推し活殺人事件エピローグ

◆エピローグ 「残された声」


翌朝。

ニュース速報が流れた。


《ダンスボーカルグループEVE・天城 空(25)、死亡》


死因は“自殺とみられる”。

その一文が、世界を止めた。


SNSは一瞬で爆発した。


《嘘でしょ?》

《空くん死んじゃったの?》

《なんで…なんで…どうして…》

《信じたくない》


すぐに、“誰かのせいにしたい声”が溢れた。


《メンバーが追い詰めた》

《事務所が悪い》

《もっと早く助けてあげればよかったのに》

《私たちは空くんを愛してたのに!!》

《なんで私の大切な空くんが死ななきゃいけないの!?》


空の“死”は、

彼女らの都合のいい形に捻じ曲げられた。


《空くんは優しすぎた》

《空くんはファンを愛してた》

《空くんはメンバーに裏切られた》

《私たちの愛が届かなかったのは事務所のせい》


誰も空の心を知らないのに。

誰も空の“本当の痛み”を知らないのに。


街のどこかに残った献花に、

誰かがメモを置いていた。


《空くん、戻ってきてよ》



画面は静かに暗転し、

読む者に問いを突きつける。


―― あなたの推しへの愛は本物か?

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推し活殺人事件 余白 @YOHAKUSAN

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