第3話-あのゲーム道理
(いま、俺は一体なにを……)
「すごい……」
その声を聞いて、俺は振り返った。魔物からの恐怖が消え、2人の様子がはっきりとわかるようになった。
「あっ……あの! 父さんを、父さんを助けてください!」
「……見せて」
体を動かすと、あの魔物に殴られた痛みが読み上げる。
(くっ!)
恐怖からアドレナリンがなくなった今、先ほどよりも強い痛みを感じ、俺は膝をついた。
横になって痛みで叫びたいのは山々だが、子供の前でそんな真似はしたくなかった。
何より、彼女は俺を頼り、期待しているのだ。子供の信頼を打ち砕くような人間にはなりたくない。
まだ痛みで少しよろめきながらも、男の状態をよく見ようと近づいた。
男はが殴られすぎて、このままではすぐに死ぬと子供でもわかる。
俺がここに来るまで、彼はあの魔物から多くの攻撃に耐えてきたに違いない。
「ローズ……ダイジョウ……ブカ」
彼はなんとか小さな声を出した。それでも、彼がどれだけその子を愛しているかは伝わった。
「お父さん! 私は大丈夫だから……お父さんも! お父さんも……!」
父親は彼女の声を聞いたようで、微笑んだ。
その光景は、俺には耐え難いものだった。絶対に見たくないものだ。
こんな結末は絶対に受け入れたくない。
その時、信じられないものが頭に浮かんだ。普通なら、非常識な考えだ。
でも、今やったことを見て、うまくいきそうな気がしたんだ。
少女の方に手を伸ばし、頭を撫でた。
「……え?」
「大丈夫……俺が何とかするから」
俺は思考を集中させ、男に手をかけた。
さっきのことを考えた。自分の考えていることが正しいのかわからないけど、やってみるしかない。
(もし俺の考えが正しければ……さっきやったことは、あのゲームの魔法……だとしたら、同じパターンを踏めば)
あのゲームのルールに従って、俺は魔法がどのように機能するかを形作ることに集中した。そして、唱え……いや、
――――魔法を詠唱した。
「光よ、眩惑力を与え給え【
詠唱始めた瞬間光は男を包み込みながら癒した。
回復は、肉体の傷を回復するだけでなく、スタミナも少し与える治癒魔法だ。
その証拠に、彼のあちこちの切り傷や打撲などの目に見える外傷は徐々に消えている。
男は地面からゆっくりと立ち上がるだけの体力を取り戻しつつある。
「すごい……まるで、何もなかったように……痛みが……」
「完全に回復したわけではない……まだ、出血多量による影響が残っているから。安静にする必要がある……」
「父さん!」
「ローズ!」
親子は安堵の表情で抱き合った。
(よかった……)
この心温まる状況を見ていると、自然と笑みがこぼれてくる。
しかし、その時......頭の片隅で、何かを忘れているような気がしてならない。
しつこいくらいに俺を突っかかるものがあった。
この時すでに、不安定なままゆっくりと床に向かって落ちていることを知らなかった。痛みも何も感じないのに、すでにゆっくりと失神していた。
(ああ、何かを忘れていた気がすると思ったら……そういえば……)
男はもう何も心配することはない。回復は、ただ使うだけではもったいないほど効果が高いと言われる魔法だ。
「娘と私を助けて――」
(ああ、そうだ……回復……治癒魔法は……上級魔法だった……)
「ありが……ざいます……!?」
「お父さん……たおれ……!!」
何を言おうとしているのか、もうちゃんと聞こえない。
自分がすでに床にぺたりと倒れていることにも気づかなかったし、感じもしなかった。
ただ、そのとき気づいたのは、自分が限界に達して、今にも意識が吹っ飛ぶしそうだということだった。
本当、せめて大事なことはゆっくり思い出せばよかった。
このことはメモしておこう。
(目が覚めた時に……このメモを……覚えていることを祈るばかりだがなぁ……)
そうして、そのまま、俺はあそこで気を失った。
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