日々の断片

木漏れ日の空想家

第1話 誓い

私、どこで生まれたかで人を嫌うことはよしたいわ。

生まれた場所で、人を一生分好きになることなんてないのに、

生まれた場所で、人を一生分嫌いになることがあるなんて、

可笑しな話でしょう。

今、私はここに生きているの。

ここに、生きているだけで、ただ鼓動しているだけで、

それだけなのに、

どこか遠くの見ず知らずの人から、恨まれていると思うと

悲しくなります。

しかもその恨みなんてものは、私じゃなくても、誰でもいいんです。

ただそこにいれば、誰でもいいものに、

一人の鼓動は殺されます。

とても、とても、痛いことだわ。


でも、時々、こんなことは綺麗事なのかもしれないと、

頭によぎるの。

私の知らないことは、沢山あるし、

隣の人の感情さえ、見透かすことなんて、きっと無理でしょう。

この世には、きっと沢山の糸が張り巡らされていて、

みんな、その糸に絡まらないように、必死なのです。


でも、綺麗さを求めるのも、きっと時には大事です。

私は、時々私の部屋を綺麗に掃除するの。

もちろん、完璧な綺麗さになんて、きっとならなくて

塵は掃いても掃いても、溜まってしまうわ。

掃除が終わって、壁の隅の落書きを見つけることもあるの。

でも、掃除をする前より、そこは遥かに心地が良くなります。

綺麗事を、求めることは、大切で、美しい気がするのです。


誰かと結んでいた手が離れたときは、もう一度その人の手を、探したい。

私から探せば、いつかその誰かも気づいてくれるはずでしょう。

手を引っ込める理由なんて、ありません。

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