第8話 それぞれの新スタイル
ギルドハウスのリビングルームはまるで実験室と化していた。四人全員が《盾の探求者Ex Lv1》の称号効果でメイン武器と小盾を同時に装備し、それぞれの新しい戦闘スタイルを模索している。
「うーん……この戦斧と小盾の組み合わせ、新鮮!」
ルーナがポジティブな感情で試行錯誤する。両手武器である戦斧は、その重量ゆえに強力な攻撃を繰り出せるが、片手が塞がることでバランスが崩れがち。
「『ヘヴィウォリアー』への進化も魅力的だったけど、このスタイルは私たちだけのオリジナルだもんね!」
アリスがウィンドウを見ながら言う。
「そうと決まれば、私だけの連携スタイルを見つけ出すぜ!」
ルーナはそう言うと、戦斧を背中に背負い、両手で小盾を構えたり、再び斧を構えたりと、自分なりのスタイルを探っていく。「ナイトの範囲攻撃特化版」という、誰も思いつかない立ち位置を目指して、彼女の試行錯誤は続く。
一方のフィリアとアリスは、魔法使いならではの応用を試みていた。
「私の『ライトシールド』、こんな感じです!」
フィリアが恥ずかしそうに杖から光の粒子を発生させると、彼女の周りに光の盾が召喚された。それは、彼女の周りをくるくると回り、外部からの攻撃を防ぐバリアとなる。プリーストジョブと盾スキルを組み合わせた、彼女だけの独自魔法だ。
「わぁ!可愛いし、すごい!」アリスが目を輝かせる。
それを見ていたアリスの頭に、閃きが走る。
「フィリアちゃんのその『ライトシールド』、私のサイキック魔法で応用できないかな?」
アリスはそう言うと、サイキック魔法を発動させた。
「『サイキック』!」
アリスが杖を振るうと、彼女の装着した小盾が音もなくふわりと浮遊した。
「浮いた!いける!」
アリスの小盾はまるで衛星のように彼女の周りを回り始める。「これは念動力で盾を操る『サイキックシールド』!フィリアちゃんの『ライトシールド』を参考にしたの!」
「すごいです、アリスちゃん!」
「これで、私たちウィザードとプリーストが詠唱妨害される心配はほとんどなくなったわね」
メイが二人の様子を見て満足そうに頷く。
そして当のメイ自身は――。
「私もこの小盾を使いこなさないと」
メイは小盾を腕から外し、システムウィンドウを開く。彼女は盾スキル**[サイズチェンジ]**を発動させた。通常は盾を大きくして防御範囲と防御力を強化するためのスキルだが、彼女は逆転の発想で小盾を手の甲にぴったりと収まるサイズまで小さくしてみる。
キン、という軽い音と共に小盾が小型化した。
「これならモンクの動きを阻害しない」
(それにこのスタイルなら……)
メイは空中に向かって拳を突き出した。右手の甲の盾の縁が獲物のように鋭く光る。
「盾の縁で殴りつけることで、単純な打撃よりもダメージが上がるし、相手の装備耐久値減少効果も上がるはず」
メイは自身の新スタイルに、クールな笑みを浮かべて「名づけて、盾ナックル」と呟いた。
(通常の「モンクマスター」はおそらく純粋な攻撃力と素早さを極める道を選ぶだろうけど、私はこの「盾」を「武器」として使う。セオリー無視の、私だけのモンクよ)
防御力を捨てたジョブに防御力を足すという矛盾。だがそれは盾を防具ではなく武器として使うという、誰も思いつかない発想の転換だった。
「これぞ、盾モンク……最強じゃない?」
メイのクールな口調とは裏腹に、その目には確かな自信が宿っていた。
こうして《クローバー》の面々は、セオリーを無視した自分たちだけの「盾」スタイルを確立し、次なる目標である「称号」集めへと向かう準備を整えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます