11
4号車をくまなく探した鶴野だったが、残念ながらヒントらしきものは得られなかった。
それに、今気づいたことだが、この電車は4両編成。明らかに自分が乗った電車よりも短くなっている。そして、この4号車両は自分が乗っていた場所であることに気づく。
4号車両に何かないかとくまなく探しているうちに、新大久保、新宿を通り過ぎていた。
着いた駅など気にしている余裕はなかったのだ。だが、いくら探しても何も無い4号車両で鶴野は最初に座っていた場所にもう一度座ってみた。
そういえば、と、スマホを取りだしてXを開いてみる。ポストへの返信はかなり大量なものになっていた。その中に『写真はないの?』というものもあり、急いで写真を撮ることにしたが、問題が起きる。撮った写真を見ても何も写っていない真っ黒の画面になるだけなのだ。
仕方なく鶴野は『写真を取ろうとしましたが、写真が真っ黒になってしまう。』と返信をした。
返信の中にはやはり、ヤラセを疑う声がある。だが、返信の数がそこまで多くないのが救いだったし、中にはしっかりと考察をしてくれている人もいる。
まず1つ目。
鶴野が最初に見た人間。Xには彼の最後の言葉を考察している人がいた。「頭が真っ白」。白を暗示している可能性がある。と。
2つ目。
次に出会った女性。「白いオムライス」を食べに来た帰りだと発言をして、駅のホームに出て死亡。ここではまた白を暗示している可能性がある。
3つ目。
駅員。彼の言葉である「どちらかハッキリさせろ」というのは、「物事を白黒ハッキリさせろ」と捉えられると。この意見には少ない返信の中でも賞賛の声が上がっていた。『それは分からないわ』とか『そういう意味だったのか』などだ。
4つ目。
1つ目の広告。「ゴール」であると鶴野は考察をしたことをポストしている。それに対しての反応は賛成が多かった。つまりはここから出ることができる可能性があるということ。
5つ目。
宗教の広告。返信をスライドしていくと、1つ気になるものを見つけた。『可能性が無限大=白紙=白に結びつくことができるのではないか』と。そういうことだったのかと鶴野は感心したと同時に、大変な事実に気づいた。
山手線で「白」が着く駅は1つだけ。目白だ。
そして、今、6つ目のヒントの謎が解けてしまった。
6つ目。
椅子の下にあった白骨遺体。体は崩れても唯一動いている部分が存在していた。それは「目」。白と目、まさしく目白駅を暗示していると捉えられる。この時点で鶴野は絶望してしまった。なぜなら、とっくに目白駅を通り過ぎてしまっていたからだ。
代々木と原宿を通り過ぎた。
鶴野は座ったままうずくまり、もうどうしようとないと諦めてしまっていた。
目白を通り過ぎてしまった時点で自分は死ぬことが確定してしまっていたのだと。
最後にそのことをXに投稿してみる。考察をしてくれた人への感謝を込めてのポストだ。
だが、予想外のポストが目に飛び込んでくる。
『恐らく、目白駅はハズレの駅です。』
スマホの画面に釘付けになった。どういうことだと、すぐに返信をした。その答えは、
『今までの白の暗示は全て死を暗示している。』
というものだ。
「死」を暗示している?もう一度、最初から考え直してみた。
鶴野が最初に出会った人はどうなった?ドアの外に出てから消えてしまったので分からない。
では2人目の女性はどうだろう?そうだ、駅の外に出て目の前で心臓の辺りをエグられて死んだ。
だが、広告のことは分からなかった。それは、Xの返信に書かれていた。
『日本では白い束装などは死を意味するものだ。』と。
宗教の場所は日本っぽかったはず。なら、本当の答えの駅はどの駅だと言うのだろう?
『白の逆です。』
そういえば、この電車は白と黒を暗示している時もあった。黒と3号車両にあった白骨遺体の目。そうか、答えは目黒。救われた。自分はこの地獄からどうにか逃げ出すことができるかもしれないと心が踊った。
気づけば、渋谷を通り過ぎている。そして、まもなく恵比寿に着く。
鶴野は待ちきれなくなってしまい、電車のドアの前で待つことにした。
恵比寿駅に着くと、目の前のドアがゆっくりと開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます