第12話 新しい砂時計
「ミロはな、まあ俺も良くわからん」
正式な登録手続きをしに、あの店に後日来ていた。
その後少し須磨さんと雑談していた。
因みに最初にやってた謎の合図は事前連絡を面倒がるほぼミロ君専用みたいで、普通に行く日を事前に連絡して、店の前で電話したら開けてくれる。
これは夜中の入り方で昼間なら普通に雑貨屋として開けてあるのでそのまま店に入れる。
ただ普通の客が入っている所を見た事はないが…
雑貨屋としては、やはりやる気が見えない。
「ですねえ。須磨さんはどう言う経緯でミロ君と知り合ったんですか?」
「まあ、ゲーセンだな。」
「ゲーセン…」
こんなお爺さんが夜中にゲーセン…
何かミロ君より浮いてそう…
まあ普段の生活時間帯が深夜の時点で私なんかよりずっと色々若い。
「俺もそこそこ自信はあったんだがな。ミロがスト5の対戦で乱入してきやがってな。」
「はあ…」
「俺の春麗をボコしやがった。ストレート勝ちで」
「はあ…」
「あの野郎、卑怯にもダルシムなんか使いやがって。腕伸ばすわ火吹くわ一撃も入れられんかった。」
「はあ…」
「悔しいから別キャラで負けた方が何でも言う事聞くって賭けてな。」
「はあ…」
「でな、今度は俺がキャミィで奴はザンギ…結果はスクリュードライバー食らって終了よ」
「はあ…」
よく分からないけど、多分負けたんだろう…
「でな、血の契約ってのやらされた訳よ。こんな死にかけのジジイにひでぇ野郎だ。」
それは確かにちょっと気の毒だ。
「んでな、奴の希望で定期的に対戦してたんだけどな、アイツ危なっかしいだろ?」
「はい…そうですね…」
「自分オトリにしてゲームみたいに襲うんだよ」
「…」
「だからな、俺がやられても仕方ねえ奴を遊び相手に宛がってやってんだよ」
「成る程…しかしミロ君に納品精算書が書ける気がしませんが…」
「まあ、アイツは遊べれば良いから金は要らんらしい。」
「そうですか…」
「その分コッチで貯金してやってる。何かあった時の為にな。」
「須磨さんは…お節介で世話焼きな人なんですね。私に対しても含めて。」
「まあそうじゃ無きゃこんな商売は出来んな」
そう言ってお茶をズズッと啜った。
「それでは、改めて宜しくお願いします。」
そう言って警察仕込みの深いお辞儀を須磨さんにした。
「おう」
と一言返事された。
この人の元なら働いてみるのも悪くないかなって思った。
あの時ミロ君を口封じにねじ伏せなかったのは、まるでこの出会いに導かれる事を予感してたんだろうかと柄にも無くロマンチックな事を考えていた。
砂時計の砂は落ち切ってしまったけど、新たにミロ君の手でひっくり返されて新しい砂が落ち始めたようだった。
○○○○○○○○○○
「へえ!そんな事になってたの!」
洋子に報告していた。
「じゃあ、その内私も金欠になったら紹介して貰おうかしら?」
「そうねえ、多分私より洋子の方が上手くやりそうね。射撃も柔道も私より強かったもの」
「昔の事よ。今はお互い冴えない見た目のおばさんよ。あはは」
「そうねえ。うふふ」
「お待たせ致しました。イチゴタルトとアールグレイでございます。此方は砂時計が落ち切ってからお召し上がり下さい。」
「わあ!来た来た!」
「お互い相変わらずダイエットは眼中に無いわね。」
「そうそう、そんな事気にする相手もいないしね!」
「この砂時計の砂が落ち切った後にそのミロ君って子がひっくり返して新しく始めたのね。詩織は…」
「そうねえ。じゃあ洋子の砂時計は私がひっくり返してまた新しく始めさせるわ。」
「まあ、結局はろくな死に方はしないってのだけは分かるわ…お互いにね。」
「さあさあ、くよくよしないで、取り敢えず頂きましょ!砂時計は落ち切ったわよ!」
「そうね。ダイエットは明日からね!」
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