この≪バグ≫まみれの異世界で

鯱眼シーデン

始まりは唐突に

第1話 白い世界で

「で、オタクさんは私にどーしてほしーのよ」


 ――物怖じしない奴というのは、さほど珍しくはない。

 が、自分の死すら些事として扱える者は、そういるものではない。


「私は今、君に興味をいただいている。くふ、くふふふふふふ!」

「なァに笑ってんだこの別嬪」


 いつものように何もない空間で揺蕩っていた時、急に『ナニか』が私の中に入ってきた。それはこの娘の魂。


 この前呼んだ人物はすっかり理想郷に染まったものだから、今回は趣向を凝らしてきよったか。

 

 いきなり交わり主導権を奪われた時は、なんとも傲岸不遜な奴と思ったが……いやはや、私の見る目は長き時を経て腐ってしまったようだ。


 このような存在を見つけたとあっては、あの男もさぞ喜んでいるだろう。この退屈極まりない世界に産み落とすには、これ以上あるまい。


 面白い、実に好い。

 幕間としては重畳であろうさ。



「くふ、くふはははははっ!!」

「だーめだこりゃ。話にならん」


「ああ、すまん。つい、ついね。……して、私が君に望むことだったね。そうさな、とくだんべつに望むことなどないさ。存分に私をつかえばいい」

「はあ??」

 

 怪訝そうな顔つきが余計に強張る。



「じゃあなんだって私みたいなやつを呼んだってのよ、それにアンタを使うってなんだ」

「さあなあ。それを語る口を、私は持ち合わせておらん。知りたければ探せ、解りたければ調べるがいい。」


「聞くって、誰に」

「それは当然、君をここに呼んだ人物さ。聞くもよし、自分で解明するもよし。好きにするといいさ」

「成程、じゃあ答えはNOだ。ぜ~~ったいにやぁだね。私は変なトラブルを嫌うんだ」

 

 死を当然と受け入れ、次の生を粛々と享受する。そしてそのうえでかみつくことを忘れない。


「くぁっはっは!こんな逸材、一体どこに埋まっておったのやら」

「アンタ人と会話する気ないだろ。こちとら死んだってコトに結構ショックを受けてるんだぜ」


「嘘。まあよかろうて、君がどうするかは君が決めるんだ。いいかい、君は自由なんだぜ」

 

 

 

 ――今度は旨くいくやもしれんな、かの賢者クン。

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