セプテンバー・コール・アップ

床擦れ

第1話 まえがき

 読者の中に

「セプテンバー・コール・アップ」(September call-Up)

という用語をご存じの方はどれくらいいるだろうか。

 この制度は米メジャーリーグ(以下、MLB)にて、その言葉の通り九月から実施される制度である。

 日本プロ野球に同様の制度はないため、この制度を知っている人間は少なくとも、MLBを積極的に観戦している人に限られる。

 MLBでは公式戦に出場可能な選手の枠組みのことを

「ロースター」

というが、このロースターに関連する制度が、上記の「セプテンバー・コール・アップ」である。

 簡素にこの制度を説明すると、MLBにおいて、シーズン中はアクティブ・ロースター、すなわちシーズン試合中にMLB公式戦に出場できる選手が26人に限られる所を、9月からは、メジャー球団が直接支配下に置いている40人の選手を対象にして、28人までに拡充して出場登録ができる、というルールである。

 この制度は、枠の拡充という特性を生かして、既にポストシーズンが絶望的になったチームが若手株などの実力を確かめるために使われることが多いほか、ポストシーズンに向かうチームの「最終選考」として使われることもある。

 この制度は、直近になって変更されている。

 例えば、アクティブ・ロースター枠において稼働できる選手が、2019年以前は40人枠下全員だったものが、2020年からはコロナ風邪による特例期間を挟んだのち、前述の28人に縮小されたほか、そもそも通常のアクティブ・ロースター枠の人数が25人から26人に拡充された。また、「Pitcher(投手)」「position Player(野手)」「Two-Way Player(二刀流選手)」と、明確な区分を要するようになった。

 MLBが内包する長く、深い歴史の中でそういった変遷を見ながらも、この制度は今なお、MLBファンの人々から注目されるものでもある。

 注目の若手の栄達、飼い殺されそうになった選手の一発逆転、ベテランの復活。

 この光景を目に焼き付けながら、人々は熱狂する。いつの時代も、どんな時もである。

 この小説では、どこかの世界の野球と戦争を題材にして二十八篇程度の短編を投稿しようと思う。

 彼らは全くの、架空の人物である。決して善人でも悪人でもなく、ただ野球を通してお互いに結ばれていた同志であると思ってほしい。

 そして、それがもし、あなたに感動を与えたのだとしたら、それほどの喜びはないと、私は思う。

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