06/13話:優しい夕立
「大丈夫!?さくら!?」
ガララ!と強く病室のドアを開いてしまった。
ちょっと小さめのアパートのような一室。
ベッドとテレビとタンスと窓とかしかないような。そんな部屋。
そのベッドにさくらが、横になっていた。
「めんもくない……」
ベッドのさくらが、申し訳無さそうに身体を起こそうとする。
「ダメ!寝てて!!」
身体が勝手に動いていた。さくらの肩を掴んで寝かせる。
点滴のスタンドに身体があたる。倒れそうになるが、サカキさんが慌てて受け止めてくれたようだ。
「すまん…」
さくらは本当に申し訳無さそうに、顔を強張らせている。
時間が止まる。
蝉時雨が鳴り止まない。耳鳴りのように。
七月の海の日。
ガンプラバトル・ジェネレーションズの夏キャラバンシーズンがはじまった。
そこからは修羅場だった。
夏キャラバンは、任意のバトル相手を数チーム指定できる。それがお互いにマッチングしたら、会場が指定される。
そこまで移動してバトル。それの繰り返し、夏の間それが続く。
私達は張り切った。バトルの日程をしっかり組んで、リソースもしっかり管理。宿も早めに確保して。移動時間も多めに取った。車両や機材のメンテナンス…も、してくれてた。私は見守るだけだったけど。
でも、ひとつ抜けてた。私達自身の事。そこを誰も見ていなかった。
頑張りすぎた。
8月に入ってすぐ、今朝、さくらが、熱中症に。
迂闊だ。弓道部の時は、後輩にもしっかり気を張っていたのに、何故抜けた。
暑い車内で、ずっと黒百合…ガンプラを、さくらは調整していたのだという。
何度も徹夜もしたらしい。
夢中になると、周りが見えなくなる。それはお互い、わかっていたのに。
「痛いよ、ナデシコ」
「ご、ごめん」
さくらの肩を強く掴んでいた。
慌てて離れる。
でも、スカートがすっと持ち上がった。
さくらが、私のスカートを握っている。
「いっしょに、居て」
弱々しい声がする。面接の時しか、聞いたことない声。
「……こわい」
手が震えている。突然倒れて入院。それは怖い。わかるよ。
無言で手を握り返す。
さくらは顔を背けて、枕に顔を埋めた。
さくらのすすり泣く声が聞こえる。
わからない、こわい、きっとそう、でもなにか引っかかる。
どれだけの時間が経っただろう。
病室のさくらを眺めていると、ふと頭に……。
「おにいちゃん」の面影が過ぎる。
2年前に亡くなって、忘れようと……してたのに。
「ナデシコさん。」
サカキさんの声。
頭の中が真っ白になって、どうしたら良いんだろう、どうしたら良かったんだろう。こんなに良くしてもらって、なにもできないまま、恩返しもできずに終わりそう。また大事な人を失っていまう所だった。そう、そもそも、私がなにもしなければ、こうは。
「ナデシコさん。」
そんなことをぐるぐると考えているうちに、サカキさんに声をかけられた。
何も警戒してなかったので、はっと反応してしまう。
「ちょっと、時間を、置きましょう。」
さくらが寝息を立てている。手がぷらんと離れている。
さみしい。
でも、なんだか罪悪感がある。
「社長が、直接会いたいと。一旦コレを、予約は取ってます」
飛行機のチケットをサカキさんに渡された。
使ったチケットは社長さんにお渡しすればいいらしい。
病院から、直接空港へ。
さくら入院セットといっしょに私の身支度を、と言われたのはこのためだったのか。
気が気じゃない。
空港のロビーでも、飛行機に乗るときも、焦燥感。罪悪感。病室のさくらと、おにいちゃんを重ねてしまう。
そうだ、私が悪かった。私が。私が。私が、悪かったんだ
地元の空港には、社長さん、さくらのおとーさんが来ていた。
乗ったこともないような、大きなトラックに乗る。
「ガハハ!すまんな!これしかなかった!!」
社長さんが豪快に笑う。真面目な顔しか見たことがなかった。こういうフランクな方だったのか。
でも……。
「ごめんなさい」
キッとおとーさんの顔が社長さんに戻った。
「馬鹿は言うな。自己管理は、本人の問題だ。あいつは一回、ああなるべきだ。今回でよかった」
