追放された俺、SNSスキルで仲間の本音を覗いたら溺愛されてた件。だが、まずは魔族ぶちのめす

うーぱー

第1章:魔王城目前の町でカス住民ぶちのめし

1. 聖女パーティーから追放されたので棍棒で殴る(未遂)

「アレル。お前をパーティーから追放する」


 いきなりそう言われたので、俺は足を止めて振り返る。


 そこには3人の仲間が立っていた。


 正面にいるのは、聖剣の聖女セイクリッド・セイントソフィア。俺に追放を告げた者だ。

 乗馬服を着て、左の前腕のみ銀色の甲冑で覆っている。長い金髪は束ねて背中側に垂らしている。一見すると男装の麗人だ。17歳で、パーティーの最年長。


 右に立つのは多重多属性の魔法使いサリナ。14歳。

 黒いローブで全身を覆い、フードで目元を隠している。


 左に立つのは俺の実妹メイ。12歳。

 機織はたおりの母さんが、転生者である俺の意見を聞きながら編んだ近代的なセーターを着ている。ミニスカートを穿いているから、女子中学生のように見える。


 宿屋1階フロアに他の利用客はいない。だから、俺の「……は?」という声は、やけに大きく響いた。


 俺は普段と変わらぬ口調でたずねる。


「俺を追放する? なんの冗談だ?」


「私がスキルを使いこなせるようになり、前衛で戦えるようになった今、貴方はここから先、足手まといです」


「そうか……」


 俺はため息を漏らすと、肩を落とし、その動きの流れで右腰にひっかけてある棍棒をつかむと即座に1歩踏みだし、ソフィアの下腹部めがけて床ギリギリから振りあげる。


 ドゴッ!


 棍棒は空気の塊に激突して止まった。空気を操るソフィアのスキルだ。


「ぶちのめすぞ」


 俺は普段と変わらぬ声音で言った。


「攻撃した後に言わないでください! 聖女の私を攻撃するなんて――」


 俺は左手で腰の短槍をとり、ソフィアの首を狙って突く。


「追放したのはお前だ」


 シュンッ!


「ッ! あ、危ッ! そこまでするんですの?!」


 短槍の切っ先は、ソフィアの喉の手前ギリギリで、やはりスキルによって阻まれた。


「お前が腕の1本でも失えば、近接戦闘要員として今後も俺が必要になるだろう」


「股間と首を狙ってましたわよね……! 急所ばかり!」


 俺は棍棒と短槍を押しこむが、ピクリともしない。


 ……!

 視界の左端で妹が動く。


「お兄ちゃん、やめて!」


 ドゴッ!


「ぐぁっ……!」


 妹のメイが支援要員とは思えない鋭さで俺に急接近し、棍棒で側頭部をぶん殴ってきた。

 俺の棍棒がフライドチキンのドラムなら、妹のは食べ終えた骨みたいな細さ。だが、とんでもない威力だ。さすが俺と同じ山村で生まれ育った野生児。パワーが半端ない。

 近代的なトレーニングで鍛えていた俺が、咄嗟とっさに首をひねって衝撃を逃がしたから大丈夫だったものの、普通の人間なら首の骨が折れていただろう。


 頭がくらくらして立っているのがつらいが、俺は妹をにらみつける。


「鈍器で、人の頭を……! この非常識馬鹿がッ……!」


「常識にとらわれるなって教えてくれたの、お兄ちゃんだよ!」


 俺が反論する間もなく、視界の片隅で、サリナが指を向けてくるのが見えた。


「……ショックサンダー」


 閃光がはじけた。


 バシイイインッ!


 電撃魔法だ。俺は短槍を体の前に投げてらいしん代わりにする。しかし、ショックサンダーは2連射されていた。2発目が右肩に命中。鋭いしびれが全身に走り、自分の意思とは裏腹に肘が伸びてしまう。


「ぐ、があああ……。お、お前ら……!」


 ドサッ……。


 俺は床に倒れた。顔を打たないように、手で衝撃を和らげるのが精一杯だった。

 意識が急激に遠のいていく……。


 ガチンッ……。


 頭の横に何かが落ちてきた。目だけ動かして確かめるが、視界がぼんやりしていてはっきりしない。


「それだけあれば村まで帰れるでしょ。さよなら、お兄ちゃん。私は魔王を倒したあと、聖女としてラルム教会で出世するの。お兄ちゃんがいたら私の処女性が疑われちゃうから、ここでお別れだよ」


 な、何を言っているんだ、このクソ妹……!


 たしかに、聖女パーティーに男がいたら聖女の処女性が疑われるかもしれない。

 だが、実妹のお前が言うな。ぶちのめすぞ……!


 文句を言ってやりたかったが、意識は途切れた。



◆ 次回予告


聖女パーティーから追放されてしまったアレルは、スキル『Xitterエクシター』を使い、聖女たちの会話を探る。

果たして、聖女たちが語る追放の理由とは――。


次回『追放された理由がクソ過ぎる! 俺を夜這いするのが我慢できないから?!』ご期待ください!



◆ あとがき


 気に入っていただけたら、ポイント評価やお気に入り登録などお願いします。

 「いいね」や感想もお待ちしております。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る