第2話 意外とグルメ?

 早朝の午前四時、酒臭い自分の息で目が覚めた。軽く頭を振って二日酔いになっていないことを確かめる。大きな欠伸あくびで眠気を追い出し、机の上のノートパソコンを起動。コンテスト用の小説の続きを書き始めた。

 別のアイデアが頭に浮かべば、そちらも並行して書き進める。歩んできた人生と同じでフラフラが性に合うようだ。

 締め切ったカーテンが明るくなると一階へ下りる。時間にすると午前七時前後。

 キッチンでは昨晩に溜まった食器を母親が、ガチャガチャと割れる勢いで洗っていた。時に本当に割るので我が家の食器は安物で統一されていた。いつ何が割れても惜しくない。

 その間に俺は座卓の上に置かれたケージへ向かう。

 目にした給水器の水は足りている。上部のふたを開けてえさの状態を確認。容器から零れたヒマワリの種が周囲に散らばっていた。しかもあまり減っていない。

 角の紙が盛り上がったところをそれとなく眺める。ハムの身体の一部が見えていた。意外と呼吸が早い。

 ヒマワリの種を食べ飽きたのだろうか。人間と同じで意外とグルメなのかもしれない。思いながら餌の容器を取り出す。種の補充は少量で抑え、上に被せるように出汁用の細いイリコを置いた。まずは三本で試す。

 ケージに容器を入れようとした手が止まった。

 ハムは紙の中から抜け出し、容器の置かれていたところに太々しく居座る。俺の姿を見ると瞬時に後脚で立ち、何かの禁断症状が出たように前脚でケージの壁を掻きむしった。


「いや、そんなに待たせてないだろ」


 そんな声も受け入れず、上体を左右に揺らしながら前脚で搔き続けた。置きたいところにハムがいる。頭に押し付けるつもりで容器を下していく。

 ハムが容器に飛び付いた。前脚を縁に引っ掛け、人差し指と親指の間に頭を突っ込む。触れたところが妙に温かい。天然のカイロとして持ち歩きたい気分になった。

 ハムはそれどころではない。早速、仕込んだイリコを猛烈な勢いで齧り始めた。それは最初だけで半ばでポイ捨て。ヒマワリの種を漁り始める。ケージの中の小さい支配者を気取っているようだった。


 その食欲のおかげでかなり太った。ドッグランではないが、少し場所を広げた方がいいかもしれない。あとは餌の改善だろうか。あれこれ考えていると腹が減ってきた。

 まずは俺の餌、いや、朝食にしよう。

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