な…何を言ってるの?このひと。
「ええか、ナデシコちゃん。ワシらみたいな仕事、一番大事にするのはなんだ?」
なんだろう…会社だし、社長さん…たぶん。利益?違う
「お客様、ですか?」
「優等生の答えだ」
「利益?」
「悪人の答えだ」
「品質」
「戯言だ」
「では、会社とかですか?」
「そりゃ滅私奉公人。答えは、自分自身だ」
空気が止まる。
「まぁ、ワシの考えだが」
トラックの窓の外、車が流れる。夕立が来るのかも、雲が立ち込めてくる。
社長さんは続ける。
「良い客、高い利益、高品質、高い技術、良い設備、良い環境、どれも大事だ」
窓にポツポツと雨粒が当たり始める。
「だが、こんな事。労災っていうんだが、事故が起きたら全部パァだ」
しらない。そんな世界、知らなかった。
「だから、毎日言うんだ。今日もイチニチ、ご安全に!ってな!!」
山田製作所に到着した。さくらの家。
工場の中、おとーさんに連れられて歩く、多分私には一生縁のなかった場所。
看板がある。
工場名表示。ご安全に。そういう世界。さくらは違う世界の……。
「さくらには言うなよ。絶対だぞ。」
芸人の前フリのような事を言いながら、案内された離れの、プレハブ。
作業場じゃなくてさくらの部屋らしい。そういえば、さくらの部屋は初めてだ。
よく知らない機械。組み立て式のテーブルの周りに参考書。ツナギ。
むき出しのエアコン。
そして寝袋。
「あ、あの、制服は?」
「そりゃ家の中よ。メシとフロと、そんときくらいだな!さくらと会うのは!」
おとーさんが笑って、寂しそうに言う。
そういえば。
「その、さくらが、病室で、こわいって、ずっと言ってて」
おとーさんの顔がこわばった。
「あーそーか、その、家内な。血管だ。急に詰まってな。暑い夏の日だった。それから暫く…その、よくならなくてな……。すごく、頑張ってくれたんだが……。」
びくりと、変な電気……。
病室のさくら、さくらのお母さん、私のおにいちゃん……。
また重なり始める、やめてよ、苦しい。
「思い出したんだろうな。あのゴタゴタした時から、さくらはいろいろ変わっちまった。」
はっ、と現実に引き戻される。
遠雷が轟いている。豪雨なのに、やけに静かだ。
「変わった?」
悟られないように聞き返す。
「その…刹那的なんだ。生き急いでる。人生がすぐ終わるよな、そんな生き方だ。大人ぶりすぎてる」
そんな…たしかに、過度に情熱的、なところはあったけど。
「だからよ…ちょっとでもそれを、先送りにしようって、そう思ってな。あの高校だ」
「…わかります」
わかる……でも、それは、私とさくら、2人ではで違うもの。
私の…2年前に亡くなった……。おにいちゃんのような…「呪縛」ではないはずだ。
「それが負担なのは、解ったが。まぁ……」
空気が重い。雨はどんどん強くなる
何も言えない、どうしたらいいか、わからない。
「ナデシコさん、アンタが居てくれて、良かったよ。多分、救われたんだ」
勝手だ。そんなの、私の役割じゃない。荷が重い。
「そんな…わたしなんかじゃ」
もうやめて、なにもできない。
おにいちゃん、もうやめて…助けてよ……。
「だからよ、まぁ、頼むぜ。嬢ちゃんは悪くない…っと、電話だ、すまん」
「はい…」
絞り出すように返事をする。
さくらおとーさんは電話をしている。
嫌なことで頭が回りそうなので、さくらの部屋を見渡す。本当に知らなかった。こんなの……。
悪趣味と思うが見てしまう。止められない。目の端に映る、積まれた沢山のゴミ…違う。
これ、刀身や、弓だ。もしかして、黒百合のあの……。こんなに?たくさんの機械、沢山のビン、沢山のガンプラ、沢山の工具、たくさん、たくさん……。
どうしよう、私は、大変な事をしている。
無邪気に遊んで、こんなホンキに。
「嬢ちゃん」
はっと現実に戻される。
「すまんが、ちと、「ホライゾン」行ってくれるか?呼び出し、嬢ちゃんを、いや”Jin”をご指名だ。あと、さくらは元気だからな。心配すんな。」
良かった、さくらは無事。
ん、まって、ホライゾン?私?なんで?
