隣の席の美少女が投げやり不幸モード全開だったので励ましたら、責任取って付き合うことになった。何故だ。

和尚

序章

プロローグ


「じゃあさ、キミ、私と付き合ってよ」


 その少女から投げかけられた言葉は随分と投げやりなものにも聞こえた。


「……へ?」


 決して、静かとは言えない夜の中。

 車が走っていく排気音や、仕事を終えたらしきスーツ姿の人が脇を歩いていく足音の隙間を縫うようにして不思議なほどはっきりと聞こえたそれに、僕は呆けた声を出した。


 夜の街灯に照らされた金髪が、笑うように揺れる。


「小さな幸せを感じられるキミの力で、私のことも幸せにしてって言ったの」


 確かに今日は、冗談のような展開が続いた日だった。

 そして、その締めくくりのような、冗談みたいな状況であるのに。


 経験が浅い僕にはわからないけれど、戸惑う僕を真っ直ぐに見つめる彼女の視線は冗談のようには見えなかった。かと言って、自暴自棄になっているようにも感じないのはもしかしたら、僕自身の願望もあるのかもしれなくて。


 僕はその言葉に静かに――。


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