エーテリウムの環 第三部・未来編 予告版

G・L・Field

第1話 Standby......


 機械の起動音とともに、薄暗いコクピットの中央モニターに灯りが点る。

システムのロードが始まり、黒い画面に白い文字列が走った。


F.L.Y. system… boot sequence start

Core check… OK

Weapon link… OK

Life support… GREEN

Synapse channel… OPEN


少女が左右のトリガーに指を添えた瞬間、自動認識モードが走る。


── Pilot name : Ryush Ardy

── Synapse link… STABLE

── Neural latency… 12ms → 7ms → LOCK

── Personality profile… MATCH


――Call my name,Ryush......


「フライ、こちらリューシュ・アーディ! スタンバイOK! 行くよ!」


『音声認証完了。

 パイロット、リューシュ・アーディを確認。

 戦術支援AI“フライ”、オンライン』


乾いた声がヘルメット内に響く。


『心拍数、平常より十二パーセント上昇。

 ――いい傾向だ。そのまま怖がっていろ。生き残る確率が上がる』


「励まし方が独特すぎるのよ、毎回!」


『事実を述べただけだ。

 リューシュ、最終確認。目標:作戦宙域への侵入、味方艦隊の損耗最小化、自機の生還。

 ――“世界を救う”はオプション扱いでいいな?』


「オプションじゃなくて本命にしてよ!」


『了解。本命に設定。

 では、英雄様。発進プロセスを開始しよう』


リューシュは左右のトリガーを一気に引き絞った。

ブースターに火が灯り、機体が低い唸りから轟音へと変わる。


『カタパルト・レーン、クリア。加速ベクトル問題なし。

 リューシュ、視界と意識の共有率を二十パーセント上げる。

 ――落ちる時は一緒だ』


「縁起でもないこと言わないで!

 リューシュ・アーディ、出ます!」


金の縁取りが施された白き機体は、カタパルトから弾き出されるように、

深淵の宇宙そらへと飛び立った。

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