第10話 リーグ最終戦
リーグ初優勝が決まった翌週。
それでもアリーナの熱気は最高潮だった。
「今日は楽しむぞ!」
「王者の試合を見せてくれ!」
観客席には、いつもの倍以上のファンが詰めかけていた。
千葉オーシャンアローズは、いつもと違う雰囲気でアップに入る。
緊張というより、どこか柔らかい。
■ 試合前ミーティング
古川監督はホワイトボードの前で腕を組み、
選手たちを見渡した。
「優勝は決まってる。
でもな……今日だけは“俺たちの家族”に感謝する日だ。控え中心でいく。
主役はお前たちだ」
控え選手たちの目が一斉に潤む。
コートに立つことの喜びが、胸にあふれるようだった。
「もちろん、必要なら美波とスカーレットも出す。
しかし今日は、まずは全員で戦う」
美波が笑う。
「じゃあ、安心して暴れてきてね!」
スカーレットも親指を立てた。
「後ろに私たちがいる。遠慮なしでいけ」
チーム全体が温かな空気で満たされていた。
■ 前半:控え組が魅せる“王者のバスケ”
スターターは控え5人。
だが、優勝チームという看板は伊達ではない。
スローガンはただ一つ。
「仲間のために、全力で」
試合開始。
――パスが速い。
――速攻が決まる。
――スリーポイントが連続で入る。
観客は驚きと歓喜の入り混じった声を上げる。
実況
「なんということでしょう!
普段出場機会の少ない選手たちが、
まるで主力のようにコートを支配しています!」
チームメイトの美波がベンチから叫ぶ。
「ナイスシュート!! もっといけるよ!」
「ディフェンス上げていこう!!」
控え組の背筋が自然に伸びる。
“このチームの一員でよかった”
そんな思いが走りに乗る。
前半終了。
オーシャンアローズ62 – 41 セレスティアスターズ。
観客席からは、まるで優勝試合のような拍手が鳴り続いていた。
■ 後半:美波とスカーレット、特別出場
後半開始直前。
古川監督が静かに声をかけた。
「お前たち、本当に最高だ。後半は美波とスカーレットも少し出す。
観客が、今日を忘れられない日にしたいらしい」
控え組が笑いながら肩を叩く。
「頼んだぞ、スターたち!」
「最後に決めてくれ!」
コートに立つと、アリーナが揺れるほどの歓声。
この日最大のボリュームだった。
■ 美波のプレー
・ノールックパスで会場がどよめく
・交代した控え選手にアシストを真っ先に供給
・ファンに向けて笑顔で手を振る
■ スカーレットのプレー
・ブロックショットで会場が悲鳴のような歓声
・速攻を自ら引っ張り、華麗なレイアップ
・仲間に走れと指示し、速攻の起点を作る
2人は“自分の得点”よりも“仲間を輝かせること”を優先していた。
実況
「スター選手が控え組に気持ちよくプレーさせています!
まさにチーム一丸、王者にふさわしい光景です!」
■ 試合終了:笑顔で締める記念試合
結果
千葉オーシャンアローズ 118 – 72 セレスティアスターズ
だが、点差よりも価値のある試合だった。
観客が総立ちになる。
控え組の選手は涙を流して抱き合う。
美波もスカーレットも笑顔で肩を組んでいた。
古川監督が記者に語る。
「今日は“感謝の試合”です。
このチームを愛してくれた人たちへ、最高の景色を返せたと思う」
アリーナにはまだ拍手が続いていた。
コートの青い風 てつ @tone915
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