『ダンジョン水耕栽培』~追放された王室庭師、不毛の地を「水」だけで最強の農園に変える~
じーさん
第1章 『追放』編
第1話 土を捨てた庭師
「クロード、貴様はクビだ。今すぐこの王宮から立ち去るがいい」
王室庭園の真ん中で、宰相の冷たい声が響いた。
周囲では、同僚の庭師たちが憐れみと
それ以上の嘲笑を含んだ視線を俺に向けている。
「理由は……分かっているな?」
「私が、【土魔法】を使えないから。ですよね」
「左様。我が国の農業は『大地の恵み』によって成り立つ。土を肥やし、土を耕す魔法こそが至高。魔力で土壌改良もできぬ『無能』が、王室の食卓を預かるなど言語道断だ」
俺は小さくため息をついた。
この世界の人々は信じ込んでいる。
植物は「土」が育てるものだと。
だから、土壌を魔力で活性化させる【土魔法】の使い手だけが重用され
俺のような「水質管理」や「肥料配合」にこだわる人間は
異端扱いされる。
「反論なしか。……まあいい。貴様の行き先は決まっている。
『奈落の渓谷(アビス・ゴージ)』だ」
「なっ……!?」
周囲がざわついた。
そこは、国境にある巨大なダンジョン地帯。
岩と魔石しか存在しない、草木一本生えない死の荒野だ。
「貴様のような役立たずでも、魔物の餌くらいにはなるだろう。
衛兵!こいつをつまみ出せ!」
数時間後。
俺は荒涼とした岩山の底に立っていた。
見渡す限り、灰色の岩、岩、岩。
有機的な土壌はゼロ。
これでは従来の農業など逆立ちしても不可能だ。
宰相が俺をここに捨てた理由は明白だ。
「土がなければ何もできない無能」
だと証明して死ね、ということだろう。
「……ははっ」
乾いた笑いが漏れた。
絶望?
いや、違う。
「最高じゃないか」
俺は足元に流れる地下水脈の湧き水に手を浸した。
ひんやりとした水が指先を濡らす。
そして、俺の固有スキル【水質解析(アナライズ)】を発動させる。
《解析完了:ダンジョン深層地下水》
EC値(電気伝導度):2.8 mS/cm(高濃度)
pH値: 6.5(弱酸性・最適)
含有成分:溶存魔素(マナ)、窒素、リン、カリウム、微量要素多数
「素晴らしい……!」
震えが止まらなかった。
ここの水は、ただの水じゃない。
ダンジョンの魔物を育むための高純度の魔素とミネラルが溶け込んだ
天然の『超・高濃度液体肥料』だ。
地上の畑で土魔法を使って無理やり作らせた野菜とはレベルが違う。
俺が王宮で研究していたのは、土という不確定要素を排除し
水と栄養だけで植物のポテンシャルを限界まで引き出す技術――
【
土由来の病気も、連作障害もない。
ただ純粋に、完璧に計算された「水」だけで育てる神の領域。
だが、地上では「土がないと育つわけがない」と理解されず
実験すらさせてもらえなかった。
ここなら、誰にも邪魔されない。
「やるか。……俺だけの農園を」
俺はアイテムボックスから
王宮から持ち出した唯一の荷物を取り出した。
植物の種と
錬金術で作られた透明な「ガラス槽」と
空気を取り込むための「魔石式エアポンプ」だ。
辺りに転がっている魔物の骨(カルシウム源として優秀だ)を砕いて
培地(土台)にし、ガラス槽にセットする。
そこにダンジョンの湧き水を注ぎ込み、エアポンプを起動。
ブクブクと泡立つその溶液は、ほのかに青白く発光し始めた。
視覚的な美しさに、俺はうっとりと目を細める。
これこそが、俺が求めていた光景だ。
「さあ、証明してやろう。植物に必要なのは『土』じゃない。
『最適な環境』だということを」
俺はポケットに入っていた、しなびた薬草の種を一粒
その青く輝く水面に落とした。
その瞬間だった。
魔素をダイレクトに吸収した根が、爆発的な勢いで伸び始めた。
土の抵抗を受けない真っ白な根が、ガラスの中で美しく踊る。
それはまるで、白龍が昇るかのような神々しい光景だった。
――これは、国一番の庭師と謳われた俺が
常識外れの技術でダンジョンを緑の楽園に変える、最初の第一歩だ。
あとがき
3話まで読んでもらえれば
この作品の魅力が一気に伝わると思っております。
最高に盛り上げて胸熱にしたので是非よろしくお願いします!!
今までにない『水耕栽培ダンジョン』へようこそ!
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