第4話
「今回のことは見逃してやる。次から二度とやるなよ。」
今回私が独房から脱走したことは看守に見逃してもらえることになった。この看守意外と優しいのか、、、?いや、優しいふりをしているだけだ。私を貶めるために優しいふりをしているだけだ。人を簡単に信じると痛い目を見るぞ、と自分に言い聞かせる。昔から人一倍人と馴染むことが苦手で人一倍優しかった私は、小学校中学校で何度も人に利用されてきた。だから人を信じることを辞めた。私は独房で大きくため息をつく。
「産まれ変わったら一人で生きることができる生き物に産まれ変わりたいな、、、。」
そう思いながらリュックの中を開く。中にはハンマーと包丁が入っていた。良かった。あの看守は私の荷物を一切検査しない。このハンマーと包丁があればもしこの刑務所の中で何かあっても自分で自分の身を守れる。理不尽に刑務所に閉じ込められたという状況で自分の身を守る手段を手に入れることができたと思うと私は少し安心した。(それにしても、さっき厨房の倉庫でなにかの気配を感じたのだがあれはなんだったのだろう、、、?人ではない何かの気配だった気が、、、。まあいいか。それよりお腹すいたなあ。)
私はそう思いながらベットの上に横たわった。
朝から色々なことがあって少し疲れた。眠い。少し昼寝でもするか。横になってゆっくり呼吸すると少しずつ頭の中の意識がぼやけ始め、思考回路が停止し始める。私はそのまま眠りに落ちた。
普通の土曜日。別に特別なことがある訳でもない、至って普通の休日。
「桜。こっちにおいで。」
「ぱぱ!いっしょにしんけんすいじゃくしよ!」
「『しんけんすいじゃく』じゃなくて『しんけいすいじゃく』だよ。桜。パパと一緒に神経衰弱やろうか。」
「わーい!」
「桜は本当にトランプ遊びが好きだなあ」
私は父に大きな手で頭を撫でられる。それが嬉しくて心が芯から暖かくなった。
私はさっきの看守が私の独房をノックした音で起きた。
「昼飯の時間だ。食堂に行け。」
「はい。」
やっとご飯が食べれる!もう腹ぺこだ。看守に連れられ移動しながらさっき見た夢のことを思いだす。さっき見た夢は恐らく私がまだ幼稚園に通っていた頃の夢だ。父はとても優しい人間だ。ただ、父は私と違って人と馴染むのが上手かった。父はそのその優しさとコミュニケーション能力が買われ、今では会社でもかなり上の方の立ち位置にいる。人と馴染めない私が自分を取りつくろわないで話せる唯一の相手が父なのだが父が昇格して単身赴任になってからは父と会話をする機会が極端に減ってしまった。早く父に会いたいな。
そんなことを考えているうちに食堂の前に着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます