第二章:ゾンビの行進

涼の分析によれば、感染したIoT機器は、ネズミ算式に増殖していた。

1台の感染機器が、高速な非同期スキャンを行い、数秒で次の獲物を見つける。

瞬く間に10万台、50万台の「ゾンビ軍団」が出来上がった。


「C2サーバーの場所を特定した……。ここか」

涼は、攻撃命令を発信している黒幕のサーバーを見つけ出した。

しかし、相手もプロだ。サーバーは防弾ホスティング(犯罪者向けの頑丈なサーバー)上にあり、簡単に停止させることはできない。


その時、真由から連絡が入った。

『涼くん、新しい攻撃パターンが来た! 今度は特定のDNSサーバー(Dyn)を狙ってる!』

DNSサーバーは、インターネットの住所録だ。ここが倒れれば、URLを入力してもサイトに繋がらなくなる。

「住所録を燃やして、誰も家に帰れなくする気か……」


涼は決断した。

「真由、プロバイダー側で『Telnet(ポート23)』の通信を全遮断できるか?」

『えっ? でも、それをやると遠隔保守をしている正規のメンテナンス業者も締め出しちゃうわよ?』

「緊急措置だ。今は『入り口』を塞ぐしかない。これ以上、ゾンビを増やさないために」

『わかった。技術部長を説得する!』

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