第7話繁殖優先権の修羅場

宇宙船の展望窓から外を見下ろし、シャピは目をこすった。

「……嘘だろ……あれ……」

森の中、砂埃を上げながら進む5つの人影――いや、4人と1匹。

間違いない。

「逃げた連中だーーーー!!」

シャピは叫びながらハッチへ全力疾走し、すべり込み気味に開くボタンを叩いた。

ガコンッ!


そして――


「さっさと開けろ!まだ喰われたくねぇ……」

アマンダ・マック・ギリー・エリナ(+メリー)が周りを警戒しながら乗り込んできた。


デッキへ移動すると、ついにシャピと再会を果たす。


「メリー!!!!」

シャピは涙目で叫び、ヤギのメリーが全力疾走で駆け寄る。

2人(?)はがっしり抱き合い、ドラマティック再会。


「お前……生きてたのかよ、ヤギ坊主」

マックが豪快に笑い、ギリーも続く。

「一番いらねーやつが生き残ってるとはな」


「もっと再会をよろこんでよ!」


シャピは顔を真っ赤にしながら反論しつつ、

それでも笑顔がこぼれていた。


だがアマンダは真剣だ。


「この船……動くの?」

シャピは顔を曇らせ、首を振る。


「……エンジン、完全に壊れたままだ。動く気配すらない」


一行の空気が、一気に沈む。


「……そう、か……」

「メェ……」

「メリーも共感してるみたいだ……」


その時。


「――ああ、エンジンの故障の話をするなら私も必要だな」


声も、足音もなく。

スフィアが背後に立っていた。


「あっ出た!?お前の出現方法、毎回ホラー映画みたいだぞ」


反射的にマックとギリーが銃を構える。


「動くな!!!」


「こいつ何者だ!?」


スフィアは動揺ゼロ。むしろ彼らの行動に興味なさげだ。

アマンダがシャピを睨む。


「説明。今すぐ。短く。わかりやすく」


「えーと……その……」


シャピは死にそうな顔で手短にまとめた。


「――こいつエンジンを破壊して、僕らを繁殖用に監禁しようとした生命体です」


全員:沈黙。


スフィアは淡々と補足した。


「監禁ではない。保護だ。繁殖対象を逃がさないため必要処置だった」


「いや、言い方変えただけだろ!」


マックは怒り爆発。


「ふざけんな!お前のせいで俺らこんな星に落ちたんだぞ!!」


銃口を向け直す。


アマンダが慌てて止める。


「やめろ!!船内でレーザー撃つ気!?バカか!!」


「ぐ……確かに」


マックとギリーは渋々銃を下ろし、代わりに近接武器を構える。


スフィアはため息をつく。


「……敵意を持たれている理由は理解した。

だが、私はすでに“この船の繁殖優先権”を手にしている」


「もの凄いヤバい単語言ってきたな」


場の空気は修羅場寸前。

緊張、恐怖、怒り――そして意味不明な空気感。


そんな中――クリスが静かに入室した。


「お茶が入りましたとか、言ってる雰囲気じゃないですね」

「アンドロイドにもわかるのか」


マックとギリーが静かにスフィアへにじり寄る。


――その瞬間、僕らはまだ知らなかった。


この触手美女異星人が、どれほど危険で、容赦ない存在なのかを。

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