本格的に夕立になった。
おとーさんはタクシーを用意してくれた。車窓に雨と、風景が流れる。
昔は雨の匂いが好きだった。でもなんだろう、今は雨の匂いが、嫌いな記憶と紐づきそうだ。
断っても、続けても、さくらは苦しむ。
ならいっそ、私が断れば。
でもそうしたら、本当に何もかもが嫌いになってしまいそうだ。嫌い…というより、怖くなりそう。もう立ち直れないだろう。カタナも矢も、ココロも折れてしまう。いや、もう、折れてしまいそう。自分ではなにも、なおせない。
逡巡しているうちに、タクシーが止まった。
ここは模型店「ホライゾン」。あの、因縁のホライゾン。
あの日依頼、ARさんと戦った、あの日あそこから、三階から見下ろして……。
な、なんだ「アレ」は!?
「フハハハハ!来たな!!ナデ…!迷えるワコードよ!!」
外階段の先!三階の踊り場!ヘンな方がいる!!
後!私を知ってますよね!?名前呼びかけましたよね!?あなたも私をご存知で!?
変な方は、仰々しいまだら模様の鬼面を被って、腕を組んで、律儀に私を待ってくださっている。
閃光が奔り、雷鳴がとどろく。
お願いだから、夕立さん。いいタイミングで雷鳴らさないで。効果音を入れてはダメな方です。
変な方は短めのマントを翻しながら、店内に入っていった。
彼の名前は「ガンプラギャング」。話には聞いたことがある。
彼には決闘…彼風に言うと、デュエルを申し込まれた。
妙なキャラを作ってる、ガンプラバトルの名物キャラだ。
いっこいっこの所作がいちいちデカい…というかやかましい。
彼に負けると、ランナーを取られる。ガンプラのランナー、いわゆるパーツを支えてるだけの、ゴミ。それだけ欲しいらしい。
ランナーを渡さないと、渡すまで連コし続ける。
実に厄介なタタリ神のような、無害な害悪マスコットだ。
やる気じゃないというと「いいから!やれ!!」と凄まれる。
にげる。しかし回り込まれてしまった。
イベントボスのつもりなのだろうか。
「でもバトルっていっても、機体持ってないですよ!?」
「有るではないか!!ここに!やまほど!!」
後ろを指差す。ガンプラのガンプラバトル特設コーナー。
だめだ。やはり逃げられない。
適当にして、適当に負けて、ランナーを渡そう。
「キットを!組むところから!バトルは!!始まっているのだぞ!!!」
いちいち叫ばないでいただいて宜しいでしょうか!?イラッとする!!
私はあのアストレイだ。おにーちゃんの置き土産。アストレイレッドフレーム。今は黒百合か……もうこれしか使えない。
ガンプラギャングもそれを選んだ。
工具は丁寧な店員さんが貸し出してくれた。
組み立てスペースに座る。やかましいギャングの他にも人がいらっしゃる。
いろいろ、違うものをみんな組んでる。ガンプラだけじゃない。
四駆で走る車、走らない車、ヒコーキ。
みんな好きなものを作っている。私の手元にあるアストレイも、その中の一つに入れていいのかな。
アストレイをなんとか組み終わった。練習はした。でもこれは私向きではない。
目のシールもズレてる。頭の後ろのシールはこぼれた。カタナは…最初よりは改善したかも。
脚はなんかちょっと、うまくぴったり閉じてない。
でも、手は抜けなかった。
アストレイには思い入れが有りすぎる。黒百合…私の化身、私そのもののようなもの。適当になんて扱えるわけがない。
「できたか!では!コーカンして戦うぞ!!」
「はぁ!?」
変な声が漏れた。
「これ?い、いや、そっちの方が、いい出来してますよね!?」
「だからだ!このアストレイ!貴様の作ったアストレイ!これでいい!!」
わけがわからない。
LAUNCH!! ガンプラバトル!スタート!!
