百合の間に挟まる男の話

結城わんこ

0:An Ode To Lost Jigsaw Pieces

0:あとがきが始まる前に


 恋多き人生だったと思う。


 せいぜい一生の四分の一を過ごしたにすぎない俺にとって、人生なんて言葉はいささか大きすぎる主語ではある。


 それでも過去を振り返ってみれば、そこには常に恋があって、思い返すにも指折り数えなければならないほどである。


 べつにモテ自慢をしようというわけではない。


 指折り数えるほどの恋とはつまり、指折り数えるほどの失恋でもあるのだ。


 当たって砕けて破れ果てた俺の心はもはやガムテープでぐるぐる巻きであり、いきおいちょっとやそっとでは揺らがないサンドバッグのような心境だ。


 いいかげん懲りろよ、と思われる向きもあるだろう。


 しかし悲しいかな、どうやらそれは俺に生来そなわった器質――いや、〝運命さだめ〟とでも呼ぶべきものらしいのだ。


 そしてこれから綴られるのは、そんな〝運命さだめ〟についての物語である。

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