最期のピース

滝川れん

第1話 最後のピースを拾うそれにより変わる運命

 朝元良一はジグソーパズルのピースを拾い周りを見てみると最後のピースがハマってないジグソーパズルがそこに有った。良一はそれを捨てると家に帰って行った。家に帰ると妻が晩御飯を作って待っていた。

 良一は36歳で会社では係長をしていて上からは押さえつけられ下からは突き上げられていた。良一は何でも慎重に物事進めるタイプといえば聞こえはいいが優柔不断と言った方が合っている。

 そのために大事な所で決めきれず仕事がだめになってしまった事も有った。こういう性格なので昇進レースから外れてどうでもいい仕事を任されていた。それでも家では良い夫、父親を演じていた。妻は夫が演技をしているのを見抜いていてそういうのに腹を立てていたので会話はそんなになかった。

 晩御飯のおかずをつまみにお酒をもむのがほとんど唯一のたのしみ、みたいになっていた。しかし子供は良一になついていた。その子供が風呂から上がってくると

「パパ帰ってたの?」と子供が声を掛けた。良一は

「佐和子今日は何か有った?」

「今度の運動会の練習で30メートルを走ったの。私は足が速いから一緒に走った中では一番だった。」

「そうか佐和子はサッカーの練習をしていていつもボールを追っかけているからそれで早くなったのかな?」

「うん、サッカーは楽しいよ。私はクラブに入りたいんだけど年齢が入れる年齢になってないからダメだって。」

「来年には入れるからすぐだよ。」

「うん、美咲ちゃんと一緒に入ろうって話していて楽しみにしているの。」

「そう、それは楽しみだね。・・・・宿題はやったの?」

「まだ。これからやるからパパみてよ。」

「パパはこれからお風呂に入らなければいけないからママに頼んでみて。」

「いつもすぐにお風呂入ると言ってみてくれないんだ。」

「この次は見てあげるから。」そう話すと席を立ち風呂に入った。

 次の日曜日には良一は家族で遊園地に来ていた。子供でも乗れるジェットコースターに一緒に乗ったら初めはゆっくり進んだが意外と早い所も有った。娘はとても喜んでまた乗りたいと何回も乗ろうとしたが別の乗り物も乗ってみようと説得をしてメリーゴーランドに乗せた。良一は乗らずに妻と一緒に乗っていた。

 そんなたわいもない一日が過ぎて家に帰り着くと後部座席で娘は寝て居た。そのまま起こさないように抱きかかえてベッドに寝かせてリビングでビールを飲みながら妻に

「明日から3日間出張がある用意をしといてくれないか。」と、訊くと、妻も

「分かった。」と言いそれで会話は、終わり良一はビールを飲んでしまうと自分の寝室に行った。夫婦は殆ど自分の部屋にいて、子供が居る時だけ一緒にいるが、居ない時は自分の部屋で過ごすのが多かった。

 良一は出張先での仕事は順調に終える事が出来て帰りの東京行の新幹線に乗り込んだ。


 岩田龍は道に落ちていたジグソーパズルのピースを拾った。周りを見ると最後のピースが無いジグソーパズルがあったがそれを無視して、そのピースを暫く手に握りしめて歩いていたがゴミ箱を見つけてそこに捨てた。

 岩田龍は大学生で柔道部に入っていた。この大学に入ったのは柔道の特待生として選ばれたからだった。龍は子供時代から柔道が強くてその素質を見込まれて強化選手に選ばれていた。

 高校時代には大会に出て個人戦で地区優勝をして全国大会で3位まで入る実力だった。将来はオリンピック選手になる事を目標に頑張っていたが子供のころからどうしても勝てない選手が居た。その選手とは大体、準決勝または決勝で当たる事が多かったが必ず負けてしまった。

 そこでまず筋力トレーニングをして筋力を付けたし、精神力も鍛えようと護摩行もやってみたがそれでも勝つ事が出来なかった。大学2年生の時大会で試合をしている時に十字靱帯を傷つけてしまいそのまま入院してしまった。

 龍には付き合っている女性が居た。その女性は献身的に龍をサポートしたが龍は時々その女性に当たってしまう事があった。しかし女性はそれを受け流していたがある時言い返してしまい大げんかになってしまった。

