目を開けろ
OROCHI@PLEC
目を開けろ
今、目を開けてみて欲しい。
何が見えるだろうか。
理不尽な世の中や、醜い人同士の争いが見えるかもしれない。
誰かが泣いている姿、誰かが死んでいく姿が見えるかもしれない。
悲しく、辛く、苦しく思うかもしれない。
今、目を閉じてみてほしい。
何が見えるだろうか。
何も見えない、ただ暗闇が見えるだろう。
その闇は心地よいかもしれない。
その闇には理不尽な世の中も醜い人同士の争いもないのだから。
嫌なことは何も見なくて済むのだから。
ただ無でいられるのだから。
だけどもう一度目を開けてみてほしい。
絶望が目につくかもしれないがよく見てほしい。
そこには光があるだろう。
希望という光があるだろう。
希望は可能性となり、世界を変える力を持つ。
もう一回目を閉じてみて欲しい。
目を閉じた世界は真っ黒だ。
何も見えない。
もちろん、希望という光ももちろんない。
その世界は決して何も変わらない。
何もその世界にはないのだから。
何もないから、何もできず、可能性も生まれないのだから。
そこから幸せになることも、夢を見ることもできないのだ。
それでもあなたは、世界はもう終わっていると言って目を閉ざすのだろうか。
「為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり」という言葉がある。
何事もやれば実現する、やらなければ実現しない。
実現しないのは人がやらないからだという意味である。
これはこう解釈することもできる。
己の願うことをやれば、物事が成る可能性が生まれるが、やらねば決して物事が成ることはない。
やらないのは人の人情である。
だからこそやらなければならないと。
目を開けることはやるということである。
だから目を開けて欲しい。
希望という光が見えるのだから。
成るという可能性が生まれるのだから。
開けている限り、
戦争ばかりの世界も、
子供が苦しむ世界も、
支配される世界も、
変えられる可能性が生まれるのだから。
逃げても良い、それは現実を変える準備をしているということなのだから。
卑怯なことをしてもいい、それは現実に抗っているということだから。
狂ったっていい、それは何かを守ろうとしているということだから。
絶望したっていい、それは現実を受け止めているということなのだから。
ただ、
目を閉じることは全ての終わりを意味するのだから。
目を閉じるな。
目を開けろ。
希望の光だけを見ろ。
ただ、前を見ろ。
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そう熱く語っていた君は、死んだ。
自殺だった。
何故君が死んだのかは分からない。
あれだけ世界は変えられると言っていた君が。
光は手で触れられない、みたいな絶対的なこの世のルールにでも君はぶち当たってしまったのだろうか。
それとも、希望が見えない袋小路にでも入ってしまったのだろうか。
分からない。
分からない。
聞いた話だと、君の死骸は固く目を瞑っていたらしい。
「目を開けろ」
そう強く言い放つ君の声が今でも思い出される。
君は最後、何を思って固く目を瞑ったのだろうか。
光が、眩しかったのだろうか。
この世は思い通りにも、理論通りにもいかないものなのだろう。だから……。
私は強く息を吸った。
目を開けろ OROCHI@PLEC @YAMATANO-OROCHI
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