「……」
「「対戦よろしくお願いします」は!どうしたぁ!?」
「対戦よろしくお願いしますぅ!!」
もう心を殺す。
広域チャットで叫ばないで。こっちまで恥ずかしくなる。
宇宙に投げ出された。
癪だけど、この、あのひとの作ったアストレイはいい出来。
手足が自由に動く。
私の作ったアストレイで、あんなどうしようもないもので、彼はどうしようというのだろう。
遠くに光。
尾を引いてる、彗星?違う、彗星はあんなにやかましく動かない。
「フハハハハハ!!」
熱っ苦しいな、このひと。
ドップラー効果を伴いながら、高笑いが近づいてくる。
いや、ドップラーしてはダメだろう。ここは宇宙(そら)だ。
……いつのまにか、さくらのガンダム知識が私を汚染し始めているらしい。
…さくら…さくら……。
だめだ!自分に負けないように、カタナを抜く。多分、変な細工はされていない、信じよう。
最初は負けてもいいと思ってしまっていたけど、カタナを抜いてしまうと、やはりスイッチが入ってしまう。
「ドッハァー!!」
彼の急加速にカタナで応える。
彼は…このヒトは、いっこいっこの動作で叫ぶ。多分スパロボ時空の出身なのだと思う。ううん、知らないけどきっとそう。
「どうだ!?血湧き肉躍るか?”Jin”!?」
「…べつに」
ひゅっと心が冷めた。なにか陰がさす。わかる。
スイッチがオフになった。
病室でのさくらが頭をよぎる。
何か変なトリガーが、新しく生えている。
前のようにたのしくない。
「そうか!ならばよし!つきあえ!」
気がつくと、首元に、彼のカタナの切っ先があった。
少しでも突けば、首が飛ぶ。
でも、このヒトはカタナを引いた。
遊ばれてる。
次はさせない。
「どうだ!こんなものか!!」
今度は背中、左後ろにいる。
あの日、ここ「ホライゾン」でグスタフさんにした事と同じこと。
このまま脇をひと刺し。
アレ?あのとき…私は、どうしたんだっけ。
「これがあの”Jin”か!?」
「う、うるさい!」
我に返り、振り払う。
翻って、彼を、あのヒトを探す。
いない、どこ。
アストレイは、私の作ったアストレイだ。ぼろぼろの…アストレイ、そんなには動けないはず。
私の作った……。
私の?
私?
「見つけられんか!”Jin”!いや!ナデシコ!!」
逆さまにアストレイの顔が現れた。
歪んだ目のシール。ギザギザのアンテナ。
私がいる。
醜い顔だ。
「よくみろ!これが!今のキサマだ!!」
「な、なにを!」
私の亡霊に斬りかかる。当たらない。
「怖いか!?汚らしいか!?」
「うるさい!うるさい!!」
もうやめて!私に触れないで!!
掘り起こさないで!
「だがな!」
あのヒトのアストレイが、いや「私自身」…”Jinではない私”
でも、今の私でもない。
「とくと!両のマナコに焼き付けよ!!」
あの日のナデシコ。
"おにいちゃんの幻影"。
それが、また眼の前で止まった。
「ワガハイにはな!これが!とても美しく見えるぞ!!」
なにを……。
時間が止まる。
宇宙(そら)が静寂を称えている。
わからなくなる、私は、誰だ?
「キサマは手を抜いたか!?コレに!このアストレイに!!」
違う!今の、今のホンキだ!
今の私自身だ!
「だから!だから美しいのだ!!愛おしくさえある!!」
くそ!くそ!くそくそくそくそ!
「そこに!貴賤なんぞ…ない!!」
カタナを振る。これは私じゃない!!
私は”「あの日」のナデシコ”じゃない!!
「だから!キサマは美しいのだ!!」
大破!! WINNER:"The"ガンプラ・ギャング !!
負けた。
久々に、言い訳できないくらい。負けた。
自分自身のカタナで真っ二つだ。
どっと力が抜ける。
外、自販機の有る休憩スペースに座る。
なにか欲しいが。身体が、動かない。
「飲め」
あのヒト…ギャングがコーラを持ってきた。缶コーラ。これはオイシイ。
「約束通り、ランナーはいただいていく。その駄賃だ。」
「…ありがとう、ございました。その、対戦…」
「よい。また戦おう、万全のキサマにしか興味がない」
なぜだ、違和感がある。
「なんで、私を、こんなにわかっていらっしゃるんですか?」
これだ、知りすぎている。
「有名人だから…では、ダメか?」
「答えになりません。あと、名前。」
そうだ。いくらなんでも良くされすぎている。
あとなぜ本名を知っている。
「そうか…では、知りたくば。勝て」
「は、はぁ?」
変な声が漏れる。何を言い出すんだ。
「勝て!勝ち続ければ、また会う事もある!!」
語り始めた。たぶん、こういう人種のヒトに話は通じないのだろう。
「みよ!ナデ…!いや!ワコード!!お天道様も、キサマの新たな門出を祝福しておる!!」
夕立が止んだ。雲の合間から夕日が漏れる。
やめてやめて、こういう人に、そういう演出とかいらない。青空覗かせないで。後光もやめて。
あともう名前で読んでもいいですよ!?
「まぁ、いいか、戯言だ。セカイはキサマを中心に回っていない。こんなのグーゼンだ」
「そりゃそうでしょ」
「だが、セカイの見方はキサマ次第だ!キサマ自身から見ろ!!キサマはそこにしか居ない!!!」
深いような、深くないような。よく、わからない。
目をそらすように、外の駐車場に目をやると、さっきのトラック。
さくらおとーさんの、大きなトラックがあった。
あの大きなトラックが、なんだか、とても誇らしくかっこよく思える。
「お迎えも来ておるな!行くが良い!ふたたびはばたけ!!ワガハイは今のキサマにもう興味はない」
「それはどうも」
「だが、魂の片割れは、持っていけ」
金属のケースに収まった、さっき、私が作ったアストレイを渡された。
たぶんこれが”「あの日」のナデシコ”だ。
「どうだ、それは、醜いか!?」
「ええ、とっても、とってもカッコ悪い」
パタリとケースの蓋を閉じる。
”あの日のナデシコ"は、今は眠っていていい。
ごめんね、おやすみ、おにいちゃん。
「よし!いい答えだ!いけ!ワコード!明日に向かって!!」
やっぱりこの人、イチイチいろいろウルサイ。
…でも。
「ありがとうございました。」
そう言うと、何故か共感性羞恥が私を襲ってきた。
それから逃げるように階段を駆け下りる。
「かまわん!あと!レシートは捨てるなよ!シャチョーに渡せ!!ケーヒで落ちる!!!」
背中でギャングが何か騒いでいる。
大きなカッコいいトラックの中、助手席でさくらとチャットでやりとりをする。
病院なら、いろいろ自由じゃないかもしれないし。
さくらは元気そうだ。チャット越しだけど実感をようやく持てた。よかった。そして何度も謝ってくる。
さくらおとーさんにも相当怒られた、そう言ってくる。
なんだが、腹ただしくもなってきた、人騒がせな。
あと、それになにより、私がこのまま、抜けてしまうのが。折れてしまうのが心配だったと言っていた。
お互い様だったのか。
私もこのままさくらが、気を遣って折れると思っていた。なんだか、怒るに、怒れない。
「あの日」のナデシコ。
まだ、誰にも明かせない、心の折れた私。
固く閉ざされたケース下で眠る彼女を、冷たいケースの上からそっと撫でる。
あの日の彼女が、今の私たちの替わりに、ここで折れて、そして眠りについている。
そして答えが出た「今の私がやりたい」それだけだ。もう心をきめて、巻き込むしかない。
「もう大丈夫だよ。ひとつ貸しね?」そうさくらにも返信して、そして最期には皮肉のメッセージも付け加えておく。
ダンディな豚さん、言葉をお借りします。
「だがな、お嬢ちゃん。徹夜はするな、睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに美容にも良くねえ」
次回!!
ガンプラバトル・ジェネレーションズ
07/13話:「ミカド=サマ」の冒険
乞う ご期待!!
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