11月5日(水) ケアマネと出会う日

今日は仕事を少し早めに切り上げて、市役所へ行く日。

朝からずっとそわそわしていた。


不安もある。

でもそれ以上に——


“おじいちゃんとおばあちゃんの生活を、今より良くしたい。”


その気持ちが私の背中を押していた。


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◆ 病院への電話 —— ふいに突きつけられた現実


今日はもう一つどうしてもやらなければいけないことがあった。

おじいちゃんの行きつけの病院に電話して、


認知症疾患医療センターへの紹介状をお願いすること。


事情を説明して電話を切ると、まもなく担当医の先生から折り返しがきた。


「茂さん、急に歩けなくなったんですね。

 夏に転んでいますよね。

 あの時のCTには出ていませんでしたが……

 慢性硬膜下血腫の可能性があります。」


その言葉を聞いた瞬間、背筋がスッと冷たくなった。


先生は続けて言った。


「認知症疾患医療センターより先に、

 まず脳外科を受診した方がいいでしょう。

 紹介状、こちらで準備しますね。」


電話を切ったあと、胸の奥がずしんと重くなった。


——夏の転倒。

——縫ったおでこ。

——あれが原因かもしれない。


不安がいっきに押し寄せた。

それに…

歩けないのに、どうやって病院へ連れていく?

またあの騒ぎになったら……?



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◆ 市役所へ —— 扉の向こうにいた「味方」


夕方、私は市役所へ向かった。

入口を入って左側にある「御長寿応援課」。


不思議なことに、見た瞬間すぐに分かった。


“ここだ。”


窓口の職員さんは、驚くほど感じが良くて、

ひとつひとつ丁寧に説明してくれた。


私がまずやるべきことはただ一つ。


ケアマネージャーをお願いすること。


一覧表を渡され、自分で選んで電話する仕組みだと教えてくれた。

「電話で伝える内容」まで丁寧に教えてくれる親切さに、胸がじんわりした。


そこでふと思いつき、病院への移動手段も相談してみた。


「それでしたら、介護タクシーがありますよ。

 いくつか業者さんの連絡先をお渡ししますね。」


知らなかった世界が、少しずつ目の前に開いていく。


介護知識ゼロ。

経験ゼロ。

不安だらけだった私でも——


“動けば道は必ず開くんだ。”


そう思えた。


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◆ 帰り道、胸の中に灯った小さな光


役場を出る頃には、

胸の中のもやもやが少しだけ晴れていた。


「よし……

 誠さんにも話して、

 明日は一覧表の一番上に電話しよう。

 介護タクシーにも、今日これから連絡しよう。」


心の中で小さく決意を固めた。


その決意は、ほんの小さな灯りだけど、

確かに私の中で光を放っていた。



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