 その日女性は家に帰ると感情を抑えきれず泣いてしまった。“私はこんなに尽くしているのに”と言う感情があふれてしまったのだ。泣いて、泣いて一晩寝たら少しは落ち着いてきた。謝りたい気持ちとこのまま別れてしまうかもしれないそんな思いがあった。

 一週間たったが龍の所にはいく事が出来なかった。そして、もう行くタイミングを失ってしまっていた。そんな時、龍から手紙が届いた。その手紙にはその女性への感謝と今までのお礼がつづられていた。最後に“君の存在の大きさを今更ながら知る事が出来た。ホントに自分のわがままにより君を傷つけてしまった事を後悔している。できるなら元に戻って欲しい。”と書かれていた。彼女はそれを読んで彼の病室に行って又看護をするようになった。彼は小声で時々“ありがとう”と言うようになった。それを彼女は聞こえないふりをして普通に過ごしていた。

 傷も治ってリハビリを終わって大学最後の大会に出る事になった。順調に勝ち進んで決勝まで来る事が出来た。決勝の相手はいつも負けていたあの人物だった。制限時間内には決着がつかずに延長戦に入って行った。残り時間が30秒になった時に龍は大外刈りを掛けに行ったが返されて反対に投げられてしまった。それで龍は負けてしまった。

 その時に又ケガをしてしまい医者からは現役は難しいと言われてしまって。悩んだが大学を卒業したら就職して付き合っている彼女と結婚しようと考えるようになった。その事を彼女に言うと彼女は“直ぐには返事できない少し考えさせてほしい”と、言ったがしばらくすると“あなたについて行きます。”との返事を貰った。そこで両親に報告する為に二人で実家に帰って報告すると龍はせっかく帰って来たんだから2~3日こちらに居るよと言うと、彼女だけ先に帰した。

龍は帰る日になると東京行の新幹線に乗り込んだ。


 山下基晴はジグソーパズルのピースを拾うと周りを見回して壁にジグソーパズルを見つけると、このピースが最後のピースであることが分かったがポケットに入れて帰って行った。 

 基晴は28歳で土木作業員をしていた。結婚はしていなくて何とか結婚したいと相手を探しているが簡単には見つからなかった。そこでガールズバーに通い詰めて何とかならないかと思っていたが、女の子たちの営業トークを真に受けてはせっせと通い詰めていた。

 女の子たちは表面上ニコニコしているが裏に回ると基晴の悪口で盛り上がっていた。基晴は酔うと女の子たちの体を触ろうとするが女の子たちはそれを上手くかわして逃げていて基晴は女の子たちに手玉に取られていた。女の子たちはこんな事を言っていた

「基晴さんが来ると私は嬉しいからできるだけたくさん来てちょうだい。」基晴はその言葉を信じて女の子たちは喜んでいると思い込んでいた。

 しかし女の子たちも商売とは言え基晴のいい加減さが嫌になって来てなんとなく避けるようになったが、基晴はそれに気が付くことなく給料日になるとそこへお金を落としに行った。

 又、基樹はギャンブルが好きで特にパチンコにはまっていた。新台が入ると必ず行きつけのパチンコ店に行った。たまに勝つがほとんど負ける事ばかりだった。収支は計算するまでもなく大幅な負け越しをしていた。こういう事をやっているので当然にお金が足りるはずもなく借金をしていてその額は250万を超えていた。

 基樹はどうしても結婚したいのでマッチングアプリもやっていた。写真は修正したものを使っていたのでなんとなくメールの交換までは行くのだが、返す返事が上手くない為に会う所までは行く事が出来なかった。

 そこで基晴はAIにメールの上手い返し方を調べてその通りに送ると何とかデートするところまでは行く事が出来た。しかし写真は修正している物を使っているので会いに来た相手は基晴を見てびっくりする。そして元蓮は

「アプリの写真は1年前に取ったもので今は少し変わってしまったんだ。」との言い訳をするが、そんな言い訳が通るはずもなく次のデートの約束を取ることは出来なかった。なかには基晴のいい加減さに呆れてデートの途中で帰るものもいた。

 基晴は“ここは地方で俺の良さが分からないんだ”と思って、

東京へ出ようと東京へ向かう新幹線に乗っていた。


吉川みどりは友人と買い物の帰りにジグソーパズルのピースを拾った。周りを見ると壁に最後のピースが無いジグソーパズルがあった。みどりは何気なしにそのピースをはめるとぴったり合いそのジグソーパズルは完成した。友人は“完成したね”と言ってハイタッチをした。そして二人はそのまま家に帰った。

