悪役貴族に転生した俺、最弱武器の古びた鉄剣が 進化するたび因果すら断つ最強武器だったので破滅エンドを全部へし折る
@gomaeee
第1話 悪役貴族に転生し、破滅ルートと“没データの鉄剣”を思い出す
目を開けた瞬間、頭の奥で電流のように記憶が弾けた。
(……これ、“イシュタリア”だ)
前世で何百時間もやり込んだ乙女ゲーム。
その最悪ルート──
「悪役貴族リュクス=ハルト、処刑エンド」。
一年後、王都の中央広場で首を落とされる。
逃げても無駄。
フラグが積み重なると必ず死ぬ。
そして今の俺は、その 悪役本人 だった。
(ゲームじゃ“救済ルートなし”。破滅一直線のゴミ貴族……)
最悪の現実に、胃が重くなる。
だが同時に、もう一つの記憶が蘇った。
(……あれだ。あの“没データ武器”。)
◇
寮の裏庭へ向かう。
ゲーム知識で、この場所に“あるはず”のものを知っていた。
──ガラクタ置き場の奥。
物陰に、一本の 古びた鉄剣。
(あった……本当にある)
前世のゲームで、この剣は存在だけ記録されていた。
だが本編では誰も拾わず、
攻略Wikiでも“没データ”扱いだった。
唯一、開発者インタビューで
「因果切断のプロトタイプとして作った」
とだけ語られた幻の武器。
(ゲーム本編では覚醒しなかった。
でも……データだけは残ってた。
“破滅フラグを強制的に無効化する武器”。)
つまり──
破滅ルートを回避できる唯一の要素。
剣を拾い上げる。
刃は錆び、歪み、見るからに粗悪品。
だがプレイヤーだった俺だけが知っている。
(外見はゴミ。中身はバケモノ)
ゆっくり握った瞬間──
刃の奥が“ざらり”と脈打った。
(やっぱり……生きてる)
ゲームでは動かなかった内部構造。
“層”と“線”でできた奇妙な多層膜。
魔力を通せば覚醒する、と説明されていた。
◇
日が落ちた頃。
裏庭で、木片を一本拾う。
(ゲームでは魔力を点でなく“線”で流す……
魔力少なくても問題ないはず)
指先から細い魔力を押し込む。
刃の内部で、薄膜が一枚だけ“カチリ”と噛み合う感覚。
(……通った)
木片の表面を軽くなぞっただけで──
ぱきっ。
木の繊維が、
線に沿って“滑らかに”割れた。
「……ゲームより速く反応してるな」
脈動。
層構造。
切断の滑らかさ。
全部、俺の知っている
“没データの因果切断武器”そのもの。
(これなら……破滅ルート、全部折れる)
婚約破棄。
学園処分。
家門崩壊。
暗殺。
国家滅亡。
すべてのイベントは“因果”でつながっている。
ゲーム知識の俺だけが、その構造を理解している。
鉄剣を握る力が自然と強まった。
(この世界で唯一“破滅を消せる武器”。
そして使えるのは──俺だけだ)
夜風が吹き抜ける裏庭で、
俺は静かに息を吐いた。
──一年後の処刑エンドを断ち切るため。
──すべての破滅フラグをへし折るため。
(ここから始める。生存ルートを)
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