あなたへ
SunFla.
あなたへ
拝啓 大好きなあなたへ。
いきなりだし、早速だけど、私は、ずっとあなたのことが好きだったの。
いつでも困った時はそばにいてくれて、いつでも相談に乗ってくれて、いつでも頼りになるあなたが、大好きだった。
私がアイドルになってからも、私が「ちょっと話さない?」って言ったら、いつでも、どんな時でも、私と話してくれた。
あなたは「僕は話を聞くだけで、なにも力になれない。」って言ってたけど、そんなことないよ。
きっと、あなたは知らないんだろうね。
話を聞いてくれるのが、どれだけ嬉しいことか。
一緒に話してくれるのが、どれだけ私の救いになってたことか。
どれだけ、生きる希望になってたことか。
正直、私、あなたがいなかったら、もっと早くに死んでたと思うんだよね。
でも、君がいてくれてたおかげで、ずいぶん長く生きられた。
ずいぶん長く、幸せな時間を過ごせた。
本当にありがとう。
あなたは、私の人生の全てだった。
もちろん、アイドルも大事だったよ。
でもね、それ以上に、あなたが大切だった。
私の人生には、あなたが必要だった。
それくらい、あなたは私にとって大きな役割を果たしてくれてたし、助けになってくれてた。
ありがとう。
本当に、ありがとう。
私、アイドルとして上手くやれてたのかな?
アイドルになって、本当に良かったのかな?
ネットでいろんなことを言われて、いろんな人からダメ出しをされるたびに、そんなこと考えてた。
あーあ。
私が夢見てたアイドルは、いつでもキラキラしてて、失敗なんかしなくて、みんなから愛されてて、それで、みんなを元気にさせれるような存在だったのにな。
アイドルって、難しいね。
アイドルって、大変なんだね。
私がなりたかったアイドルに、私はなれなかった。
私には、アイドルはまだ早かったのかな。
叶わない夢だったのかな。
夢は、夢で終わらせた方がいいのかな。
夢を叶えたその日から、何もかもが崩れてしまったような気がするんだ。
みんなから愛されて、キラキラしてて、失敗なんかしないアイドルなんて、いないのかもね。
でも、そんなアイドルになりたかったな。
私も、昔テレビで見たような、あの時憧れてたアイドルに、なりたかったな。
アイドルがどうとか言ってるけどさ、正直、私の人生にはアイドルがなくても良かったんだ。
こんなに語っておいて、急になんだって思うよね。
でもね、ほんとに、私の人生には君さえいてくれれば良かったんだ。
君さえ、いてくれれば。
ああ、死にたくないな。
まだ、生きたいな。
でも、もう限界なんだ。
私、頑張ったよね。
ここまで、十分、頑張ったよね。
認めてあげてもいいよね。
私はもう、人生を生き抜いたよ。
最後に、もしかしたら、あなたは今、自分を責めてるかもしれない。
「私を救えなかったのは自分のせいだ。」って。
「生かしてあげられなかったのは、自分のせいだ」って。
でも、安心して。
そんなことないよ。
あなたには、なにも、できることなんか無かったんだよ。
あなたは、十分、私を生かしてくれたよ。
あなたは、十分、私に生きる希望を与えてくれたよ。
だから、もし、今あなたが死のうとしてるなら、ちょっと待ってくれないかな。
後を追ったところで、同じ場所に行けるとは限らないから。
また会えるとは、限らないから。
あなたには、生きて欲しいな。
あなたには、私なんか忘れて、もっと楽しい日々を送ってほしいな。
あなたが死んだら、私、泣いちゃうな。
あなたが、私が生きる唯一の希望だったんだから。
嫌だよ。
これが、私の最後のわがまま。
じゃあね。
ばいばい。
私は、ずっと、あなたが大好きだよ。
ペンを机に置く。
気がつけば、目からは涙が溢れていた。
溢れた涙が手紙に落ち、文字を歪ませていく。
全部を書いた。
あなたに言いたいこと、ずっと言いたかったこと、でも言えなかったこと。
でも、もう、言い残したことは何もない。
良い、人生だったんじゃないかな。
最善では、なかったかもしれないけど。
あなたがこれを見つけて、これを読んで、それで、私のことはもう忘れてほしい。
あなたの人生に、私はこれからいなくなるから。
あとは、あなたがずっと、どこかで、笑っていてくれれば、それでいい。
窓の外の景色は、少しずつ、少しずつ明るくなっていく。
窓から入り込んだ風が、静かにカーテンを揺らした。
あなたへ SunFla. @SunFla
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