第三章:見えざる反撃

真由の奮闘により、CyberGateを含む大手ISP数社が協調し、Telnet通信のフィルタリングを開始した。

これにより、Miraiの感染速度は鈍化した。

だが、すでに感染してしまった数十万台のゾンビたちは、依然として攻撃を続けている。


「C2サーバーを黙らせるしかない」

涼は、正攻法ではない手段に出ることにした。

彼は、Miraiのボットネットに「偽の命令」を送るためのプログラムを書き上げた。

ハッカーがハッカーをハッキングする。毒を以て毒を制す作戦だ。


「奴らのプロトコルには脆弱性がある。そこから割り込んで、ボットたちに『攻撃停止』の命令を上書きしてやる」

それは法的にグレー、いや限りなくブラックな行為だ。

だが、今この瞬間、世界を救えるのは涼しかいなかった。


「いけ……!」

涼はエンターキーを叩いた。

涼のプログラムが、デジタルの海を駆け巡る。

C2サーバーになりすまし、世界中の防犯カメラやルーターに向けて、静かなる指令を送る。

『Sleep(眠れ)』


数分後。

真由から電話がかかってきた。

『涼くん……! トラフィックが……下がってる!1Tbpsから、急速に減ってる!』

「ふぅ……。なんとか、指揮系統を奪取できたみたいだな」

涼は椅子の背もたれに深く沈み込んだ。

全身から力が抜けていく。

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