魔界王になるはずだったのに、天界の王の子供に転生したんだけど!?
百合
第1話 プロローグ-全ての始まり-
いつの時代も、生き物は争い、勝利した種族だけが、世界をものに出来る。
これはまだ、アダムとイブが知恵の実ともう1つ、神からもらった神器を割ってしまった世界のお話。
もうウンザリだ。
誰もが呆れた顔をしながらも、種族存続の為だけに武器を持っていた。
「どうせあの軟弱王じゃ、俺達が必死こいても天界よりも有利に立てない。」
「一体いつまで受け身でいるつもりなんだ。」
敵襲を待ちながら、隣にいるダリムはため息を吐いた。
ガンザもまた、見張りだというのに魔界と天界を分断する扉に背を向け、タバコに火をつけた。
全て黒で統一された家、黒くて裾の長いローブを着た人々を眺めながら、ガンザは大袈裟にタバコの煙を吐いた。
「今の王もその前は持病持ち。
アイツらは魔界をどうにかするより、自分の身体が大事なんだろ。」
「スリクは相当怒ってるぞ。軟弱王族なんて滅んじまえってな。」
「ははっ、そりゃ毎日の事じゃねーか。」
「そいや、最近はすっかりお前も野心が無くなったな。
前は、スリクと同じ事言ってたくせに。」
「10歳から俺は兵士としてやってるんだぜ?
そりゃもう、8年経てば落ち着くさ。」
「もう俺達18か。早いな。」
「両親が天族の兵に殺されて、行き場が無かったから、食い物や寝る所に困らない兵士になるのは、必然だろ。」
短くなったタバコを床に落とし、靴で踏みにじって火を消すと、ガンザは前を向いた。
下では怠けた様な顔をしている兵士が殆どだったが、スリクだけが長官にしっかりついてまわっていた。
スリクの目は、10年経っても光を失わず、殺意のオーラを纏っていた。
「おー、スリク。
アイツ、今日も元気だなぁ…。」
「あの長官しか、今は王と謁見出来ないからな。
…ただ、アイツは狼みたいな奴だ。
いつでもあの長官を殺して、立場の略奪の機会を伺ってるんだろ。」
そう、リスクは養成所から変わらなかった。
"いつかこの魔界の王族を滅ぼして、俺が新たな王になる。
その為なら、誰であってもしがみついて、どんな手を使ってもやってやる。"
10歳と思えない殺意を込めた瞳が、ガンザやダリムの心を揺れ動かし…………ていたのは、もう数年前まで。
どんどん昇格するスリクを横目に、2人は他の人と足並み揃えて一般兵をやっていた。
「交代だぞ。」
1つ年上の先輩兵士2人が見張り台に上がってきた。
足元にあるガンザのタバコの吸殻を足で蹴ると、悪態をついた。
「まーた、タバコばっか吸って。」
「暇ですし、どうせこちらから攻めるぞ!、なんて、長官も指示出てないですよね?」
「まだ長官は謁見しに入ったばかりだ。
最低でも1時間は指示もクソもないだろ。」
「お前らは一応夜通し監視してたんだ。
帰ってから休め。」
「「へーい」」
そう言って、ガンザとダリムは宿舎に帰ろうと、先輩に背を向けた時だった。
ゴゴゴゴゴ……
ガタガタガタッ
酷い地鳴りと共に、大地震が起きた。
家の窓ガラスは割れ、揺れに耐えれなかった家が潰れていく。
泣きわめく女や子供の声。
何が起きたか分からないが、大地震なんて体験したことのない人々は、一気に混乱の世界に落ちて騒ぎ、逃げ惑う。
「お、おい!あれみろ!」
そう叫ぶ先輩の声に、手すりに捕まって城の方を見た。
すると、帳のように城は真っ黒になり、離れた見張り台からでも分かるくらいの大きな火災が起きていた。
城周辺には亀裂がいつくも走っていて、高い外壁が崩れ始めていた。
その時、真っ青な顔をした先輩が、震える声で話を始めた。
「俺、聞いた事がある……王族が滅びる時、魔界は天災に見舞われ、魔界で争いが起きるって………。
その争いの勝者は………………………
魔界の新しい王になる。」
魔界王になるはずだったのに、天界の王の子供に転生したんだけど!? 百合 @ni-ruri
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