近所の高校生、大学生の私に恋してるらしい

望月 千夜

0.いつからか

私は平凡な大学生活を送っていた、はずだった。昨年までは。


静流しずるさん!俺と付き合ってください!」

「え……君中学生、だよね?それになんで私の名前──」

「一目惚れなんです。ダメ、ですか?」


突然名前を呼ばれ、振り向くとそこには中学の制服を着た男の子。見るからに中学生である。それに、何故私の名前を知っているのか。それを聞こうとした瞬間に一目惚れだと告げられ何も言えなくなってしまう。


「そもそも君中学生だよね?私は大学生だから成人で、未成年の君とは付き合えないの」

「俺、東城 駿真とうじょう しゅんまです」

「いや、聞いて?」


全く聞く気の無い東城くんとやら。そもそも、髪は茶髪でピアスも開けてるけれども地味な女に一目惚れってどういう事なの。身長だって小さいし。


「静流さんが好きです」

「それはね、いっときの感情に過ぎないのよ?」

「俺が高校卒業しても好きだったら付き合ってくれますか?」


すれ違っている。それはもう盛大に。中学生なんだから同級生に可愛い子でもいるでしょうに。


これはただ年上に憧れているだけ。男の子にはそういう時期もあるだろう。そう思っていたのに。


「静流さん!高校受かりました!」

「そうなんだ~おめでとう」

「これでまた静流さんに近づきましたね?」

「……えーと」


成長期というのは凄いもので、ただでさえ低い私の身長を少し追い抜いていた。東城くんが受けたという高校も私の母校だし。


それになにより、どこで覚えてきたのかさりげなく私の手に触れてきたり車道側を歩いてくれたり。この歳でこれが出来るのなら同級生からもモテるはずなのに。


「……何で私なんだろう」

「好きに理由って必要ですか?」


聞こえないように呟いたつもりなのに聞こえていたようで、直球で返ってきた言葉に私は何も言えなかった。


彼はどうか知らないけれど、私には恋人が居たことなんて勿論無くて、恋愛経験すらない。そんな事を知っているかは分からないけれど、どうして私なのかも全く分からない。


「俺は静流さんがいいんです」

「え、ちょ……と」

「キス、ダメですか?」

「だめっ……付き合ってないでしょ!?私たち」


気づけば彼の顔がすぐ側にあって、それはもう唇が触れ合ってしまいそうな程近くて。しかし、私達はそもそも付き合っていない上に大学生と高校生。万が一捕まるのは私だ。それは何としても避けたい。


「じゃあ付き合ってください」

「だから無理だってば……私が捕まるんだよ?」

「お互い合意なら良いでしょう?」

「本人同士が良くても周りがどう思う?よく考えて」


私が少しキツめに叱ると見るからにシュンとしてしまう彼はまるで子犬のように見えてしまい、若干狼狽えてしまったがそこは理性を保って改めて口にする。


「私は21歳。東城くんはまだ15歳なんだよ?君はまだ未成年なの。分かるよね?」

「恋愛に年齢なんて関係ないと思います」

「はぁ……」


何度言っても必ず返される『恋愛に年齢なんて関係ない』。お互いが想いあっていたとしても、周りが見れば大人である私が未成年に手を出したと見られるリスクがデカすぎる。


「なんでこうなったの……」

「静流さん、早く俺を好きになって?」


年下からの猛アピール。どうしたら止められますか?

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近所の高校生、大学生の私に恋してるらしい 望月 千夜 @mochizuki_chiyo

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