みどりは高校二年生でアイドルの推しにはまっていてそのアイドルの追っかけもしていた。今は学校から帰るとそのままアルバイトに向かいそのアイドルの推し活に充てていたがそれ程の無理はしてなかった。自分の経済力が許す範囲でやっていたので両親も今はそれを許していて、“3年に成ったら考えるように”とのアドバイスは行っていた。

みどりの学力は並程度で有名大学はとても無理ではないかとの見方が強かった。しかしみどりはその事に対して特別の思いは無くそのまま聞き入れていた。

みどりは子供の頃からアイドルが好きでできれば自分もなりたいと応募をするのだがそのたびに落選を繰り返していた。これが最後と受けたオーディションもあえなく落ちてしまった。だからもうしょうがないと推しに専念する事にした。

しかし友人に言わせると歌はうまい方じゃないかとの評価を貰っていたためにその気になってしまった自分に“これが現実だ”と言い聞かせるしかなかった。

みどりの周りにはボーイフレンドの居る子も居てその子たちは時々のろけるので“その話は聞きたくない”と思ったが、二人で話ではなく大勢で話している時その話が出たら何気なくそのグループから離れていった。

みどりがのろけにも似た話を聞くのが嫌なのは元、付き合っていたボーイフレンドにひどい言葉を掛けられて別れたからだ。その言葉は“お前の頭は猿よりも劣っているそんな頭しか持たないやつとはこれで終わりだ。”と一方的に別れを告げられて、別れたので近くにいる男に嫌気がさして女の子のアイドルを追っかけている。

「みどり、ごめんね、いっしょに行けなくなって。」

「大丈夫よ、おばあさんが危篤じゃそちらに行くしかないものね。」

「私の分も応援してきてね。」

「分かった。」

 そう言うとみどりは推しのコンサートを観るために東京行の新幹線に乗り込んだ。


 朝日良一、岩田龍、山崎元春、吉川みどりが一緒に乗った新幹線の出発を待っていたが一向出発しないので何かあったのかと思っているとアナウンスが流れた。

“当新幹線は変電所の落雷による停電のため発射が遅れています。皆様におかれましては一度下車してお待ちください”との事だったので4人は下車した。しかし4人とも何とか東京に行きたいので夜行バスに4人とも乗る事が出来た。

 その夜行バスは消息が分からなくなり色々捜索したが見つけることは出来なかった。

 朝日良一はジグソーパズルの最後のピースを拾った。それを無視して家に帰ると娘と会話路したと風呂に入り、次の日曜日には遊園地で遊んだ。出張が終わり東京行の新幹線に乗っていた。

 岩田龍はジグソーパズルの最後のピースを拾った。普段なら無視をするのだがその時は最後のピースを時ジグソーパズルにはめた。

 柔道の試合でケガをしてガールフレンドの献身的な介護により治ったが又ケガをして引退を決めて結婚する事になり実家に報告してからから帰るために東京行の新幹線に乗っていた。

 山崎元春はキャバクラ通いを続け、マッチングアプリで結婚相手を探していたが地方ではだめだと東京行の新幹線に乗っていた。


 吉川みどりは何事もなかったように推しのアイドルの応援を楽しんでいる。


 新幹線が落雷で動かなくなったので3人は夜行バスに乗り換えて東京に向かった。その夜行バスは消息を絶った。


 朝日良一は最後のジグソーパズルを無視した。家で娘と話し、遊園地に行き出張から帰るために東京行の新幹線に乗っていた。

 

岩田龍はガールフレンドとの結婚式を挙げている。


 山崎元春はキャバクラに行きマッチングアプリをしていたがここではだめだと東京行の新幹線に乗っていた。

 二人を乗せた新幹線は動かなかった。朝日良一、山崎元春、夜行バスに乗り換えた。夜行バスは消息を絶った。

 朝日良一、山崎元春はジグソーパズルの最後のピースを無視している。新幹線に乗った。夜行に乗り換えた。消息をたった。

 朝日良一、山崎元春はピースを無視している。バスは消息を絶つ。

 朝日良一、山崎元春は・・・・・・・・

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最期のピース 滝川れん @maekenn09

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