猫・猫・猫なアパート天国へいらっしゃい♡
うちはアパートの一階に住んでいて、ベランダの柵を上がればすぐ外を歩けるという、少しセキュリティが心配な家に住んでいる。
でも、家の中はとても快適で、ペットOKのほんわかとした内装だ。
そして今日、友達夫婦が鍋料理を食べにくるので、ちょうどその準備を終えたところであった。
「ニャーウー…!」「ウーーー」
あららら。ベランダの近くで、猫のケンカが始まっているみたいだ。
最近、多いんだよね。秋先は繁殖期だから、結婚と育児のラッシュでみんなピリピリしているみたい。でもね、うちの前ではやめて。
「ニャー」
実はうちにも、可愛い白猫ちゃんがいるんだよ。オッドアイの。
その子にとってはストレスになるから、ここは飼い主の私が追っ払ってしまおう。
私はベランダの窓を開けた。少し曇りがかっているけど、幻想的な青い空の下。
「シャー!!!」
私は猫が本気で怒っている時にやる、あの「ヒッシング」を息に出したのだ。
すると、猫同士のケンカがピタリと収まり、うちのベランダを横切る様にデブいトラネコと色黒ぶちの猫が一緒に走り去っていった。
あいつらかぁ。いかにもケンカにお盛んな野良って感じ。私は鼻息を鳴らした。
それと、猫のケンカを止めたのにはもう一つ理由がある。
実はうち自身が猫を飼っている関係上、知り合いや友達にも、猫を飼っているご家庭が多いんだけどね? その家の猫ちゃんは大体、おうちが放任主義で頻繁に外出しているんだ。しかも、最近は生まれたばかりの子猫まで複数匹いる。
だから、その子たちの生活の安全のためにも、たまに見かけたら私の家に遊びに来てもらっているってわけ。うちは在宅でいつでも猫を預かれるし、外は意外と危険がいっぱいだからね。
「ミー」「ミー」
ほらきた。ふわふわの毛が印象的な、ちっちゃ~いトラ柄の子猫ちゃんが二匹。
もう~声が可愛いな~…… あ、でもこの子達は安全か? ちょっと調べないと。
私はすかさず、ベランダ下にいる子猫ちゃんを前に…スマートフォンを開いた。この猫ちゃん達は、どこの家の子たちだったっけ…… あ、大丈夫な子たちだった。
「いいよ。上がっておいで」
私はそういって、子猫ちゃんたちを室内へと手招きする。
うちは一概に猫好きといっても、ちゃんと客は選ぶタイプだ。
同じ猫でも、中には病気持ちなのに外へ放りっぱなしだったり、狂暴で手が付けられない飼い猫もいる。だから、そういう所からの猫は基本受け付けないのだ。うちの猫もそうだけど、ほか預かっている子達に何かあってからでは遅いからね。私は、それをスマートフォンで確認したのだ。ネット上に掲載された情報を元に。
ちなみに、この子猫ちゃん達はOK。お利巧さんで、後から母猫も一緒に歩いてきた。少し三毛っぽい長毛種の猫。
ちょうど、家に遊びにくる友達夫婦の猫たちだからだ。ということは、飼い主さんたちと一緒に外へ出て、先にこっちへ駆けつけてきたんだね。
子猫ちゃんたち、そして母猫をうちのベランダへぴょんと飛び乗らせ――なにせ一階だから猫がうちに来るのは簡単なんだ――、私は窓を閉め室内へと振り返った。
「ミャー」「ニャ」「ゴロゴロゴロ~」
わーお。気づいたら、こんなに沢山の猫たちを招待していたのか! 私。
いーっぱいいる。なにここ“天国”ですか?
ざっと十匹超はいるだろうか。
みんな穏やかだけど、どの子も自由に過ごしていて、まるで猫カフェにいる気分である。中には一匹、うさぎも紛れているけど…… このうさぎちゃん、どこから来たんだ? まぁいいや。
何より猫たちとちゃんと仲良くしているし、耳を立ててピョンピョン楽しそうに部屋を歩いているのなら、いいでしょう! いやぁ動物だらけの家って幸せだね。
「おじゃましま~す」
お? ちょうど友達夫婦が来た。結婚してそんなに経ってないから、まだ二人の間に子供はいない。そんな若い夫婦である。
「いらっしゃい。ついでに鍋の準備もできてるよ」
私は玄関から夫婦を部屋へ手招きし、猫たちがたっくさんいる部屋の中央のこたつへと座らせた。少し寒くなってきたから、こたつを出しておいたってわけ。
そのこたつの上には、くつくつと煮立った土鍋がコンロに置いてあって、もういい香りがしている。だけど、ここの猫たちは誰一匹とも上へ昇ったりしない。みんなお利巧さんだよね。
大丈夫。あとでちゃんと君たちの分のエサも用意しておくよ。飼い主さんたちから金を徴収できたのを確認してからね。(笑)
「じゃあ、食べますか!」
こうして、二人暮らしの私と、友達夫婦が揃ってこたつに入ったところで、一斉に手を合わせた。おいしそうな香りのする鍋を囲み、みな穏やかな笑みでのご挨拶。
「「「いただきます」」」
(完 - 次回へつづく)
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