幼馴染と遊んでいたら幼馴染とその妹に着せ替え人形にさせられた

ヤシ

第1話

 高校に入学し、友達と楽しい高校生活を送り、そして今、僕は幼馴染の星宮奏恵と一緒に歩いて帰っている。奏恵は僕とは違って顔が良い、可愛いと言えば可愛いのだがどちからと言うとイケメンの方に寄っている気がする。そして勉強もできる、強いて言うなら運動が壊滅的に出来ないと言う点を除けば、誰もが目標にする人なのかもしれない。高校に入学してからは奏恵が生徒会に入り、一緒に遊んだり話したりする時間が少なくなって少し遠い存在になってしまった気がするけど、それでもこうして一緒に帰るくらいにはまだ仲は良い。少し歩いてちょうどお互い別れる道に到着した頃、奏恵が突然振り向いて近づいてくる。



「ねぇ、蓮。今日久しぶりに私の家で遊ばない?最近遊べてなかったし、たまにはいいかなって。」

「いいけど、制服のまま行っていいの?」

「うん、大丈夫。制服のままでいいよ。」



 そう軽く会話して奏恵の家の方へ向かう、奏恵の家に行くのは高校入学式前の春休みの時以来だから、少し緊張する。少し進むと屋根が赤みがかった一軒家が見えてくる、何処にでもあるような普通の一軒家だが異様に庭が広い。そう言えば奏恵の両親はモデルをやっていた気がする、雑誌にも乗るような凄い人で、中学の時は部活が忙しくて中々会えなかったが、雰囲気が何処と無く暖かくて優しかった記憶がある。玄関を開けて、靴を脱ぎ2階に上がる階段を登る、2階に上がると廊下があって、部屋が4つある。確か、手前が奏恵の両親の部屋、その奥が奏恵の妹の部屋、さらに1番奥にあるのが奏恵部屋だった気がする、そして俺はまだ一回も入ったことが無い部屋が一室、という順番で並んでいるはず。俺の記憶は正解だったようで、廊下の奥に進んだ先ある奏恵の部屋に入る。相変わらず大量のゲームと小説や漫画、そして可愛らしいぬいぐるみが置いてあったり、あまり変わってなくて少し安心する。


「適当な所に座って待っててね。」


そう言うと奏恵は部屋を出て行って、台所からお茶とお菓子を持ってくる。それを机に置いて、お互い隣同士で座る。


「ねぇ、少しいい?」

「え?いいけど、なに?」


 すると奏恵は何回か深呼吸をして、顔をこちらに向けて躊躇うように聞いてくる。


「女の子の服着てみない?」


 奏恵がとんでもないことを言い始めたぞ、なんで僕が女装を?絶対似合わないだろうに何故こんなことを?少し疑問に思って聞いてみる。


「なんで女装しなくちゃいけないの?」


 軽く質問してみると奏恵は頬を赤くして、このイケメン顔からは想像できない顔を両手で隠すという仕草をして、恥ずかしそうに喋りだす。


「最近おとこの娘が出てくる漫画を見ちゃって、それで、その。ほら!蓮って中性的な見た目してるし、女装しても可愛いかなっておもちゃって……」


 そこで多少否定するべきだった、なのに僕は部屋の甘い匂いと久しぶりに奏恵の家に来れて浮かれてしたのと、「可愛い」という単語に少し興味を持ってしまったのが悪かった。


「いいよ、何着ればいい?」


 奏恵は否定されると思ってきたのか、少しびっくりしたような顔をしていたがすぐに笑顔になる、するとタンスから女物の服を取り出してきて「これを着て欲しい!」と言わんばかりに押してくる。さすがに高校生にもなった奏恵に着替えを見られるのは少し落ち着かないから一旦反対側を見てもらって、とりあえず何も考えずに着替え始める。奏恵から渡された服は俗に言うセーラー服だった、たまにアニメで見るような真っ白な服に黒い襟、少し大きめのリボンに2本の線が入ったスカート、一旦こんなの何処で買ってきたんだ?と疑問に思いつつ制服着てスカートを履く。


「これでいいか?」


 後ろを向いてずっともじもじしている奏恵に呼びかける。奏恵が少し振り向いてこちらを見ると余程嬉しかったのか、それとも期待通りだったのかは分からないが、急いでスマホを手に取り写真を撮り始める。


「似合ってるか?」

「可愛い!良いよ!完璧だよ!」


 と、かなりの声量で奏恵が俺を褒めちぎってくる。正直、多分似合わなくて笑われるんだろうな、と思ってたからこの反応は僕的にはかなり嬉しかった。


 すると突然大きな音と同時に部屋のドアがおもいっきり開く。僕と奏恵は慌ててドアの音がする方へ向くと、奏恵の妹の星宮結愛が少し怒った様な表示で立っていたが、徐々に表情が固まっていく。


「ちょっと、お姉ちゃん!うるさいんだけ…ど何なのも、う……え、お兄ちゃん何してるの?てか本当にまじでお兄ちゃんなの?えぇ??」


 僕はこの姿を奏恵以外に見られたという羞恥心、奏恵はさっきの声を妹に聞かれたという事実と喜んでいる姿を見られたという理由で顔が真っ赤になり顔を両手で隠し、奏恵の妹の結愛は何がどうなっているのか理解できずフリーズするという、何とも言えない混沌とした空気が流れた。


「ちが、その…えっとね。これは私が頼んで、その。」


 奏恵が必死に妹に弁解しようとしているが無理だろう、と思って結愛の方を見ると目を輝かせてこちらを見ている。


「以外に可愛いじゃん。」

「「??」」


 奏恵は思ってた反応と違う反応が来たから少し困惑している、もちろん俺も「キモ」とか言われるんじゃないかと思っていた。


 すると結愛は何を思ったのか、突然部屋を慌ただしく出ていき少し経った頃、結愛は大量の服を両手に抱えて部屋に駆け込んできた。そこには「なんでもってるの?」と聞きたくなるような服、例えば赤いチャイナ服やメイド服、軍服、韓国風のレディースなどがちらほら、奏恵な顔を真っ赤にして何かを隠しているようだけど何を隠したんだろ。視線を結愛の方へ向けると真剣な表情で服を選び選別している、それを見て僕は心の中で「変な服はやめてください」と願いながら結愛が服を選び終わるのを一旦待っていると、ある程度決まったのかまとめた服を俺に押し付けてきた。



「これ着て、今すぐに。」

「僕は別に━━━━━━━」

「着て。」

「おい、なんで奏恵までも結愛の味方をしてるんだよ?」

「だって見たいし。」

「ほら、お姉ちゃんもそう言ってるし、早く着て。」



 2人の猛攻に押されるがまま、少し、いや、かなり抵抗があったものの一応用意された服を一通り試着してみる。着る時少しだけ甘い匂い良い匂いがして少しふらついたけど、匂いを嗅いだことがどうかバレませんように。そこからは奏恵と結愛は僕が着替える度にカメラを使って連写し、お互に見せあって議論するというよく分からないことをずっと繰り返していた。僕には正直議論するほど可愛いとは思えないのだが。



「もう終わりにしていい?」

「ダメ!もっと写真を取らせてよ!」

「そうだよ!」

「僕は別に着せ替え人形でも、何でもないからね?」

「いや、もうここまで来たら着せ替え人形でも何でもいいでしょ。」

「うん、私もそう思う。」



 ここでようやく自覚させられた、どうやら僕はこの姉妹、奏恵と結愛の着せ替え人形になってしまったらしい。

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