第2話
男は夜の住宅街を歩いていた。
家に帰るためだ。
残業のせいで、夜も更けていた。
――うん?
前を誰か歩いている。
しかも知っているセーラー服を着ていた。
近所の中学校の制服だ。
街灯から少し離れていたが、それは分かった。
――こんな時間に女子中学生が歩いているのか。
街で一番広いこの住宅街なら、女子中学生も何人もいるだろうが、時間が時間だ。
しかしその少女が街灯近くに来た時に、気づいた。
――えっ?
その少女はどう見ても頭の上部が、左下から右上に向かって斜めにすっぱりと切り取られたかのように、見当たらないのだ。
男は見間違いだと思った。
しかし何度見てもそうとしか見えないのだ。
そのうちに少女は一軒の家前で止まった。
その家を食い入るように見つめていたようだったが、やがてその姿がすうっと消えた。
男は少女が立っていた場所に行き、まわりを確認したが、何もなかった。
――見間違い? 疲れているのか? それにしてもこの家は……。
その家は近所で、いやこの街で知らない人はいないほどの美少女の住む家だ。
つぎの日、少女の死体が見つかった。
口と鼻の下部分と右目を残してそれより上が切り取られた少女の死体が。
切り取られた上部は死体のそばにあった。
少女は街中で美少女として有名な女子中学生で、今日が十四歳の誕生日だった。
死体は彼女の家のすぐ前にあった。
学校から生徒が来ないと連絡があり母親が探しに行こうとしたとき、家の前で倒れていたのだ。
死に方も悲惨で不思議だが、もう一つ不思議なことがあった。
美少女が家を出てから母親が見つけるまで、三十分以上の時間があった。
閑静な住宅街とはいえ、通勤通学の時間帯。
彼女の家の前を通った人は何人もいる。
しかしその誰もが彼女の死体を見ていないのだ。
街中で知らない人はいないと言えるほどの美少女はどこで死に、その死体はいつ家の玄関前に置かれたのか。
そしてそれを誰がやったのか。
なんのために、どうやって。
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