ザ・セカンド・エイリアン
北 流亡
ザ・セカンド・エイリアン
異形の生物が、エントランスに立っていた。
2メートル程の体長で、全身がゴツゴツとした黒い鎧のような表皮に覆われており、体のあちこちから紫の液体が垂れていた。
「きゃああああああああああ!」
「ビジネスホテル潮騒」のロビーに悲鳴が響き渡る。
客も従業員も、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
松本だけが受付に残っていた。いや、あまりの恐怖に一歩も動けなかった。
怪物は鋭い目で松本を見た。松本の口から「ひいっ」と悲鳴が漏れる。
これは映画だろうか。いや、間違いなく現実であった。怪物の息づかいが確実にそこにあった。
怪物はゆっくりとこちらに向かって来る。一歩進む。その度に、地面が揺れる。
松本の歯が、かちかちと音を立てていた。顔から出せる液体がすべて出ていた。背中が、壁に触れた。もう1ミリも後ろに下がれない。
怪物はカウンターの前に立つと、懐に手を入れた。武器。脳裏によぎる。松本は反射的に両腕を顔の前に構える。
静寂。耳が痛くなるほどの静寂が訪れる。
松本はゆっくりと目を開ける。怪物は、カウンターの上に手を置いていた。その6本の指の先に、何かを持っていた。
それは、松本が見慣れたものだった。
松本はおそるおそる口を開く。
「……お客様」
怪物と、視線が交わる。
「ポイントカードをお持ちということは、接客した従業員がウチにいるということですね?」
ザ・セカンド・エイリアン 北 流亡 @gauge71almi
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