毎日短編集。

らんぐどしゃ

図書館の魔女

どうやら自分は転生というのをしたらしい。目を覚ますと見たことの無い大きな図書館の中に立っていた。

目を覚ます直前の記憶は、ビルの上から降ってきた鉄骨が目の前に迫り、そこで途切れている。

ふと、背後に人の気配を感じ、振り返った。

そこには、黒いドレスを身に纏った女性が立っていた。

「あら、来客なんて、嬉しいわ。」

彼女はそう言ってくすりと微笑む。とても美しい人だった。

「あ、あの、ここは...?僕は死んだのでしょうか?」

そう尋ねると女性は美しい動作で近くの本を手に取ったわ、

「そうね、貴方の人生はどうやら終わってしまったみたい。だから…。」

だから…、その後に続く言葉はもしかして「チート能力をあげる」?「転生させてあげる」?僕は次の言葉を固唾を飲んで待った。

「だから…貴方の人生を私にちょうだい?」

彼女はそう言って本を開く。

眩い光と共に、僕は本に意識が吸い込まれて行くのを感じた。

次の瞬間、図書館に広がるのは静寂のみ。

その中で魔女はぽつりと呟いた。

「…ふふ、これでまた本が増えたわ。

2、3日は退屈しなくて済むかしら。」

その図書館には、ページをめくる音だけが響いていた。

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