第2話ショタ好き女医の密かな楽しみ。
甥っ子からのメッセージを確認した女医、射和春香の表情が緩んだ。
珍しい事に何か相談があるらしい。
”何だろう?新しく気になる娘でもできたのかな?”
待っている患者さんの数を確認する。
診療時間はもう終わっているんだけど専門外の夜勤の医師に
引き継ぐわけにもいかないだろう。
自分の専門、耳鼻科の患者でない人も多いような気もするが
この人数なら2時間位で終わるだろう。
急患さん来ないで、と念じながら”お姉ちゃん、相談したい事が”と
いうメッセージに待ち合わせ場所のメッセージを返す。
甥っ子だが”お姉ちゃん”と呼ぶように教育している。
何年か前、ふざけて叔母さん、と呼びやがった時は降参と言うまで
ベアハッグしてやった。
ごめんなさいと言いながらキャッキャしていて本当に可愛かった。
あの時は半ズボンだったから可愛さのレベルが、いや成長した今の
整った感じの可愛さも捨てがたい。
彼女の性癖を歪めてしまった甥っ子を彼女はショータと呼んでいる。
今中学3年生、思春期まっ盛り生意気盛りのはずなのに、
やたら素直で純情な奴だ。
見た目もだけど、性格がとんでもなく可愛いんだよ。
世間の奴ら知らないだろう。
モジモジしながら相談してくるんだろうな、と思うと楽しくて
多少ニヤケながら、彼女は次の患者さんを呼んだ。
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小料理屋に呼び出したショータは少し動揺しているようだった。
「じっと見られて焦っちゃった。
言語聴覚士の先生に落ち着いて話すようにいつも言われてるのに。」
緊張癖があるのに、初対面の人に凝視されて、落ち着けはキツかろう。
ショータは吃音を気にしている。
私が治療に加わるようになってから
余計気にするようになった。
私の責任は重い。ここまで長引いたのは私のせいだ。
「思いっきり出ちゃったか。
初めての人はショータに見とれちゃうからね。
そんなに気にする事はないよ。」
「この顔、大嫌いだ。どうして・・・。」
私の言葉にショータが小さな声でごちる。
ショータの外見上の特徴は本人にとって良い事ないだろうな。
たまご型の輪郭、パッチリした目、小さめだけど通った鼻筋、
ついでにバラ色のスベスベ肌、短くしているけどサラサラの髪(溜息)。
私の知る限り最高の顔だ。初めて見たら凝視する方が普通だと思う。
血が繋がっているのに、なんで私はダンゴ鼻、美容師泣かせのクセッ毛なんだ!
いかん私情が出た。とにかく羨ましすぎる。
血縁者の私が言うと自慢たらしいと思われるかもしれないが、
ショータが町を歩くと人が振り返る、
何かのスカウトが声をかけてくる、
BBAに追いかけられる、
あげくの果てには男の子なのに痴漢に遭う。
その体験をする、相手に何か言いたくても
吃音で上手く伝えられない、内気で、
恥ずかしがり屋な子供にとって
過剰なまでに美形であることは
恵まれた事なのだろうか?
むしろ呪いに近いかもしれない。
「私は大好きだよ、ショータの事全部。」
「そんな事言ってくれるのお姉ちゃん位だよ。」
頭の中にショータの母、義姉が浮かぶ、
あの人は思っていても言葉に出さないか。
よく来る店なので何も言わなくてもビールとお茶が出て来る。
ショータは家で夕食を食べた後みたいだが少し位入るだろう。
一緒に住んでいる家では私の
ショータにとっては祖母にあたるので当然おばあちゃんと呼ばれている。
なのに私が便乗して
あの人、料理下手ではないけどな食卓が茶褐色なんだよ。
たまには変わった物食べないと精神が持たないだろうと思う。
私?時間が不規則なので食事の用意はされていない。
ショータはまだ何か言いたい事があるようだ。
手がかかるんだよな。可愛いけど。
泣かずに、辛そうなそぶりも見せず耐えてしまう。
治療する方からすると結構難しいタイプだ。
現に私の前の医師と言語聴覚士は頑張りすぎる性格を甘く見て
失敗していた。
まああれは頑張れるだけ頑張らそうとする私の
責任でもあるけど。
ショータは兎に角泣かない子供だった。
無理を言われて、涙目になっていても、困ったような笑顔でひたすら頑張る。
周りの大人はそれに気づいていなかったか、
気づいていてもその子供に甘えていた。
全くとんでもない事だ。
いけない、歳かな、ショータが昔のように
チラチラこちらを見て来るからいろいろ
思い出してしまった。
話を聞いて欲しい時の仕草だ。
聞いてやると実に嬉しそうな顔をする。
他所で全然見せない、無邪気な顔をしてくれる。
イジイジしながら話す内容考えている様子がたまらん!
何この可愛い生き物!
決心がついたのか、ショータは顔を寄せて小さい声で話しかけてきた。
「他にも変な事があったんだ。」
「変な事って?」
「・・・能力が変な事になったんだ。」
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