あぶない女優

鷹山トシキ

第1話 ​🎬 虚飾と血のフィルム:撮影所の秘密

 登場人物

​ 加納 りえ: 清純派から一転、本格アクション女優として再ブレイクを目指す若手女優。裏表がなく、芯が強い。

​ 大門 優作: 圧倒的な存在感を誇るアクション俳優。寡黙だがプロ意識が高く、特に撮影所の古い歴史に詳しい。

​ 比留間 剛: 独自の美学を持つベテラン監督。りえの才能を見出し、新作アクション映画『紅の剣』で彼女を主役に抜擢する。

 平成末期。都心から離れた山間にある、歴史ある**「大東央撮影所」**。ここで、比留間監督の最新作、時代劇アクション映画『紅の剣』の撮影が佳境を迎えていた。主演は加納りえ、そしてアクション指導と共演を大門優作が務める。

​ 撮影所全体を濃い霧が覆う早朝。りえは、大門との激しい立ち回りシーンの撮影を控えていた。この撮影所は、古くから**「呪いのフィルム」**の噂が絶えない場所だった。曰く、古いフィルム倉庫の地下には、過去に事故で命を落とした役者の怨念が宿っており、そのフィルムを見ると不幸が起きるという。

​ 撮影中、りえの動きが一瞬止まる。彼女の視線の先、撮影所の隅にある古びたフィルム倉庫の窓から、何かがこちらを覗いているように見えたのだ。

​「りえ! どうした? 集中しろ!」

 比留間監督の厳しい声が飛ぶ。

​ その日の夜、撮影所内の宿舎で、りえの控室が荒らされる事件が起きた。盗まれたのは、台本でも高価なアクセサリーでもない――彼女のスマートフォンに保存されていた、比留間監督との打ち合わせのボイスメモだけだった。

 🩸 最初の犠牲者

​ 翌日。撮影は中断される。

​ フィルム倉庫の地下、立ち入り禁止区域で、一人の照明技師が刺殺体となって発見された。凶器は、時代劇の小道具として使われるはずの、精巧な模造刀だった。

​ 現場に駆けつけた大門優作は、遺体のそばに落ちていた、古いスチール写真の破片を拾い上げた。それは、数十年前の撮影所で撮られた集合写真の一部だった。破片には、まだ若かりし頃の比留間監督と、見知らぬ一人の若い女優が写っている。

​ 大門は破片を隠し持ち、りえに近づいた。

​「加納さん。この撮影所には、**『表に出せない秘密』**がある。その秘密が、今回の殺人に関わっている」


​ 🧩 繋がる過去と現在

​ 本庁の刑事、如月は、大門から渡された写真の破片を見て、動揺を隠せない。その写真の背景には、なんと**犬山城の「水の陣」**と同じような、石造りの古い水路のようなものが写り込んでいたのだ。この撮影所と、遠く離れた犬山城に、一体どんな繋がりがあるのか?

​ りえと大門は、共同で調査を開始した。

​ 比留間監督: 監督は照明技師との関係を否定するが、彼の目の下のクマは深く、何かを隠している様子が窺える。りえに盗まれたボイスメモの内容を聞くと、監督は激しく動揺した。その内容は、監督が照明技師に**「呪いのフィルム」**の場所を尋ねていたというものだった。

 ​ 大門は、撮影所の裏手の山道で、不審な小型ドローンの破片を発見する。彼は、誰かが外部からりえの動向を監視していたことを突き止めた。

​ 

 ⚔️ りえ、襲撃される

 ​深夜。りえは、照明技師が殺されたフィルム倉庫で、比留間監督を問い詰めようとしていた。

​「監督! あのフィルムには何が写っているんですか? そして、写真に写っているあの水路は?」

​「黙れ、りえ!」監督は声を荒げる。「これはお前が踏み込むべき領域じゃない!」

​ その時、倉庫の天井から、黒い覆面をした謎の人物がロープを使って降下してきた。その人物は、プロの動きでりえに襲いかかる。

 ​りえは、咄嗟に護身術で応戦するが、相手は動きが速く、力も強い。絶体絶命のピンチに、倉庫の入口から大門優作が飛び込んできた。

​「加納さん、下がれ!」

​ 大門と覆面男の間で、激しいアクションが展開される。大門は覆面男の動きから、彼が単なるチンピラではなく、高度な訓練を受けたスタントマン、あるいはプロの暗殺者であることを察知した。

​ 覆面男は、大門の隙を突いて煙幕を投げ、姿を消した。

​ 残されたのは、激しく息を切らす大門と、恐怖に震えるりえ。そして、倉庫の床に落ちていた、覆面男が使っていた特殊な懐中電灯。その光は、通常の光ではなく、古いフィルムを傷つけることなく内容を読み取るための特殊な波長の光を放っていた。

​「奴らの狙いは、やはりフィルムだ」

 大門は確信した。

「そして、奴らはもう、フィルムの内容を知っている」

​ このフィルムに写っている「秘密」が、殺人事件の動機であり、撮影所と犬山城、そして過去の事故を繋ぐ鍵となる。

​ この後、彼らはフィルムの内容を知ることができるでしょうか?

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