第5話 王様ゲームなんだけど!?

 アルスの指導が終わると、というかアルスが一人ブツブツなにか呟きながら勝手に去っていったあと、俺は休憩がてらに中庭のテーブルに座った。

 そして、当然と言わんばかりに俺を囲むように水無瀬さんとアリアが左右に腰をかける。


「にしても、剣聖だなんて、ふふっ」


「あっ、今アルト様をバカにしたでしょ!」


「そういうアリアこそ春人くんをバカにしてるよね♡」


「あはは、バレましたかぁ〜」


 おいおい好き放題言いやがって。

 ていうか、お前らメイドは仕事しなくていいのか?


「ところで春人くん」


「なに?」


「今こうして男女三人が揃っているわけだし……」


 え?

 なになに?


 男女三人が揃っているからなんだというの!

 早く教えてくれよ!


「王様ゲームでもしない?」


「「王様ゲーム!?」」


「ってなんですかー?」


 俺とハモったのに分かってないのかアリアよ。

 それこそ叡智ある先人たちが発明した男女の仲を深めるあれだよ。


「というか、お前ら、まじでそろそろ働けよ?」


 おっと、ここは慌てちゃだめ。

 貴族の、男の余裕を見せねば。


「とか言いながら、春人くんもほんとはしたいんじゃないの♡」


「なになに、アルト様がしたいゲームなんですか!?」


「……否定はせん」


「だーかーらー、私を置いてけぼりにしないでくださいよ! 王様ゲームってなにか教えてくださいよアルト様!」


 あっ、水無瀬さんの言葉に載せられて完全にアリアのことを忘れてしまっていた。

 今にもはち切れそうな水風船みたいに顔が丸くなっているな。


「いいかしら、アリア、聞いたらもう後戻りができないよ?」


「受けて立ちますよ水無瀬さん!」


「それはね、クジで王様を決めて、残りの人に命令をするゲームなの」


「ほへえ」


 うん、分かってないなアリアは。

 にしても、「ほへえ」って、初めて聞いた気がする。


「まあ、やってみれば分かるよ」


「あれれ? 春人くんはわたしたちに仕事に行ってほしいんじゃなかったの?」


「まあまあ、休憩も大切だという話だ」


 おっと、これは決して私利私欲を満たすためじゃないよ?

 2人さっきからずっと俺とアルスの試合を観戦していたから、ご主人様としては、ほら、ちゃんと休憩も取らせないといけないわけで。




「わたしが王様ね」


 簡易的なくじを作って、3人で引くと、最初は水無瀬さんが王様だった。


「じゃ、1番は〜、2番にビンタしてね」


「あっ、私が1番だ!」


「いやいやいやいや、考えなくても俺が2番じゃん! というか3人でやると残りのふたり決まってくるの考えてなかったわ!」


「ぶってあげて、アリア」


「す、すみません、王様の命令なので……」


 うん?

 王様の前に俺があなたの雇い主だよな? そうだよね?


 おい、待てこら。

 本気で俺にビン――いたった!?


「どうしたの? 春人くん、顔が赤いわね、冷ましてあげるね」


「ちょっと!? 私をスルーして勝手に二人の世界に入らないでくださいよ!」

 

 水無瀬さんがなにをしたのかというと、俺がアリアにビンタされたところを舌で舐めたのだ。

 舌を離すときに、さりげなく「美味しかった♡」と言ったのはさすがにぞっとした。


「もー、こうなったら知りませんよ! 私が王様になったら承知しないんだから!」


 気を取り直して、


「あっ、私が王様です! 1番と2番はこれからくっつくの禁止!」


「あらま、アリア、王様の命令は1回きりだよ?」


「そんな……」


 完全に水無瀬さんに手のひらで転がされているアリア。

 というか、よくよく考えると、このゲームって誰の得にもならなくないか?


 たぶんだけど、水無瀬さんもアリアも俺を狙っているはず。

 しかし、どちらが王様になっても、その狙いは達成できないから、お互いの妨害しかしない。


 こんな茶番――あれ、待ってよ?


 もしかしたら俺だけ一人勝ちする方法があるのかもしれないぞ!


「やった! 俺が王様だ!!」


「ずるいね春人くん」


「ずるいですよ、アルト様」


「なんでやねん!?」


「「ん?」」


 しまった。

 2人がわけのわからないこと言うからつい。


 いかん。

 ちゃんと威厳は保たないと。


「こほん、俺の命令はだな、1番が2番の口に1分間舌を入れろ」


「「―――ッ!?」」


「春人くん、これが目的なのね……」


「え、え、私が2番ですけど!?」


「さてさて、なんのことかな? 1番と2番が誰だか分からないし?」


「覚えててね、春人くん」


「え、え、ほんとに入れるのですか!? まっ――うん、あん、いやん♡」


 ジト目を俺に向けてから、水無瀬さんはぐっとアリアの顎を掴んだ。

 そして唇を合わせるやいなや、舌を這わせてそれをアリアの体内に侵入させた。


 じゅるじゅるといやらしい音がする。

 アリアは次第に半目になって水無瀬さんの舌を口で挟むようにしていた。


 なんだか見てはいけないものを見たような、そんな怖い気がして、俺は目をそらそうとしたのだが、なぜか彼女たちに釘付けになっていた。


 最初から、勝者が存在しないと思われたこの王様ゲームは、俺(おそらく、水無瀬さんもアリアも)の勝ちで終わったのだった。




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貴族に転生した俺のところに、事故から庇ったクラス一の美少女が日本から転移してきたんだけど!? 〜清楚だと思っていた水無瀬さんは実は肉食だった件〜 月城メロン @asiria

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