第5話逃げたやつらにも地獄は来る

ズダダダダッ! ビューンッ! ビューンッ!


木々を吹き飛ばす轟音。

空気が焼け、巨大なシダ植物がレーザー弾で裂ける。


「なんなんだこの星は!! 恐竜ばかりじゃねぇか!!!」


マックが筋肉を震わせながら叫ぶ。


その後ろで走るのは、細身で神経質そうな男――ギリー。


「仕方ないだろ! 不時着しちまったんだから!! 文句言うな!!」


「言わずにいられっか!! 見ろあれ!! 追ってきてんだぞ!!」


振り返ると、樹海の奥から巨大恐竜が地鳴りを立てて近づいていた。


後方では、鋭い目つきの女――アマンダが指示を飛ばしながら走っていた。


「2人とも黙って!! 脱出ポッドまであともう少しだ!! 走れ!!」


木を跳び越え、草むらをかき分け、

3人は転がるように脱出ポッドへ滑り込み――。


「ぜぇっ……ぜぇっ……ッ! 危なかった……!」


小柄で金髪の女性・エリナが駆け寄る。


「皆……どうだった……? 外の様子は……?」


肩で息をしながら、マックが答える。


「駄目だ。どこもかしこも森! 森! 森!

恐竜はウヨウヨ、空飛ぶのまでいやがった!!」


「そ、そんな……」


アマンダが眉をしかめたまま座り込む。


「……せめて船長達の脱出ポッドと同じだったら……」


ギリーが天井を仰ぎ、疲れた声を漏らす。


「船長たちのポッド……どこ行っちまったんだろうな……」


しばし沈黙。


アマンダが息を整える。


「まぁいい。少し休んだら、また探索に出るぞ」


全員が渋々頷いた。



しばらくして――。


マックとギリーは座席にもたれ、コーヒーをすすりながら話し始める。


「くそ……俺は絶対こんな星で野垂れ死になんかしねぇぞ……」


「まぁでもよ、美女2人と遭難ってのも……悪くねぇよな?」


ギリーがニヤつく。


マックは鼻で笑い、冷たく返す。


「……ギリー。お前今、誰のこと言ってる?」


「ん? アマンダとエリナだろ?」


「……やめとけ」


「なんで?」


「殺されるぞ。アマンダの目つき見ろよ」


――その頃。



脱出ポッド内の隅では、エリナが必死に探し回っていた。


「メリー? メリー? どこにいるの?」


小さな声が震える。

やがて、荷物の影、薄暗い隅で――

小さなヤギ、メリーが震えていた。


「……見つけた!」


エリナは優しく抱き寄せる。


「怖かったのね……大丈夫、大丈夫だから……」


しかし、メリーは彼女にしがみついたまま、まだ怯えている。


そのとき――。


「おいッ!! 外見ろ!!!」


アマンダの鋭い声が船内に響いた。

全員が窓へ駆け寄る。


外には――

緑の大地を巻き上げながら、巨大な宇宙船が急降下していた。


轟音。火花。煙。


そして、地面に――ドスン!!


ギリーが絶句する。


「……嘘だろ……あの爆発で生き残ってたのか……」


マックが眉をひそめ、静かに言う。


「なんつーしぶとい船だ……」


エリナは胸にしがみつくメリーを抱えながら呟いた。


「……じゃあ……シャピも……?」


外の煙の向こうで、船体のシルエットが揺らめいている。

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