第8話-説明
「はあー……」
俺は長いため息をつき、上を見上げてただ天井を見た。
「さて……これからどうしよう」
その場のノリで熱くなってしまったが……
「もう一度死ぬのか……ふんっ」
不思議と特に抵抗はない。
確かに、避けられない死というのは癪に障る。何しろ、一度死んでから転生したんだ。もう一度生きられるチャンスが与えられた。
喜ぶべきことのはずなのに……
なのに、俺の運命は、こんなに早くまた死んでしまうことだと?
幸せに生きるチャンスよりも、死ぬことの苦しみを味わうチャンスを与えられたようなものだろうこれ?
だから、あんな反応を見せた。でも、それだけだ。
自分の置かれた状況に対して、自然な反応としてイラついただけなんだ。
(もう一回死ぬか……)
「うーん……まあ、いいか。死ぬなら、仕方ないか。 どうにかなるものでもないからな」
もし、この世界が本当に【イセフロン】の世界なら、俺のキャラクターとしての死は、この世界の神々とでも言うべきゲーム開発者によって保証され、避けられないものとなっているのだから。
それに、俺はそこまで問題視していない。
もちろん、異論にはあるが――
「……んん?」
どうだろう……?
よくわからなくなってきた。
俺の思考と感情は渦巻いていて、明確に理解することを妨げている。
考えている間に、扉からコンコンと音がした。
思考を阻害されたが、特に考えがまとまらなかったから、ありがたい。
「ブラッドフォード様、ローズです。お父さんを連れてきました。部屋に入ります」
「あっ、ブラッドフォード様! 本当に目覚めたのですね!」
俺がベッドから起き上がったのを見て、ローズの父さんは喜びと安堵の表情を浮かべていた。
別に不思議なことではないのだが、なぜかそのあまりに安心したような表情が引っかかる。
「あ……ローズの父か? どうやら、皆さんに心配をかけてしまったようで、申し訳ない……手助けをするためにこの村に来たのに、俺の方が逆にお世話になってしまった」
「いえいえ、細かいことは気にしなくていいんです。実際、私たちの命を救ってくれたのはあなたなのですから。本当に感謝しています。本当……目を覚ましてくれてホッとします……」
(嘘つくなおい ! お前ら俺の命を狙ってたんだろ!? どこに感謝や安堵がどう絡むんだ!)
しかし……やっぱり、気になるな。
「……ちょっと聞いてもいいか?」
「え? ええ、もちろん。なんでしょう?」
「なんでそんなに心配していたの? 彼女……ローズからはひどい状態だったと言われたが……皆さんがそんなに心配するほどひどい状態ではなかったと思うのだが……」
「……え? 知らないのですか?」
「ん? なにを?」
(俺が知っているのは、お前らが俺の死を企てたということだけ。ああ、そうだ。この件は、このままにしておくつもりもないからな。いろいろな意味傷づいたからな!)
「あっ、お父さん……ブラッドフォード様にはまだ全部言えなかったの。元気になり、目を覚ましたのは、ついさっきのことだから」
「そっか……」
(あぁ、そういえば……前の会話が続かなかったから、すべてを説明することができなかったか)
「では、私が説明します。実は……倒れた日から3日間、目を覚まさなかったのです」
「……えーっ!?」
3日!? えっ ? なんで!?
まて……倒れた日も入れたら……
4日間も寝てた!? マジで!?
「一体なにが……」
「ブラッドフォード様が倒れた後のことをもう一度最初から説明します」
ローズの父親は、まず到着した騎士が対処した残りの魔物について、襲撃の余波に対処する村人たちについて、そしてその間ずっと俺の世話をみてくれたローズについて、順に説明した。
俺が野生の魔物のように暴れまわっている間に、多くの魔物は淘汰されてしまった。そのため、俺が意識を失ったときには、すでに状況は徐々に制御されつつあった。
その後、また何匹かの魔物がやってきたが、村に残っていた魔物と一緒に、到着した騎士が一掃してくれた。
魔物が一掃された後、やってきた騎士たちは周囲を確認するために出発し、何時間もパトロールしてさらなる魔物の出現を警戒し、後で村に戻ることになった。
村人たちは、魔物が少なければ自分たちで対処できるが、多すぎると対処できないから、村長と騎士団はそうすることにした。
その間に、村人たちは徐々に落ち着きを取り戻し、犠牲者や被害状況を確認した。
ローズの父と他の数人が村長に俺のことを報告しに行ったが、村長自身は他の村人から事前に俺のことを報告されていたようだ。
「ブラッドフォード様を見た連中は、その姿に人生をあきらめたらしいですよ。何せ、魔物を殺し続け、その血を浴び続けたのですから……【魔物の中で、誰かが……何か狂ったものが暴れまわっていて、自分たちの種族さえ殺している!】って居りましたとさ、あははは」
「あはは……そうか……」
(いや、笑うとこじゃねえだろてめえ! なんで俺を魔物と認識したその連中は!?)
あの時……この世界に目が覚めるまで何をしていたのか、まったく覚えていない。
しかし、部分的に残っている曖昧な記憶と、彼らから聞いた話をつなぎ合わせると……
俺は倒れるまで魔物と戦っていたに違いない。
いや……ケイブラッドフォードが戦っていたんだ。
魔物の襲撃を知ってここに来たのか、それともただ近くにいたのかわからないが……村が襲われているのを知って、すぐに助けようとしたのだろう。
この辺りの村々は、生い茂る木々で隔てられているだけで、それほど離れてはいない。彼はここも含めて他の村も助けてきたのだろう……そして最後に、俺が見た最初の村で疲労か何かで倒れた。
だとしても……まだ辻褄が合わない。
「ブラッドフォード様が倒れた時、ローズと私はブラッドフォード様の面倒を見ようとした。でも、ブラッドフォード様の容態が思ったより悪かったので、村長に助けを求めて迎えに行きました。村長が到着すると、ブラッドフォード様の状態を見て、診断を下しました」
「それは?」
「ブラッドフォード様は、マナ欠乏症に陥っています」
「ほぉ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます