なくした思い出君となら
@tjpj56
第1話
タイトル なくした思い出君となら
ペンネーム なまじパープル
あらすじ 主人公の咲は平凡な学生で普通の毎日が好きだ。だがある日謎の転校生、千代咲ひなこという人物が私はあなたの友達だと主張してくるなりいきなり私をお姫様だっこして学校から飛び出して…!?
私花摘見咲、どこにでもいる平凡な女子高生だ。
私はこのなんとも普通な生活に満足している。
私は普通が好きなのだ。
ああ…こんな毎日がずっと続けばいいのにな。
…でもまさか、この平凡な日々が平凡じゃなくなるなんて思いもしなかった。
キーンコーンカンコーン…
授業が始まるチャイムがなる。
先生がやってくる。
「はい…授業を始めます…っとその前に転校生を紹介する」
転校生…どんな子なんだろう…?まあ多分関わることはないだろうけどね。
「入って来てくれ」
すると転校生らしき少女が入ってきた。
その子はとても綺麗な女の子だった…
きれいだ…これが美少女っていうんだろうな。
「自己紹介をしてくれ」
すると…
「私の名前は千代咲ひなこです!趣味は…ってえ?咲ちゃん…?」
その子は偶然視界に入った私に向けてそう呟いた。
「…え?」
「咲ちゃんだよね?!」
その子はツカツカ私の方に歩み寄ってきた。
「咲ちゃん!」
その子は私の机を思いきり叩いた。
「咲ちゃん!今からあそこに行こう!」
「…は?あそこ?」
するといきなり謎の転校生千代咲ひなこにお姫様だっこをされたぁ!?
「失礼しますね!プリンセス!」
するとひなは私を抱えながら走り出し教室を飛び出す!?
は?!まじでどゆこと!?
「咲ちゃん!この浜夏駅から錦美駅まで乗ってったらあそこに着くよ〜!」
「…ねぇ」
私は低い声を出した。
「あのさ?なんで私をいきなり学校からこの駅まで連れ出したの?意味わかんないよ?てか初対面だよ?何考えてんの?」
私はひどく冷たく言う。
「…うーん…咲ちゃんもう覚えてないんだね…」
千代咲ひなこはしょんぼりする。
「でもね!」
うわ!いきなり元気になった!情緒の波が激しいな!
「私は咲ちゃんが私のこと覚えてなくても私は覚えてるから友達であることには変わりないんだよ!」
「はっ…はぁ?…もういいわ。めんどくさい。それならその友達って言う証拠ってやつ出せる?出してみなよ」
まあ出せるわけないだろうけど。
「うん!分かった!はい!これ見て!」
千代咲ひなこどこからか写真を取り出した。
その写真に写っていたのは…
「…え…小さい私が写ってる」
私が写っていて、私の隣には千代咲ひなこの小学生ぐらいであろう姿が写っていた。
「懐かしいなぁ咲ちゃん今と違って人懐っこくてわんぱくだったんだよ?まあ今のクールな感じも好きだけどね?」
ひなこはにぱっと笑う。
笑顔が眩しい。
こっちを見るな。
「…なんかここまできたら私何があったか気になるわ。そのあそことやらを行ってやってもいいわよ」
「ほんと!?」
「ただしそのかわり、私になにがあったか思い出させる手伝いをしなさい!」
「え?!嘘!?思い出してくれるの!?嬉しい!」
千代咲ひなこは無邪気にはしゃぐ。
「…てか私はあなたのことをなんて呼べばいいのかしら?」
私は聞く。
「昔のようにさ!ひなって呼んでよ!」
「…」
昔のようにって言われても…私はそんな記憶を持ち合わせていない。
「ついたよ!」
長い電車に乗り、私達はあそことやらについた。
「きれい…」
そこには真っ青な海が広がっていた。
砂浜はゴミ一つ落ちていなく、砂は小さくさらさらだ。
「ひな…ここにつれてきてくれてありがとう」
「おっ!ツンデレのデレいただきましたぁ!」
「…ありがとうなんて言わなきゃよかった…」
こいつのこのテンションうざいわ
「咲ちゃん…ここでよく2人で遊んだよね…ピクニックしたりボードゲームしたりお絵描きしたり…」
「へぇ…そんなことがあったのか…覚えてないけどね」
私は海の方に目をやった。
あっ…今魚飛んだ…
波の音が聞こえる…
なんか…癒されるな…
私は目を閉じる…
波の音が心地よい…
〜♩
?音楽が聞こえる…
「町内放送だね、もう5時か…」
…懐かしい音楽だ…この音楽よく聴いてたな…
…懐かしい音楽…?この音楽よく聴いてたな…?
存在しない記憶が頭にうかぶ。
小さな女の子が私に向けて何か渡している…?
…うっ…!頭が痛い…!
「咲ちゃん…!?」
「はぁ…はぁ…」
「咲ちゃん…!コンビニで頭痛薬買ってくる…待ってて」
「はぁ…ひなこ…ありがとう…」
私はひなこが買ってきた薬とポカリを飲んで体調が少しましになった。
「咲ちゃん…今日はもう帰ろう…?こんな遠いところに連れてきちゃってごめんね…」
「いいよ、きれいな海が見れたんだから…」
脳裏にうかんだあの記憶はいったいなんだったのだろうか…
チュンチュチュ
小鳥の声が聞こえる。
私は朝早くから学校に行き自分の机に突っ伏し寝ていた。
この時間が幸せだ…
ーちー…さきー…ゃんー…
?声が聞こえる
咲ちゃん!!!!
「うっわうるさ!ってえ!ひなこ!?あんた朝はやいわね!?なんなの…?」
「咲ちゃんに会えるのを楽しみにしてたんだよ!」
「そっか…」
こんなストーカーみたいなやつが友達だったってまじ…?
「てかさ!咲ちゃんのせいで私今日朝先生に怒られたんだよ!?昨日咲ちゃんをいきなり連れ出してどういうつもり!?…って!」
「いやそれはあんたが悪いんでしょう!!!」
私は思いっきりひなこの頭を叩いた。
「いった〜い!!なにすんの!?ひどい!昔の咲ちゃんはそんなじゃなかったのに〜!!」
はぁ…なんなのこいつ
昼休み
私は図書館の物置部屋でひなこと弁当を食べていた。
「咲ちゃん…私が転校してくるまでいつもこんなとこで1人寂しくごはんを食べていたんだね…ごめんね、今まで1人にしていて、私がいるからもう安心していいんだよ」
「しばこうかな?よし!しばくか!」
「心の声丸聞こえだよ?しばかないで?」
「…お前どんなテレパシーを使った!?」
「いや心の声漏れてたよ!?咲ちゃんってバカだね!?」
私ばかだったのか…
「咲ちゃん、そういえばさ5時間目の授業の体育は何をするんだっけ?」
「たしか…長距離走だったね、これからしばらく体育は長距離走が続くらしい」
「…」
ひなこが黙り込む。
「…どうしたの?」
「なんでもない…」
「…?そっか…」
5時間目
私は体操服に着替えていた。
「咲ちゃん胸おっき!!」
「人の体をじろじろ見るなぁ!!」
「いいなぁ私太りにくいってか太れないんだよねぇ…この前なんか40キロになっちゃったよ…」
「…え?それ大丈夫?ひなこの身長で40キロはやばいんじゃ…」
「だ…大丈夫…なんかごめんね…」
「…」
気まずい
「あ!そうだ!咲ちゃん!ジュースおごってあげる!私もう着替え終わったからジュース買ってくるね!」
ひなはにぱっと笑いジュースを買いに行った。
ひな…気を使わせてごめんよ…
千代咲ひなは体育館裏にある自販機でジュースを2本買った。
「ついでに薬も飲んじゃお…」
ひなは薬を飲んだ。
その錠剤には文字が書かれていた。
リバーロキサバン
放課後
「今日はさ私の家によってかない?」
「え?ひなこの家…?」
「私ね、今1人ぐらししてるんだ!でも今からいくつもりの家は私の実家かな?」
1人ぐらししてるのか…ひなこのくせにえらいな。
「てか今日よかったら私の家とまらない?」
「いきなりだな、もっとお前は常識を身につけた方がいい」
「えへ⭐︎そーかな⭐︎」
私はひなこの家にとまることになった。
お母さんにはもちろん許可をとった。
「ひなこの家広くてきれい…」
「でしょ!」
ひなこの家は散らかっておらずきれいだった。
家具の配置もきれいでちょうどいい広さの家だ。
「…あ!そういえばひなこ!私との思い出の物ってなんかないの?思い出したい!」
「あるよ〜!ちょっと待っててね!」
ひなこは本棚から分厚い本を持ってきた。
「じゃ〜ん!アルバム!咲ちゃんと私の写真だけしかないのにこんなに分厚いアルバム!いっぱい思い出が詰まってるよ〜!」
「ええ…分厚い…もしかして私とひなこって長い間いっしょにいたの…?」
「そうだよ!たしか生まれた時からだね!12年間!私中1になったばかりの時に転校したから咲ちゃんと離れ離れになったんだ!」
「ええ!?そうなの!?なんか情報量多いな!!ええと…まず12年間がすごすぎるな…それと中1の時に転校か…まって12年間…!?よく私そんないっしょにいてあんたのこと忘れたな…本当に何があったんだ…」
私は恐怖と申し訳なさを感じる。
12年間もいっしょにいたのにそれが本当になかったかのように記憶から遮断されているのはあまりにもおかしい、それにそんな長いことひなこはいっしょにいてくれたのに私は冷たく接して…
「…ひなこ…ごめん。」
「え?」
「12年もいっしょにいたのに覚えてなくて…冷たくして…」
私は泣いてしまった。
「いいんだよ」
ひなこは私を抱き寄せる。
「きっと何か事情があってこんなふうになっちゃっただけだよね…いいんだよ…思い出すのはゆっくりで…」
「ありがとう…でももしやっぱり思い出せなかったら…?」
「その時は何があったか知ってもらえばいいし、今の咲ちゃんも大好きだから大丈夫…」
ごめんね…ひなこ
「さ!気を取り直してさ、アルバム見よう!アルバム!」
ペラッ
アルバムをめくった。
そこには幼少期の私とひなこが駄菓子やさんの前でアイスを食べながら笑っている。
「懐かしいなぁ」
「…存在しない過去だ…不思議だ…」
やっぱり私は思い出せない。
何か思い出せる決定打があればな…
「あ〜咲ちゃんこれ見て!これは保育園の時の私と咲ちゃん!懐かしいなぁ〜」
「そっか12年間だもんね、そりゃ保育園の時も写真があるかぁ」
「赤ちゃんの頃の写真もあるよ!」
ひなこの指が指してる方を見る。
そこにはふたりの女性が赤ちゃんを抱えていた。
「私のお母さんとひなこのお母さんは病院で出会ったの!だから12年間いっしょにいたんだよ!」
…そうなんだ…
「ふふ!咲ちゃんぜんぜんピンときてないw」
「うん…でも記憶に存在しない出来事を聞くのってなんか面白いね」
「おお!面白いならおけ!じゃあ次はこれ!」
ペラッ
次のページには私とひなこが小学校を入学した時に撮ったらしき写真が貼ってある。
「私って記憶力いいかも!写真に写ってるのほぼ全部覚えてる…あっ!お次はこの写真!」
ペラッペラペラララララ
「めっちゃめくるじゃん。」
「中学生の時の写真を見てほしくてね!…ほら!これ!中1の時咲めっちゃくちゃケバいメイクしててねw中学生デビューwってやつw」
自分の記憶にない黒歴史はもはや他人事でやりすごせる…
「私こんなことしてたんだ…」
「面白いねーwブフォオオ!!ブフーwあひょひょひょひょw」
「お前なんか今日テンションおかしくね?てかそろそろいらついてきたわ、しばくぞ?」
「だってね!またこうして咲ちゃんと仲良くできるなんて思わなかったんだもん!嬉しいよ…!」
「えっ急に泣きそうな顔なるじゃん…あんたよくそんな情緒でしんどくならないわね」
「私ね!咲ちゃんと本当にまた会えて嬉しい!」
私の話聞いてる…?
「もう…本当に会えないと思った…でも、またこうして会えるなんて私…」
「ひなこ…私あなたのことまだおもいだせてない。でも私もあなたと会えてよかった。昔の私としてでなく今の私としてでも会えて嬉しい」
「咲ちゃん…」
…
なんかこの空気感ちょっと恥ずかしいんだけど…
「ああ、そういえば…!」
私は気恥ずかしくなり話題を変える。
「なんでひなこは中1の時転校したの?きになるなー!それと最近転校してきたのはなんでー?ってかひなこ人生で2回転校してるじゃんやばいね」
そういうとひなこはピクリとし動かなくなった。
…え…?何…?
「…最近転校してきたのは親の仕事の影響だねー。それと中1の時に転校した理由はねー…やっぱ教えない…」
「えーなになにいいじゃーん教えてよ」
するとガシィぃいっと両肩を思いっきり掴まれた。
えっえっ何…?
「世の中にはね…知らない方がいいことの方が多いんだよ…」
ひなこは、ぜんぜん笑ってない笑顔をこちらに向けてくる。
ひっひえー…
「分かった…」
「さー気を取り直して⭐︎…あっ」
窓を開けていたため強い風が部屋の中に入ってくる。
その風のせいでアルバムがペラペラとめくれた。
するとアルバムから1枚の写真が出てきた。
「…あっ…これあの海の写真…!……ん?私なんかきれいな真っ赤なドレス着てる…ひなこは黒のワンピース…」
「見ちゃダメ〜!!!」
ひなこは必死に写真を隠す。
「もう見ちゃったよ…」
「…はぁ…思い出してないなら別にいっか」
「え?今の思い出してほしくないのか…じゃあ一回実践してみるか」
「は?」
「この写真のマネしてみたい!」
「は?話聞いてた咲ちゃん?」
「いいじゃん!これキッカケで私ひなこのこと全部思い出せるかもじゃん?」
「……はぁ…おっけ⭐︎やるからには本気でやってこー⭐︎私今から準備するから明日学校休んであの写真みたいにあの海辺でドレスきよ⭐︎」
次の日
「ドレスの着用完了⭐︎」
「…ちょっときつい…」
「そりゃあ中1の時着たドレスだから〜⭐︎…それじゃあ実践してみようか…はぁ…嫌だなぁ」
ひなこは海辺を私の手を繋いで歩き出す。
ひなこの黒いワンピースがなびく。
その時町内放送の音楽が流れる
〜♩
「よし…この時間帯であってる…」
ひなこは呟く。
しばらく歩いたらひなこはぴたりと止まった。
「…はぁ…やりたくないけどやるか」
そう言うと私の手を持ち上げ、指輪を私の指にはめた。
「…え?」
「健やかなる時も病める時もどんな時もあなたと支えあい、愛し合うことを誓います。」
私は頭が痛くなった。
頭が割れそうだ。
頭が熱い。
ジンジンする…ガンガンする…
しばらく私はその頭痛に耐えていた。
でもしばらくして頭痛が治った。
その瞬間私は忘れていた一部の記憶を思い出した。
「咲ちゃん…思い出しちゃったかぁ…記憶思い出すたんびに頭痛くなるって辛いね…」
「……」
思い出した…
私はひなこのことが大好きな女の子だった…
それは友人としての好きではなく恋愛としてでの好きだった。
ひなこは嫌がっていたが私と付き合ってくれていた。
だけどひなこの母は私とひなこが付き合っていることに気づき不満を感じ、ひなこの母はひなこと私をはなすために転校と引越しの手続きをしだした。
そのことをひなこは私に伝えると、私は最後のわがままとしてひなこと疑似結婚式を海辺で挙げた…
って…え?
私がひなこを恋愛の好きとして好いていた…?
えええええええ!???!!!!
「ええええええ!??」
「はぁ…こんなことなら疑似結婚式しなきゃよかったぁ⭐︎」
私はこの場でひなこに土下座した。
「すみませんでしたああああぁあああ!」
「えええ??!!!謝らなくていいよぉー!?気にしないで?!」
「気にするでしょうがぁあ!」
「まっまぁそうだろうねぇ!?」
「はぁ…私ってやばいやつだったんだ…!今まで気使わしてごめん!」
「…だから言ったのに…もう気にしないで…この話…やめよ⭐︎」
ひなこの気づかいに私は逆にむねにくるものがあった…
しばらくひなこと過ごして3ヶ月がたった。
それでも私はあの疑似結婚式と、ひなこに恋愛的なおもいを寄せていたことしか思い出せなかった…
でも…でも私はこのままでいいかも…なんて思う。
私は過去のひなこの記憶は思い出せなくても今の千代咲ひなこが大好きだ…
この3ヶ月間ひなこは私のために思い出の場所にいろいろ連れて行ってくれたり思い出の物を見してくれたり普通に遊びに行ったりした。
その3ヶ月間はとてもとても…楽しかった…
短い3ヶ月間をこんなにも楽しく変えてくれたひなこは今では私の宝物だ…
ひなこと関わる前は私は平凡でなんのへんてつもない毎日が好きだった…
いや…好きだったんじゃない…知らなかったんだ…
なんのへんてつもない日常以外に好きになれるものがなかったんだ…
でも今は違う。
ひなこは気づかせてくれた…
なんのへんてつもない日常以外にも好きになれる日常があるということを…
だから私は千代咲ひなこことひなこが大好きだ…
ひなこ…
「咲ちゃん〜!放課後だね!いっしょに帰ろ!」
「…え!もう授業終わったの…!?考え事してたら一瞬で溶けちゃった!」
「ええ〜⭐︎なにそれ咲ちゃん不思議ちゃんデビュー!?か〜わい〜♡」
「うざっ…やめてよ」
まあひなこのこのうざさは変わりないし、ひなこのこと恋愛的に見てた過去は今でも理解できないけどね!
「あっ!そうだ!今日咲ちゃん家に寄ってっていい?」
「まあたまにはいいよ」
そういうと私はふと疑問があたまに浮かぶ。
なんでひなこは中1の時転校して以来私に会いに来れなかったのか…
「ねぇひなこ…絶対なんで今?ってなると思うけど聞いていい?」
「?いいよ?」
「あの…中1の時転校して以来私に会いにこなかったのはなんで?」
「…本当になんで今…?ええとそれはね、一回親にないしょでこっそりあいに行ったんだけど咲ちゃん引越ししてたんだよね?びっくりした。もう二度とあえないと思ったけどこうしてまた会えて嬉しい!」
「あ!そういうことね!」
そこから私はひなことくだらない話をしながら帰っていった…
「ひな…ちゃん…?」
母はひなこのことを信じられないという顔で見ていた。
「…え…?お母さんどうしたの…?」
「…はぁ…咲ちゃんひなちゃんのことを思い出したのね…あなたたち2人に話すことがあります。」
「…え…なんだろう…」
「ソファーに2人とも座って」
そういうと母はソファーに座った。
ひなこと私は母の向かい側のソファーに座った。
「あのね…ひなちゃん…なんで咲ちゃんは記憶喪失になったか知っている…?」
…え?私って記憶喪失だったの…?そっか…そうだよね…だってひなこと昔過ごした記憶がごっそり抜け落ちてたもんね…
…でもなんでお母さんは私が記憶喪失だということを伝えてくれなかったの…?
「えっと…知らないです…」
「…そうよね…知らないわよね…ひなちゃん咲ちゃん…今からあなた達に伝えることはとてもショッキングな内容よ…でもそれでも伝えなきゃいけないことだから伝えるわね…準備はいい…?」
「はい。大丈夫です」
「え…えっとうん」
「…ひなちゃん…ひなちゃんのお父さんなんでひなちゃんのお母さんと離婚したか分かる…?」
「…え…なんで離婚したこと知って…分かんないです…」
「それはね…ひなちゃんが中1の時に引越した後…」
母はしばらく黙った後口を開いた。
「ひなちゃんのお父さんは飲酒運転で咲ちゃんを轢いてしまって逮捕されたからよ」
「「!?」」
「それをキッカケに咲ちゃんは記憶喪失になった。私はひなちゃんのお父さんを恨んでいるけどひなちゃんのことは恨んでいない…だからきずつかないで…って言われてもきずついちゃうわよね…ひなちゃんにはあなたのお父さんが咲ちゃんを轢いてしまったことを知ってほしくないし、咲ちゃんが車に轢かれて記憶喪失になった姿を見せたくなって引越したの……以上よ…」
「「…」」
母の口から語られた話はあまりにも重い話だった…
私はどうしていいかわからず愕然とした…
……気まずい沈黙が流れる…
空気は張り詰めている…
「…えっ?えっ…?そんなの…そんなの嫌だよ…やっとあえたと思ったひなこが記憶喪失になってたのは…私のせいだったってこ…と…?あっ…あっ…」
「ひなちゃん!!それはあなたのせいじゃない!あなたのお父さんのせいよ!自分を責めちゃだめ!」
「嫌だ…嫌だよ…!!…ぅっ…あっ…」
バタっ
大きな音がした。
ひなこが倒れた。
救急車を呼んだ。
ひなこは救急車に運ばれた。
ひなこが倒れた原因は心臓に負担がかかりすぎたからだということだ。
精神的に追い込まれてしまったからだろう。
ひなこはその後も何回か診察を受けた。
すると驚くべきことが判明した。
ひなこは…心臓移植が必要なほど心臓が弱っていた。
「ひなこ…ひなこは知ってたの…?心臓移植が必要だって…」
「うん…私ね…生まれた時から心臓の形が複雑なの。だから16歳までもつか持たないか…らしいんだ…心臓移植は考えてたのだけど…もう心臓移植するかしないか悩む時間あんまし残ってないみたいだね…」
「……」
「私の家貧乏だからどっちにしろ心臓移植は無理だわw私死んじゃうね」
「…」
「私、もうすぐ死ぬって分かってた。だから最後に咲ちゃんとあいたいって思ってた。だから偶然にもあえてすっごい嬉しい!私って幸せなんだな…!神様大好きラブちゅっちゅ〜♡あっ!もう最後だし咲ちゃんいっしょに結婚しちゃ」
バチん
私はひなこの頬を思いっきり叩いた。
「っ…え…っ」
ひなこは驚いた顔のまま固まる。
ひなこの目から大粒の涙がこぼれおちる。
「うるさい!!!だまれ!!」
私は大声を出した。
「人の気持ちも知らないでよくそんなバカなこと抜かせるわね!?こんな時ぐらいも真剣に話せないの!?あんたはもう少し自分のことを大事にしなさい!!現実から逃げるな!」
…私なにしてんの…?何言ってんの…?
こんなことがしたいんじゃない…
怒るな…叫ぶな…おちつけ…ひなこをきずつけるな。
でももうおそい。
ひなこの息づかいは荒くなる。
目から大量の涙がこぼれ落ちている。
「はぁっはぁっ…!咲ちゃん…!ひどい…なんでこんなことするの…もう…もういい…出てってぇ!!!!!」
ひなこはヒステリックに叫ぶ。
「…分かった」
私は病室から出て行った。
後日私はひなこに謝りに行こうと思い病室に向かった。
ひなこのいる病室のドアの前についた。
ドアをあける。
するとそこには信じられない光景があった。
みんなひなこの横たわっているベットのまわりを囲い泣いていた。
「…まさか…まさか…」
私はひなこに近寄った。
ひなこは寝ているように見えるが顔が真っ青だ。
ひなこの頬に触れる。
呼吸していない。
心拍を感じられない。
冷たい。
「ひ…な…こ…?」
ひなこは、、、、、、、死んでいた
あれから3ヶ月たった。
あれから私は学校に行かずずっと自室で引きこもっていた。
私は自分のしたことと、ひなこが死んだことが受け止めきれずひきこもるようになってしまった。
ひなこが死んだのは私のせいだ…私が最後に追い込んでしまったから…
…………
ああ…なにも考えられない………
ひなこはもういない……
考えられてもそのことしか頭にない。
…もう…いっそのこと死んでしまおうかな…なんて…
そうだ
死んでしまえばいいんだ。
私は久しぶりに外出した。
3ヶ月ぶりだ。
日の光が肌に当たり肌がものすごく痛い…
目も痛い…
私は日傘をさした。
多少ましになった。
私は近所のホームセンターに向かった。
ホームセンターで無事ロープを買った。
レジの人は私がロープ1つ不自然に買うことに対してなんとも思っていなそうだった。
以外に人って他人に興味ないんだな。
私は椅子の上に乗りロープを自室の天井に吊るした。
これでもう準備完了だ。
私は椅子の上に立つ。
ロープに触れる…
ロープに触れた感覚は鮮明であった。
私はふと自分のやろうとしていることの重大差に気づく。
私の呼吸は荒くなる。
嫌だ…死にたくない…
死が怖い。
死んでしまったらもうひなこのことは考えられない。
もう私の実体も感覚も感情を全てがむにかえる。
それが恐ろしく怖い。
もし仮に死んでしまったら…?
母は悲しむだろう。
それどころか私のような廃人になって後を追うように自○してしまうかもしれない。
…もう嫌だ…こんな現実…ひなこと出会ってしまった私はもう平凡な日常…いや…ひなこがいない日常なんて…
「耐えれないよ!!!!!」
私は平凡な日常が大好きだった。
それはひなこと正反対だ。
それなのに私は千代咲ひなこを好きになってしまった…
…ああ…もう私限界なんだな…
涙が流れるのが止まらない。
目頭が熱い。
胸がいたい。
寒い、辛い、死にたい。
体が…寒い…心も寒い…
こんなこと…冬のあの時以来だな…あれは……小学3年生ぐらいの時だったかな…?
雪が降ってた日だった…私は無我夢中で雪の中を1人でひなこと手を繋ぎながら走ってた…
私は自分の考えてることの矛盾に気づく。
…え?あの日1人で雪の中を走ってたんじゃなくて…ひなこと走っていた…?
あの雪が降ってた日のことを思い出した。
ひなこと手を繋ぎながら走っていた。
必死で
知らない街を小さな子供2人で迷子になり、おまけに雪まで降っていた。
あの時は本当に死を覚悟していた。
でも私の母が私達を最終的に見つけ命拾いした。
私は雪の降ってたあの頃を思い出したキッカケにひなことの全ての思い出を思い出した。
辛いこと…悲しいこと…いろんなことがあった…
ひなこと過ごしたあの頃と
私の親友のひなこは私の宝物
でももうその宝物は手元にちりさえ残っていない。
ひなことの思い出も今ごろ思い出してももう遅い
「なんで今なんだよ…!」
ひなこ…
ごめん
今思い出しても遅いよね…?
ひなこが必死に頑張ってくれた3ヶ月を無駄にしちゃった…
思い出したくなかった。
今思い出しても苦しいだけだ。
私は胸が苦しくなる…
ひなこ…
もうひなこのこと…
考えたくないよ…
今ここで首を○って死んだらひなのことを考えなくてすむ…もしかしたら…ひなと同じ場所にいけるかもしれない。
私は勇気を出しロープに首をかけた。
椅子が倒れる。
私の体はしばらく苦しそうにもがき続け、しばらくするとぴくりとも動かなくなった。
私は、ひなこの横たわってるベッドの前で椅子に座っていた。
!?
どうゆうこと?!私はさっき首を○って死んだんじゃ!?
状況が飲み込めない。
…でも…でも…
ひなこが生きている…!
ひなこが目の前にいる…!
「ひなこ…!私を叩いて!!!」
「…え?はっ?頭でもおかしくなった…?この病院神経科あるから今からでも行った方がいいよ…?私のこの姿前にして辛いのはわかるけどさ…」
「いいからぶって!!!」
「えこわぁ…」
ひなたは私の頬を思いっきりぶった。
いたい…!これは…現実…?
私は大粒の涙を流して笑う。
「現実だぁ〜!」
「ぎぃやああああああああああああ!!!!!!!咲ちゃんの頭がぶっ壊れた!!!!」
「ああ!!ごめんごめん!咲がまだ生きてるのが嬉しくってつい。」
「…なんか心臓移植しなきゃ死んじゃう私が言うことじゃないと思うけどさ…今日はもう家帰って寝て方がいいよ、咲ちゃん怖いわ」
「うん分かった!帰る」
「…え?」
私は病室を出て家に…向かったんじゃなくてひなこの実家に向かった。
ひなこが転校してきてから1度ひなこの実家に行ったことがあるから場所は分かる。
ひなこのお母さんは私を見て驚いていたが、私はもうひなこに恋愛感情はないと伝えたら、なら問題ないわと言われた。
あの時私は、ひなこのお母さんの多様性を認められない古い考えに複雑な気持ちになった。
「ひなこのお母さん…ひなこ…入院しちゃいましたね…」
「ええ、そうね……私の家は貧乏だから借金を借りてひなこの心臓移植の手術を行おうと思う。これから一生をかけて借金を返していこうと思うわ。」
ひなこのお母さん、千代咲譲は言う。
「お母さん…そのことなんですけど私が借金を肩代わりしようと思ってます」
私はとんでもないことを口に出す。
「…は?」
「借金肩代わりします。」
「…他人が人の家の事情に突っ込まないでいただけるかしら?迷惑よ、非現実的なことを口に出していることをあなた分かってる?」
「分かってます。お母さん、手術にかかる代金って何円かわかります?」
「…500万円ぐらいかしらね?」
「約4000万円です」
「…え」
「私が今言ってることは非現実的なことは分かっています。ですが私は本気です。逆に考えてみてください。失礼ですがあなたの年齢は40歳ですよね?4000万円貯めるのにかかる時間はざっくり計算して40年です。しかもこの時間は最短な方です。」
私は続ける。
「その借金はあなたが生きている間に返せるか返せないか分かりません。ならば考え方をかえるとあなたの言っていることの方が非現実的です」
「…」
「それなら今まだ15歳の私が借金する方が現実的です。なので私に借金の肩代わりをさせてください」
「……はぁ」
譲さんは降参とでも言うようにため息を吐く。
「分かった…そのかわり私も借金返済を手伝う。この条件を呑んでくれるなら」
「契約成立でぇす!!!」
私は興奮して大声を上げ譲さんの言葉を遮ってしまった。
「…」
あれから3ヶ月がたちひなこの手術は成功した。
今ではひなこはすごくピンピンしている。
「いや〜一時期は本当に死ぬかと思ったね?ドナーって案外すぐ見つかるんだね…てか何気に手術代払えてるのすごいな〜」
よく喋んなこいつ…
「今元気なのが嘘みた〜い!ねえね!私死ぬって思ったでしょ〜⭐︎生きてま〜す!!いえ〜い!」
テンションおかしすぎて怖いな。
実はひなこはもうひなこのお父さんが私を車で轢いたことについてもうあまり辛くないみたい。
よかった。
「そのことなんだけどさ」
「ん?」
「借金4000万円私がひなこのお母さんのかわりに肩代わりしたんだ」
「もう1回言って」
「借金4000万円私がひなこのお母さんのかわりに肩代わりしたんだ」
「4000万円!?肩代わり!?は?えなにえな」
「だまれぇ!」
私はひなこの頬をかるくぶった。
「いったぁい♡」
「あのね、ひなこ、ここからは真面目な話なんだけどさ」
「…」
「私ね?これから一生をかけて4000万円を返済していく。だけど気にしないで。私は私のしたいことを選んだだけ…ひなこがこうして隣で笑っているだけで私は嬉しいんだ。だから大丈夫…」
「咲ちゃん…」
「なんて言うとでも思ったか!!!!」
「うんなんで!?」
「これからお前は私といっしょに高校を中退して毎日毎日働きまくり借金の返済だけ考えて生きていくんだ!分かったか!?」
「うん!わかった!」
「えこわぁ…なんでケロっとしてるのぉ…?」
「だってそれってすごく幸せじゃん!」
「え…」
「だってこれからもずっと咲ちゃんといっしょに過ごせるってことじゃん!それに働くって案外楽しそうでしょ?だから思ったより楽しいかもよ!?あ!てかそれならいっしょに同居しようよ!毎日お泊りパーティーだぁ!」
「…ぷっ…あははははははは!」
ひなこの楽観的すぎる考えを聞いてしまってつい笑う。
「ええ〜!?なんで笑うのぉ〜!」
「だってひなこおかしすぎるよ!私が今話してる話しってどう考えても不幸まっしぐら〜!みたいな話じゃん!!そんなんでよくこんなバカなこと言ってられるな〜って!」
「ええ!?ひどい!?咲ちゃんのバカ!!」
この先私達は茨の道を歩くことになるだろう。
でもひなことならそんな困難も簡単に吹き飛ばせそうな気がする
でもこれから先辛いことがたくさんあるのだろう。
でもひなことなら幸せもきっとたくさん感じられるだろう。
私は未来への不安と期待を抱えながら、赤オレンジ色の夕焼けの下をひなこと歩いて行った。
なくした思い出君となら @tjpj56
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