものを消すかのようにしてゆっくりと食堂に入った。その食堂の中には30人ほどの囚人と教務官がいた。囚人は何人かでグループになって食事をしている。一席だけ食事が置いてあるのにもかかわらず誰も座っていない席がある。きっとそこが私の席だろう。私はその席にまたしても存在を消すかのようにしてゆっくりと座る。何故だろう。私は存在を消すかのように動いているのにみんながこっちを見てくる。怖い。




「・・・桜ちゃんってなんで毎日▓▓▓▓▓▓▓▓なの?」

「あいつに触れるなよwww」

「ごめんごめんwww」


(え?)

(周りがザワザワしてるから全部は聞き取れない。)


「いやでも気になるじゃんwww毎日▓▓▓▓▓▓▓▓」

「いや気持ちは分かるけどwwwwwwwwww」


(もしかして私、悪口言われてる?

悪口なんて聞かない、聞かない、聞かな)

「桜はどうせ毎日遊んでるんだろwwwwwwなんで健康なのに▓▓・・なんだよwwwまじでヤバすぎるwwwwwwwww」


(え?は?私悪口言われてる。しかも憶測で。ひどい。

私ってただでさえ一般社会で馴染めないのに犯罪者の集まりでも馴染めないの?なんで?なんで??????????????なんで?????何???????????????????????????で??????????????????????????????

え?は??は??は?私の今までの努力って本当になんだったの?は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は??は?



。。。。考えてたら気持ち悪くなってきた。早く自分の独房に戻ろう。)


私はまだ白米が半分お椀に残っているがとりあえず食器を片付けることにした。私は食堂の前の返却所に食器を返そうとした。しかしその時

教務官に呼び止められた。

「ご飯残したらダメというルールがあるのに残すなんて!しかもまだ昼食の時間は残っているのに!ちゃんと全部食べなさい!」

私はあろうことか私の悪口を言って馬鹿にしている集団の前で怒られてしまった。私の背後からクスクスという完全に見下した笑い声が聞こえる。私はその時思い出してしまった。小学校の時からずっとみんなに利用されては笑われ、捨てられてきたことを。

ククスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス。

「何この子www単純すぎでしょwww」

「馬鹿すぎるwwwwwww」

「おもろwwwwww」

ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!みんなに指をさされながら。キャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハキャハ!


私はその場で白米を手掴みで口に入れそのまま飲み込んだ。そのまま食器を返却した。

「朝田さん?」

うるさい。話しかけんな。


私はそのまま食堂を飛び出した。

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