第2話 細胞の国
ティーガーの案内で向かったリンパ節の隠れ家で、私は「細胞の国」が直面する絶望的な現実を知らされた。「この国は…もう終わりかもしれん」と彼は語る。元凶は、無限増殖するだけでなく、偽の化学信号で細胞間の通信ネットワークを乗っ取り、国を内側から崩壊させる悪性腫瘍の王、『がん細胞王メタストーン』だという。
「俺の副官だった奴が、偽の信号に汚染され、仲間たちに牙を剥いたんだ…」とティーガーは血を吐くように慟哭した。「俺たちは、友をその手で『自己崩壊モード』にするしかなかった」。
彼の絶望に対し、私はAIによる分析に基づいた新たな治療方針を力強く提示した。「問題の根源は物理的な敵ではない。情報汚染だ。ならば、我々の目的は破壊ではない。**『情報網の解放と再構築』**だ」。力による制圧しか知らなかった免疫細胞たちにとって、その言葉は全く新しい希望の光となった。
そこへ、腸管エリアから応援に駆け付けた善玉菌・ビフィーが陽気に加わる。「やあ!僕の『腸管情報網』をナメちゃいけないよ、どんな情報だって見つけてくるからね!」。彼の底抜けの明るさが、深刻な状況に差し込んだ。
最新鋭のナノマシン、歴戦の免疫細胞、そして陽気な情報屋。出自も役割も異なる三者が、崩壊した世界を再生するという一つの目的のために手を取り合った。この小さな同盟が、この国の未来を変える第一歩となる。
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