涙を受け取り希望を繋ぐ喫茶店

@Karasu72noko

第1話 『喫茶店・向日葵』

僕、姫矢煙は高校3年生のまぁどこにでもいる学生だ。僕の生活は朝、起きたら朝食を食べて顔を洗って、制服に着替えて家であるボロアパートから学校に行って帰りにコンビニで夕食と次の日の朝食を買って帰るだけの生活だ。今日もコンビニに寄ろうと思って財布を見ると残金が少ないことに気づいてコンビニのATMでお金を吐き出そうとして確認すると口座にも殆どお金が残っていないことに気づいた。

「あーあバイト探すか。それにこのままだったら学校中退したほうがいいかな〜別に友人もいないし部活も委員会も入ってないし問題ないよな〜」

そう言って口座に残っていたお金を引き出して夕食と次の日の朝食を買ってその日は家に帰った。翌日、今日は土曜日で学校も休みだった為、街でバイトを募集している所がないか広告の貼り紙を見ながら歩いていたがなかなか見当たらなかった。そんな感じで午前中を過ごしていて昼飯時になった時にお腹がなった。

「はぁお腹空いたな。どっかで食べるかな」

そう言って近くに飲食店がないか探して歩いていると喫茶店があった『向日葵』という店名らしい。僕はその喫茶店に入った。中は明るい照明で紅茶やコーヒーの香りが漂っていてそこにいたお客さん達はみんな笑顔だった。

「いらっしゃいませ。1名様ですか?」

「はい」

「ならこちらのカウンター席へどうぞ」

若い女性の店員さんが丁寧に対応して奥のカウンター席に案内してくれた。

「こちらがメニューになります。おすすめはランチセットです。」

「じゃあそれをお願いします」

僕はそう言って注文したランチセットが届く間に水を飲んでため息を吐いた。そして昨日の夜書いた退学届を見ながら憂鬱な気持ちでランチセットが届くのを待っていると後ろの席のテーブル席に座っていた男性に声を掛けられた。

「どうした?兄ちゃん。そんなこの世の終わりみたいな顔をしてため息ばかり吐いて。何かあったのかい?」

「ええ。ちょっと悩んでることがあって。」

「なら凛ちゃんに悩み事を聞いてもらえばいいよ。あの娘はね、みんなの悩みを聞いてみんなを笑顔にしてくれるんだよ。」

「はぁ」

僕がなんとなく返事を返すと男性は席を立って会計を済まして店から出て行った。そうしている間にランチセットが届き、さっきの女性の店員さんが僕の隣の席に座ってきた。

「お兄さん何に悩んでるんです?さっきからずっとため息ばかり吐いて。それにお店に入ってきた時からずっと顔色悪いですよ。」

「お仕事、いいんですか?」

「ちょうどお昼休憩に入ったので大丈夫ですよ。それにお客さんの悩みを聞くのも私の仕事の1つなんですよ。だからお兄さんの悩み、教えてください」

普段の僕ならそんなことを言われても誰かに話そうなんて思わなかったが彼女になら何故か話してもいいかと思い話し始めた。家族との関係が悪く1人で生活していること、学校でもや友人がおらず退学を考えていること、そして情けない話ではあるが金欠でバイトを探していて偶然にもこの喫茶店を見つけて入ったこと全てを話すと彼女は一度、喫茶店の奥の方に入って行って直ぐに男性を連れて戻ってきた。

「店長、彼を雇ってあげることって出来ないですかね?」

「凛が認めたんならいいんじゃないかな。バイトじゃなくて正規雇用で雇いたいくらいなんだよね。此間、バイト君が2人いっぺんに辞めちゃって困ってたからこっちとしてもありがたいし」

「ええとそんな簡単に面接とかもしないで決めちゃっていいんですか?」

「別に問題ないよ。それと悩んでいるなら学校も辞めた方がいいとおもうよ僕も。だってそれが精神的に辛くなっている原因の1つだろうし悩み事はね成長して雑草の様に増え続ければ本来そこに咲くはずの笑顔っていう花の養分までとって枯らしちゃうんだよ。だから悩み事になっているならそれを解決するのがいいんだよ。明日から働ける?」

「はい。働けます。ありがとうございます」

僕は返事を返すと彼女が笑顔で話しかけてきた。

「お兄さん、来た時と違って凄いいい笑顔だよ。私は鈴林凛。よろしくね」

そう言われていつの間にか自分が笑顔になっているのに気づいた。

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