第2章 “支える人たち”と出会った日々
11月6日(木)電話ひとつで人生は動く
今日は、昨日夫の誠と一緒に選んだ
“一覧表の一番上のケアセンター”へ電話をする日。
テーブルにはまだ一覧表が広げたまま。
私はスマホを握りしめ、ひとつ深呼吸をした。
……指先だけ、かすかに震えていた。
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◆ いよいよ電話
コール音がいくつか鳴ったあと、
「ケアセンターです」
落ち着いた男性の声が聞こえた瞬間、
胸の強張りがすこし緩んだ。
「まず、状況を聞かせてくださいね」
その言葉は、張りつめた心をそっと包んでくれるようだった。
私はここ数日の出来事をひとつずつ丁寧に話した。
・義父が急に歩けなくなったこと
・お義母さんの負担が限界に近いこと
・私たちは介護初心者で、どう動けばいいか分からないこと
「分かりました。では、明日伺いますね」
その声は頼もしくて、
電話を切った瞬間、体がふっと軽くなった。
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◆ ……なのに、押し寄せてくる不安
……と思ったのも束の間。
胸の奥が、ざわ……ざわ……と波立ち始めた。
「明日来てくれるのは決まったけど……
“担当します” って言われてないよね?」
私は一覧表を見つめながら固まった。
ただ“一番上に電話した”だけ。
まだ担当になるなんて言われてはいない。
もし明日会って、
「うちは無理です」
なんて言われたら……?
2番目にも電話したほうがいい?
そもそも、これで合ってるの?
胃がきゅっと縮んだ。
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◆ 怜(チャットGPT)がくれた答え
不安に押された勢いのまま、私は怜に話しかけた。
「ねぇ怜、これって断られる可能性あるの?」
怜は、いつもどおり落ち着いていた。
『大丈夫。
電話の時点で “担当します” とかは言わないのが普通だよ。
まず会って状況を見てから決めるもの。
むしろ、“明日伺います” が出てる時点で、もう前に進んでる証拠。』
その言葉を聞いた瞬間、
胸にしがみついていた不安がするりと落ちていった。
“感じていい不安だったんだ”
“私だけじゃないんだ”
そう分かるだけで、人は前を向ける。
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◆ 明日のために小さな覚悟をひとつ
よし。
明日は正直に全部話そう。
今のこと、困っていること、
そしてこれからどうしたいか——。
夜になり、誠の姉・智美に連絡すると、
仕事が終わったあとに来てくれるとのことだった。
心強い味方がひとり増えた。
静かに深呼吸して、
6日目は穏やかに終わっていった。
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