第2話 担当刑事マックス

「ああ、そう」


 そんな会話をしながら博物館の玄関に入るふたり。


 そのふたりに軽く頭を下げて、コートを掻き合わせて外に出る無精ひげの中年男。少し視線で追ったその細身の男の後ろ姿に、ナイトは小首をかしげた。


「なんか怪しいやつね」


「会場はこっち」


 マックスに導かれて、会場入りするナイト。


 展示物が壁に沿って飾ってあって、花形が会場の真ん中ほどに設置されている。ガラスケースの側に立っていた、恰幅のいい壮年の男が悲し気にこちらを見る。


「ああ、探偵さん、こちらに・・・この博物館局長のサフランです」


「ナイト・ヴィヴァイア。探偵社キャトフル・キャトエルの代表です」


 マックスが、キャトフルキャトエル?と少しおかしな発音で言った。


「怪盗花猫の本名はキャトフル・キャトエル・・・もしやお嬢さん・・・」


「呼び出したのはそっちでしょうに」


「失礼。キャトフル・キャトエルの由来は?」


「父が生前所長をしておりまして、社名の意味を言わずに亡くなりました」


「それは・・・お悔み申す」


「右に同じ」


「そんなことより、本題に入りませんか?」


「それもそうだ・・・刑事さん、例のカードは?」


「カード?」


「犯行予告状、見てみますか?」


「ええ、ぜひ」



 アカンサスバのふちどりに、【 ノットタイトル いただきたく候 怪盗花猫 】


 と、飾るようにサインがしてあるカードだ。口紅をつけてある唇での口づけ印までしてある。


 マックスが、「どう思います?」とナイトに聞く。

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